飾り気がチョロチョロと森に押し寄せて来た
飾り気がチョロチョロとコムチャン森に押し寄せて来た。
21世紀のハイセンスが森をどんどんと侵食して行く。
熊は黒いタトゥーに冒され、鹿の角はライトブルーやピンクに光り出した。
ひょひはんの体をファッションモデルのような可愛い服が蝕んだ。
武士の刀には中二病的な名前がつき、いけさんの釣竿には金色で『煌』とカッコいい一文字が刻まれた。
森の木々には季節外れのイルミネーションがつき、その下を番いのタヌキやキツネ達がイチゴ飴やスパイラルポテトを手に持って通った。
これは一大事と見て、おまわりさんが動き出した。
おまわりさんはそれまで森で一番飾り気のあるのは自分だと思っていたので一大事だった。
森で一つだけの花であるという自負が危機にさらされたのだ。
おまわりさんは戦車に乗った。
戦車は森を駆け巡った。
駆け巡っているうちに磁場のゼロになっている地点を通ってしまった。
それは磁石のN極とS極が拮抗し合っているパワースポットだ。
しかしおまわりさんは気づかずに通り過ぎた。
別に何も感じなかったからだ。
おまわりさんが若者に人気のストリートに着くと、飾り気は既に去っていた。
チョロチョロとやって来て、ドバッと過ぎ去って行ったのだった。
おまわりさんも安心して去って行った。主砲をぶっぱなす気マンマンにはなっていたが、自粛した。
森はいつも通り、動物達が動物らしく暮らす森にかえった。
「ちょっといいですか?」
町からやって来た雑誌記者がぴんに声を掛けて来た。
飾り気のあることで有名なあの雑誌の記者だと名乗った。
「なんだぷー? ぷりょぷりょ」
ぴんは自分への取材かと思って全力でかわいこぶった。
「あなたはこの森について詳しいですか?」
「ばぶー。ボキはおまわりさんだから、何でも知ってるぷー」
「今、ゼロ磁場がパワースポットとして飾り気のある人々の大人気なのですが、この森にそういう場所はありますか?」
「ないぷー」
「そうですか。では失礼します」
「待つぷー! ここにこんなに飾り気のある哺乳類がいるじょ! 取材して行きたまえ!」
「失礼します」
飾り気のある雑誌記者は去って行った。
「ぷー……」
自分はこんな何もない森でくすぶっているような哺乳類材じゃない。
ぴんはそう思うと、町へ出ることを決意した。
「あー、和むねえ」
「なんにもないのに、なぜだか和むんだよなぁ、ここ」
磁場のゼロになっている地点には素朴な動物達が集まっていた。
「よし! ここを『お湯なし温泉』と名付けて観光地にしよう!」
わんぱくが言い出した。
後にわんぱくはパワースポット長者となる。




