いけさん
俺の名はいけさん。アニマルだらけのこの森で一番のワイルドビーストだ。
俺ほど残忍で屈強なハムスターはこの世に他に存在しないぜ。
「おいっ。猫本つよし」
俺は我が物顔で獣道を歩いている猫本つよしを後ろから呼び止めた。
「ンダトォ?」と言いながら振り向いたヤツの顔は残忍な虎だ。
俺でなければ小便ちびってること受け合いだぜ。
「お前と俺、どちらがこの森一番の荒くれ者か、決めようぜ」
「ンナアアウ!?」猫本つよしはメンチを切る。
「そう。今だ」
そう言い渡すなり、俺は猫本つよしの頭にハムスター・ボディー・アタックを降らせた。
俺の強力なアタックはヤツの脳天を突き破り、流れのままに俺はヤツの首をハム手刀で斬り落とした。
「ハハッ! 弱い弱い弱い!」
俺は返り血を嬉しそうに浴びながら、ワイルドな笑みを浮かべてやった。
「これで決まりだな。この森は俺のものだ!」
いけさんはそんな小説を書き終わると、なんだか空しそうな顔をした。
目の前にはずっと茶虎の子猫がじっとお座りしていた。
「モデルになってくれてありがとな」
いけさんは子猫の頭を撫でた。
「お前のおかげで自分の中の残酷さにやっと気づけた」
モデル料として自分の腕の肉をやろうとしたが、子猫は受け取らずにニャーとだけ声を残して帰って行った。
「かわいいな」
いけさんはその後ろ姿を見送りながら、呟いた。
「でもお前さんは大きくなったらこの俺を食う存在になるんだぜ」
釣竿を手に取るといつものタバコをくわえ、今日も妻の水死体を作りに出掛けて行った。
今日の行き先は湖だ。
今日の彼の妻はダンゴムシで名前はナタリー・ポートマン。
「おっと。うっかり魚の餌にならないでくれよな」
いけさんはナタリー・ポートマンにそうお願いすると、釣糸の先に結びつけ、湖に投げた。
空の向こうからデビルマンの群れが飛んで来るのが見えた。
「普通だよ、そんなのは。羽根のついたモンが空飛んで来んのは普通だ」
いけさんはヒュー・ジャックマンの吹き替えの声でそう呟くと、溜め息を吐いた。
「……強くならなきゃな」




