おやつの時間
おやつの時間は毎日やって来る。
動物によっておやつの時間は違う。
リスのおやつの時間は寝ている時を除いて、ずっとだ。
タヌキや肉食の哺乳類にとっては、森でおやつになるものを見つけた時がおやつの時間だった。
こむのおやつの時間はおやつが食べたくなった時だ。
あまり四六時中おやつを食べていては太ったり糖尿病になったりするものだとネットで見たことがあるが、こむは気にしていなかった。
おやつが食べたいなぁ~と思ったら我慢できずにムグムグしてしまうのは哺乳類として生まれた最大の幸せだった。
おやつが食べたくない時はあった。
なんか今は何もいらないと思ってしまう、この世の不幸に包まれたような気分の時は、あるものである。
おやつが食べたくなるおやつの時間と、おやつが食べたくない不幸の時間は気まぐれに訪れたが、決まっておやつが食べたくなる毎日の楽しみとも言える時間というのもあった。外で草のつくことをして帰って時である。その時間は必ずおやつが食べたくなった。
草野球、草ボーリング、草餅つき、草刈正雄にインタビューした帰りなどは、どうしてもおやつを食べずにいられなかった。
その日は草上田村麻呂と談笑して来た帰りだった。
こむは家の玄関を開けると、「ただいまー」とは言わずに「おなかすいたー」と言った。
いつもおやつをくれるひょひはんは、草フグの毒抜きで忙しそうにしていた。
「ひょひはん、おなかすいたー」
こむは神にしつこく願いを叶えることを強要するように、ひょひはんにまとまりついた。
「おやつー、おやつー」
ひょひはんは五歳の息子を適当にあしらうように、言った。
「おっぱいの中にミルクがあるからそれでも飲んでおきなさい」
「えっ?」
こむは目を丸くした。
「ひょひはん。もしかして、赤ちゃん出来たの?」
「出来たわよ。今日、森の産婦人科へ行って来たら、妊娠3ヶ月だって」
ひょひはんはそう言うと、にへらっと幸せそうに笑った。
隣の部屋で亭主のわんぱくが胡座をかいて新聞を読みながら、頬を染めてニコニコと笑っていた。
「うわー。きもちわるい」
こむはひょひはんが交尾をしている場面を想像してしまい、おやつが食べたくない気持ちになってしまった。
「きもちわるい!」
こむは不幸な気持ちに襲われた。




