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空き城見つけたので大名を名乗ってみる ~イージーモードの大名インターン~  作者: 水饅頭
Ⅱ.鮭の力は世界を変える!? 羽州一の空き巣泥棒
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#80 決戦、向かいました。

 杉目城。今となっては数少ない伊達方の城で伊達家の隠居城。


 だった記憶なんだが違ったか?


 白石城に着くと守棟が留守番をさせた者から杉目城へと向かったと伝えられ、実際に行ってみると既に丸に違い鷹の羽が……

 一応、伊達の罠という事も警戒して戦車に乗り込んで向かったところ守棟自身が城から飛び出してきたお陰で罠ではない事と守棟本人の確認が取れた。


「白石城を落とす際まるで抵抗されず、被害も出なかったためその足を杉目まで伸ばしてみたところこちらももぬけの殻だったという次第です。途中、伊達の兵と遭遇し一部取り逃がしてしまったため慎重に兵を進めていたために少し連絡が遅くなってしまったようで申し訳ありません」


「いや無事で何よりだ。それにしても長蛇作戦、上手くいった……んだよな?」


「長蛇の胴から尾に僅かな伊達軍が取り付く場面も報告ではあったようですが殿のお考えの通り、伊達からすると利府、小泉、白石、それに杉目という足元を一息に、文字通り蛇に呑まれたように掬われた様となっているでしょう。ただそれでもかつての蘆名領を持つ伊達家と私達橋本家はようやく互角、兵力に至っては残念ながら未だ私達の方が劣っていると言わざるを得ないでしょう」


「それは無いな。旧蘆名は一枚岩じゃない。伊達が敗色濃厚になった段階で敵にはならなくなるから残るは米沢だけだ」


 政宗が降伏勧告に応じるかどうかはわからないが、そのための『友達申請』の乱発だ。もっとも、これで協力関係を築ければ伊達戦後の敵も減るという嬉しいオマケ付き。


「では、すぐにでも米沢に?」


「そのための『戦車隊』だ。戦いをできるだけ早く、それでいて勝利で終わらせるためには時間も惜しんでられないからな。すぐ本隊について来るかどうかは任せる」


「承知しました。休養を取らせた後、すぐに後を追いかけます」


「分かった。無理しない範囲で頼む」


 夏の暑さも和らいできた。この世界に合わせた時計によると八月ももう終わり、太陰暦仕様じゃないからこの世界の日付とはずれているんだろうけどもうじきこの世界に来て半年。

 簡単に言えば『誰も悲しまない世界を作る』、そんなどうしようもなく子供っぽい『夢』のために戦い始めたわけだが、特にここ一ヶ月。果たして『悲しまない世界』は近づいたのか?


 ……戦っていて、近づく訳は無い。最前線勤務で見知った人が次々倒れていくのを淡泊に眺めていた俺でも解る。もしかしたら俺はあの時、伊達王国と戦う必要は無かったのかも知れない……ゲームの選択肢にはそんなの無かったけど、現実ってのはゲームには無い選択肢も選べる。


 だけどやり直しは当然、できない。今できるのは……


 出来るだけ、悲しみを少なく抑える事、できるだけ速く、損害を抑えて、戦いを終わらせることだ!



 橋本本隊の兵が整列して待機している。ある者は隣の兵と談笑しながら、またある者は回りを確認をするように眺めながら……


 学校での整列みたいだな……


 不覚にも、ちょっと懐かしさを感じた。あの時の俺が見ていた世界は、もっと……



 明るかったんだよな。



「橋本本隊!出陣だ!伊達との決戦に向かうぞ!!これで終わりだ!!」






「中新田、名生、岩出山、利府、小泉、白石……本当に偽報じゃ無いんだろうな!?」


「はっ!!いずれの城も逃げ出せた者は居ないようですが、確かに橋本の旗が立てられていたと報告が次々と入っております!!」


「くそっ!!何がどうなっている!!岩崎から角館に向かっているはずの藤五郎と小十郎の軍勢はどうなった!?」


「岩崎にて『夜叉九郎』戸沢盛安と刀折れるまで戦ったもののこれを破れず、退却中で御座います」


「退くといっても何処にだ?葛西も持ちこたえられる筈は無かろう。だがそれではどっちを見ても橋本しかいないぞ!!四面楚歌ではないか!!」


「それ以上はなんとも……」


 ただでさえ自尊心の高い政宗が小十郎と共に練って「必勝かつ奇策かつ損害を抑える戦術」と絶対の自信を持っていた策が思いもよらぬ所から思いもよらぬ事で音を立てて崩れ去ったというのだから平生を保てるわけがない。


 しかも政宗が直々に『囮』である伊達本隊を率いて山形に籠るいろいろと因縁深い叔父、最上義光と戦っていた際に二度も同じ手で奇襲を許した事が政宗の高いプライドに深く傷を付けていたところに突然の敗北宣告が届けられたというのだから果たして心穏やかな事があろうか?


 しかし政宗も自暴自棄になって失敗を重ねるほど馬鹿ではない。残る数少ない戦闘可能な伊達方の城を駆使して全力で義光の軍勢の進軍を遅らせ、弟の小次郎改め蘆名政道が連れてきてくれるであろう援軍を頼りに抵抗を続けていた。


 その政宗の下へ待ちに待った人物がやって来る。


「氏実!待ちわびたぞ!」


 富田(とみた)氏実(うじざね)。元、蘆名家臣で政宗の弟の小次郎を当主に推し、史実と異なり成功させた伊達王国成立の影の功労者の一人である。


 その氏実が政宗に聞かれる前に答える。


「申し訳ありませぬ!蘆名より援軍は無い物とお考え下され!」

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