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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅱ.鮭の力は世界を変える!? 羽州一の空き巣泥棒
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#82 竜鬼、相まみえました。

 もともとは全くもって問題視してもいなかった事に対して今、非常に頭を抱えている。いや、それどころの騒ぎじゃない。


「……フッ」


「フフン……」


 悠香が余計な事をしなければ何事もなく最後ぐらいは平穏無事に終わっただろうこの『奥羽戦争』の命運が……


 あろうことかこの奥州で最も任せられてはならない二人次第になってるのである!!






「いや政宗殿?俺としては、その後で勝負したいって事ならいくらでも相手してやるから取り敢えず、この戦いを終わらせてくれないか?そこは納得してもらえてると……」


「ああ言った。だが、戦の最中(さなか)でなければ橋本の鬼姫殿と全力で手合う事は叶わないだろう!なにより面白いではないか!伊達は戦にこそ敗れど、武士の矜持(きょうじ)は伊達に勝る者無しと!この戦で伊達の名を天下に轟かせるのだ!!」



 政宗ェ、負けを認めてるのにテンションが完全に戦勝国。そして負けた筈なのにここから伊達の名声を高めようとするんだと申される。こりゃ伊達も悪名高くなる訳だ。服装が派手なんてまだおとなしい方だった事を思い知らされた。


 そして、こうなっては引き下がる気配なんて無いのは誰だってわかる……だから、良い感じに戦って満足してもらうのが一番穏便に終わらせる方法だったんだが……



「つまりこれで勝ったら私、さいきょーって事だよね!?とーぜん!受けて立ってやりますとも!」



 一番穏便からかけ離れた方法に突進する悠香。負けたら当然駄目だし、本当に政宗をボロ負けさせちゃっても降伏勧告に応じかけてた政宗の気持ちを変えかねない。そうでもなれば米沢城と旧蘆名領丸々、追加で戦わないとならなくなる。

 ……仮に勝ったとしても国力も限界。もっと大きな勢力……北条は勿論、近場の国で言うなら南部とか佐竹とかに寄ってたかって叩かれて詰む未来しか見えなくなる。



 だから是非とも悠香には自重して頂きたかったんだが、現実は非情。


 その結果、目の前で戦国一の問題児の独眼竜とそれにも負けじと問題児の鬼姫による世紀末的一騎打ちが……繰り広げられそうな緊張がずっと続いてる。


 と言っても鬼姫の異常性を理解しているのは俺とせいぜい悠香による遠野での惨劇を見てきた人くらいなので、伊達家の面々は「まぁ大丈夫だろう」と、お気楽ムードではあるものの俺からしたら見てられない。結果が怖くて。



「やぁあっ!!」


「ふんッ!」


 とうとう始まった。気分は怪獣同士が戦ってる町でローン組み立ての家を壊されて逃げてきた住民。当然ながら戦国時代に保険サービスなんて普通やってないので借金だけが残されたような絶望感……戦国時代には住宅ローンも無いと思うけど。



 先に長槍みたいな棒を突くようにして攻撃したのは此方(こなた)の問題児、悠香。


 その攻撃を(無駄に格好良く)手持ちの棒で切る動作をするように弾く彼方(かなた)の問題児、政宗。政宗に芸術点50点。基準とか無いけど。


 だけどちゃんとした遠野で悠香がキレて追いかけ回していたのとは違ってそれなりに試合っぽく始められた事に加えて、政宗が遠野で戦った剛助とはかけ離れた実力、と度胸を持っている事で結構良い戦いっぽく見える。本当の所どうなのかこれまたわからないけども。


 ただこの二人の勝負自体はそれなりに良かったようで、最初の内は緩い空気の漂っていた政宗側の武将達も徐々に見入るようになっていた。


 だがそんななんともなさげな場面でも発揮されるのが俺の運の悪さ。


 右へ行ったり左へ行ったり……結構動きが大きくなって来る。悠香の方にはそんなにしっかりとした知識とか経験とかはあるようには感じないが、それでも長続きしているな……と思っていた所、政宗が踏み込んだのに対して悠香が一歩下がって、政宗を棒で薙ぎ払おうとして大きく振りかぶって……


 次の瞬間、場外の筈の縁側に座る俺の顔の直ぐ左に木の棒が入って来て……


「ぐふぇ!?」


「あれ?」


 一対一で政宗と戦っている筈の悠香に味方撃ちされた。






 確かに、その可能性を考慮してもっとしっかり下がった所から観戦していれば良かったという事でもある。その点では俺の落ち度でもあるんだが、何故だろう。たとえ館の中から見ていたとしても何か起こっていた気がしてならない。

 悠香の手から不思議な滑り方をした木の棒がまっすぐ俺の顔面に向かって来たりする……なんて事が在り得なさそうで必然的に起こっていた気がする……事故不可避の呪いと言うべきのような何かがあるんだろう。


 結果的にはそれで政宗は「伊達最後の戦にふさわしい妙な戦が出来た!」とたいそうお喜びで、話が進んだのは良かったのだが、一体何が起きたら降伏勧告に行って受諾されたのにその代表兼大名が頬をぶたれて帰って来るなんて事があるんだろうな。それも味方に。


 だが、何はともあれこれでひとまず長かった『奥羽戦争』が終わった。終わった!ようやく戦いを終わらせられたのだ!


 ……そうは言ってもまだまだ最初の壁を乗り越えただけだろう。むしろここからが一段と難しくなる。戦っている間中、完全にほったらかしていた内政も立て直さないといけないし、人材配置パズルと軍隊の配備、訓練、加えて補給線の確保に、新兵器の下準備と現状の戦車の修復と……しなければならない事も盛りだくさんだ。


 このように大名は極めてきつい仕事だ。未だ本番じゃないだろうけども今でも忠告できる事がある。


 異世界に行ったとしても職業に『大名』を選ぶのは止めておいた方が良い。よっぽど仕事をする事自体が好きでない限りな!

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