#78 兵器、無双しました。
「お味方が城門へ取り付きました!されどこれまでの城とは訳が違うようで簡単には砕けて居りませぬ!」
「流石は伊達の者共が皆、口を揃えて『利府は落ちぬ』とぬかす城か。だが雷神様が辿り着くのは鞠挟みと鷹の羽が翻る利府城とせねばならぬ!!さもなくば由利の面汚しぞ!!」
声を張り上げ兵を鼓舞する『赤鬼』満安。利府城の外門が壊れかかったその時、満安のもとへ矢文が届けられる。
「矢文だと?降伏の申し入れか?」
「いえ、殿の率いる軍勢から放たれたもの、と」
報告とほぼ同時に利府城の外門が破られ矢島兵の先鋒が城へとなだれ込む。
満安が見たことの無い紙が括られた矢文を広げるとこれまた墨ではない何かでたった一言。
「『ワナだ!!』者共下がれ!!」
満安自身も言った後から伊達の真意を悟る。
「ぐあっ!!」
「うぐっッ!!」
満安にとっては味方として聞き覚えのある破裂音が多数、味方の断末魔と共に聞こえてくる。
「火縄銃に御座います!伊達は老兵に火縄を持たせ、本丸門より撃ちかけております!」
「退けェ!火縄如きの前に倒るるなど無駄死にぞ!!」
有らん限りの声を張り上げて撤退を指示する満安。先鋒の兵達が第一射が止んだのを見計らい退き始める。火縄銃の射撃には時間がかかる、橋本の兵の言っていた『三段撃ち』なる技を使えど城より逃げ出す隙はある。
「『いの組』伏せー!!撃てェー!!」
そんな先鋒の予想に反し早くも第二射が撃ち込まれる。満安も長篠の戦いでの三段撃ちについては聞き及んでは居たが、目の前で起きた事は三段撃ちでは説明がつかない程に素早い攻撃だった。
「『ろの組』伏せー!!撃てェー!!」
更なる驚きの攻撃が続く。三射目だ。これで三段撃ちに並んだ。それほど当たっては居ないようだがそれでも確実に被害は出ている。伊達が鉄砲を持っている事も満安にとっては予想外だったが何より伊達が妙な術を使ってその鉄砲の弱みたる隙を織田以上に見せずに撃ちかけて来るという事が余裕を失わせる。
「『はの組』伏せー!!撃てェー!!」
第四射目。その場にいる『三段撃ち』を知る者全てを震撼させた。織田は天賦の軍才を以って火縄銃の手数を三倍にする『三段撃ち』を編み出し、武田を滅亡の淵へ追いやった。
そう信じる満安や居合わせた兵達は今、武田を滅ぼした『三段撃ち』を上回る『四段撃ち』とでも言うべきものをその身に受けている。
それゆえに恐慌状態に陥った矢島隊は一目散に城を駆け下りていった。
全く攻撃しない利府城の様子に気づいてとっさにノート一枚を使って飛ばした矢文はあと一歩のところで間に合わなかったみたいだ。それで矢島隊に相当な被害が出てしまったみたいだ。それでも被害を百人近く出したと言うべきか、百人弱で済んで良かったと言うべきか……どっちにしてもただでさえ人が少ない橋本家にとってはかなり大きな損害だ。
「申し訳ありませぬ!!功を焦ったばかりにこのような事に……」
「取り敢えずそれは後だ。それより敵の戦い方でわかってる事をできるだけ詳しく頼む」
「はっ!!敵は数も少なくその上老兵ばかり、まともにやり合えばこれまでの城のように一刻足らずで討ち破れる弱兵で御座います。されど敵は皆、火縄を持ち、『四段撃ち』を使って居ります。何か手を打たねば唯々兵を無駄に損なう事は殿もご承知かと……」
妙に怖気づいてる満安の報告、だけど根本的な問題は解決できてそうだ。
「分かった。矢島隊は休息をとっててくれ、これはまさに『戦車』の出番だからな」
狭い所に正面からの遠隔攻撃が問題なら最強の盾を持ってじりじり詰め寄って行けばいい。正面にしか装甲を持たないけども攻撃も出来る橋本家の戦車にはうってつけの戦場だ。
「戦車隊、全部は入れなさそうだから取り敢えず生きの良い車両を五両、選んでついてきてくれ!あと足軽もついてこれる人、戦車の脇の護衛を頼む!」
応!の返答。見た感じだと二百人ぐらいで利府城登山をすることになりそうだ……やっぱりちょっと行軍速度速いのか、結構みんな疲れてるみたいだな。人数としては丁度いいんだけども。
「で、でよったぁァァァ!!!橋本の朧車じゃァァァ!!!」
「まことに牛も馬も居らなんだ!祟りじゃ!祟りじゃァァ!」
「何を言うか!朧車などただのまやかしに過ぎぬ!撃てェ!」
ただでさえ弱そうな足腰を恐怖で震えさせながら俺と悠香の乗る先頭の『改』戦車を狙い、撃ち込む伊達の老兵。距離が近いからか俺の思ってた以上に装甲としている正面の鉄板に当たる命中弾の音は多いけども当然貫通はしない。しっかり戦車搭載の士筒でテスト済みである。
そしてその正面装甲唯一の弱点、『改』でマイナーチェンジされた点の一つののぞき穴から安全に伊達軍の戦法を確認できる。
「『いの組』伏せー!!撃てェー!!」
次弾発砲。早い。けどもだいたいわかった。本丸への狭い道に四列に兵を並べて一列目が撃ったらすぐ伏せて二列目に撃たせてを繰り返すやり方みたいだ。でも何でそんなに間も速いんだ?
「『ろの組』伏せー!!撃てェー!!」
成程、後列も既に撃つためにもう引き金を引くだけの所まで準備してあるのか。熟練の兵どころか若兵まで政宗と成実が連れ回しているだろうから訓練も出来てない徴兵したてホヤホヤの老兵だろうによく暴発とか起こさないな。
「はっ『はの組』伏せー!!撃てェェ!!」
さっきから相当数の弾を撃ち込んでるはずなのに一向に止まらない戦車を前に慌て始めた様子の敵軍。もう既に撃ち終えた二列目までの兵はとっくに本丸へと逃げ込んでいて、三列目、『はの組』の兵も撃つや否や伏せさえせず全力で逃げて行く。
最後の、恐らく『にの組』も撃ち終わると火縄銃さえ投げ出して閉じかけていた本丸門に飛び込んでいく。残念ながら振り子式戦車は速力を出せないので兵士に続いて飛び込んでこじ開ける……とかみたいなかっこいい事は出来なかったが、レーザー一発で縁の金属を弱らせた後、士筒で五、六発、扉の間を狙ってやると、扉が機能停止。内側の閂ごと撃ち抜いていたみたいで本丸門が開く。
あとはここまでついてきた足軽兵と城下で待機中の満安にGOサイン。そして門から少し顔を出す形で館をひたすら撃ち続けながら降伏待ち、ってところかな。




