なっくん
なっくんは森のイタチである。
しかし、人間に飼われていた期間が長かったので、なかなか森に馴染めずにいた。
仲良く楽しそうなみんなを陰から眺めながら、自分もそこに加わりたくてしょうがなかった。
「この森を制圧するぜよ」
森の入口で、猫のナンダヤンが家来たちに言った。
「抵抗する動物はすべて捕まえてワシらのオモチャにするきに」
オー!
アー!
アーウ!
と、猫たちは声を揃えた。発情期のメスもいた。
なっくんは木の陰からそれを目撃してしまっていた。
『この危機を救ってみせたら、森のみんなもぼくに一目おいてくれるかも?』
そう考え、みんなには知らせず、自分ひとりで解決することにした。
なっくんは穴堀りの名人である。
猫の通り道に急いで穴を掘った。
大きくて深い穴を堀り上げると、ティッシュペーパーを山ほど持って来て、ふわりと穴を隠した。その上にパラパラと草を撒いてカムフラージュする。
なっくんは頭がいいのだ。
出来上がった落とし穴を見て、なっくんはくくっ、くくくっ、と笑った。
そして猫たちがやって来るのを待った。
茂みの中に隠れて待った。
イタチは茂みの中が好きだ。居心地がいいのだ。
なっくんは眠った。イタチは1日20時間寝る動物なのだ。
ヒーローになった夢を見た。
はっと目を覚ますと夜になっていた。
目の前に誰かが立っていた。
「我々ハ、宇宙人デス」
ちっこくて丸っこい豆みたいなのがそう言った。
「コノ穴ヲ掘ッタノハ、アナタデスカ?」
見ると穴の中にちっこくて丸っこい豆みたいな宇宙人がいっぱい嵌まっていた。体型的に穴から出られなくなって困っているようだった。
出ようとするとコロコロ転がってしまうのだ。
なっくんは自分の長い身体を使ってせっせ、せっせと宇宙人たちを1人ずつ、出してあげた。
ごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら。
森のみんなは猫に制圧されていた。
ボスのナンダヤンはみんなを縛り上げ、にゃはははと笑いながら、言った。
「森の夜明けぜよ」
その時、明るくなりはじめた森の広場を、何かちっこくて丸っこいものがひとつ、コロコロと横切った。
その後にも次から次へと横切った。
猫に興味をもつなというのは無理なくらい、横切った。
「ウニャニャニャニャ!」
猫たちは一斉に駆け出し、転がる宇宙人たちを追いかけていった。
ボスのナンダヤンも難しい顔をして、無言で夢中になって、どすどすと追いかけていった。
「なんなんだ……」
縛られたコラが呆気にとられて呟いた。
「チッ。死ねると思ったのに」
いけさんがくわえタバコで呟いた。
「ひょひはんが旅行中で危なかった」
そう言うこむの縄を誰かが噛みちぎってくれた。
「あっ。お前は……」
「誰だっけ?」
みんなにそう言われながら、なっくんはぺこりと挨拶した。
「今までお世話になりました。ぼくは豆ころ星人さんたちについて宇宙へ行きます」
猫を夢中にしてあげた豆ころ星人たちは戻って来ると、森のみんなに警告した。
「4年後、我々ノ仲間ノ侵略派ガ、コノ森ヲ侵略シニヤッテ来マス。頑張ッテクダサイ」
そんな楽しそうな言葉を残して宇宙船は空へと帰って行った。仲良くなったイタチのなっくんを乗せて。
「誰だったっけ?」
「あんな長細いの、仲間にいた?」
「あれ何て動物?」
「イヌ? ネコ? ネズミ? ……違うよねぇ……」




