こむ
こむは哺乳類である。
哺乳類だからヘソがある。
顔料マーカーで描いたような、青いヘソである。
「なぁ、こむよ」と、コラが言った。「お前のヘソはなぜ青い?」
こむは答えた。「知らん」
コラは尖った身体をくねらせて、笑う。
「知らんて、自分のことだろう」
「だって俺が作ったんじゃない」
そうだがや、そうだがや、と口々に言いながら、101匹のぼんのー君が通って行った。
こむはヒマだった。
道の真ん中に立っていただけだった。
ヒマだったので頭に浮かんだ言葉を呟いていた。「ひょー」と。
「ひょー」と独り言を楽しんでいるところにコラが来たのだった。
コラはヒマではなかった。
彼は森の警備員なのだから。
こむが立っていたので存在質問をしたのだ。
「どぼこしょ」と、こむが言った。
コラとの会話の隙間を埋めたのだ。
コラは困っていた。
警備を続けなければいけないが、あまりにこむがヒマそうだったので。
そこへこむが口を開いたので、チャンスとばかりに言葉を捕まえた。
「どぼこしょってどういう意味?」
「知らん」
会話が終わった。
こむをほっておけない。なんだかほっておけない。さびしそうで、かわいそうだ。
そんな気持ちと警備の板挟みにコラが勝手に苦しんでいると、こむが言った。
「ばかにするなよ?」
「え?」とコラが青ざめた顔をする。
するとこむがすかさず言った。
「青いもの、なーんだ?」
またこむのクイズが始まった。コラは頭を抱える。
どうせ考えに考えて、答える頃には熟睡しているんだろう? 答えるだけばかみたいだ。
いやしかし、今回のクイズは簡単だった。青いもの、それは目の前にある──
「ぼくの顔色だね?」
コラが自信たっぷりに答えると、こむは激怒して襲いかかってきた。
「どう考えても正解はぼくのへそだろ! 青ざめた顔が本当に青いとでも思ってんのか! 鏡を見てみろ!」
貞◯子のような低姿勢で襲いかかってきたこむが手鏡を差し出した。
コラはそこに映った自分の顔を見る。呟いた。
「この上なく青いじゃないか!」




