マッチョヒゲと遭遇③
サフィーナがマッチョヒゲに捕まってしまい、逃げられないと悟ったので、とりあえずテーブルに戻った。
「すいません…私がグズなばっかりに…。」
「気にするな、変態マッチョヒゲが悪いんだよ。」
「俺のことマッチョヒゲって呼ぶのやめてくれない?」
サフィーナを慰めるニアにマッチョヒゲが懇願する。
「そんなこと言っても俺たちお前の名前知らねーもん。」
ラグは追加注文したデザートに舌鼓を打ちながら言う。勝手に頼むな。
「それは申し訳なかった。俺はグィンガンだ。」
「変態マッチョヒゲの名前なんか呼んでやらねーよ。」
「そんな!」
アホなラグにからかわれるマッチョヒゲ。
「…とにかく話を聞きましょうよ。でないと話が進まないし。」
業を煮やしたサフィーナが提案してきたので「そうだな」と肯定しておいた。
「その弟子が出て行った詳しい理由を教えてくれ。」
俺が尋ねると、グィンガンが頷く。
「俺の弟子は大学に入って3年になる。勉強熱心で、生活態度もよくて、大学からも期待されてたんだ。俺が指導教官で、立派な学者になるだろうってすごい楽しみにしてたんだ。」
「ほぉほぉ。」
ラグが適当に相槌を打つ。
「でも最近になって、新聞で本物の勇者が現れたってニュースを見たみたいなんだ。その新聞で偽勇者が本物の勇者の仲間を奪って好き放題、略奪行為を繰り返してるて書いてあって。」
「ほぉほぉ?」
なんだ、ちょっと雲行き怪しくねーか。
「それで弟子は『俺が開発した魔法で偽勇者を倒してやるんだ!』って言って数日前に出て行ってしまったんだよ。あいつは戦った経験がないから本当に心配なんだ。」
グィンガンが心配げに溜息をつく。一方俺は「ちょっとタイム」と言って、テーブルから立ち、ラグたちを呼んだ。
「おい、偽勇者ってどう考えても俺たちのことじゃねーか!」
「略奪行為ってなんだよ!俺そんなことしてねーぞ!」
ラグが憤慨する。
「分からないけど、あたしや森のエルフのサフィーナを無理やり連れて行ったことになってるんじゃないのかい?」
「しかも、そのせいでお弟子さんが出て行っちゃったんですね。」
「サフィーナ、それは絶対にグィンガンに言うなよ。」
やっかいなことになりそうなので、サフィーナに口止めしておく。
「とにかく、俺たちが偽勇者ってばれる前に探し出すぞ。じゃないと札束がぱぁになるからな。」
「「「了解!」」」
3人がびしっと敬礼する。全員と目を合わせ頷いた後、テーブルに戻る。
「何かあったのか?」
「何もない!今後のことについて話し合ってただけだ。」
「そっ、そうか。」
前のめりになり顔を近づけて答えると、グィンガンは若干引いていた。
「マッチョヒゲは、弟子が向かった場所に心当たりはあるのか?」
お前、名前聞いたのに結局読んでやらないのか、ラグ。
「たぶん、モリアルゴンを出て少し行った所にある領主の屋敷だと思う。屋敷には教会もあって、そこで聖女様が祈り捧げる予定になってるって新聞に書いてあったからな。」
「また聖女様かい…。」
ニアがげんなりしていると、グィンガンが「またってどういうことだ?」と尋ねてきたので、サフィーナに合図して、その口に無理やりパンを押し込まさせた。
「うぐぉ!」
「じゃあ明日、その領主の屋敷に行ってみるか。」
「「「了解!」」」
「ぐおぁああ!」
マッチョヒゲがうるさかったのでげんこつで黙らせておいた。
「なんで俺がお前と同室なんだよ!俺、ニアたちと寝たい!」
マッチョヒゲと明日、宿の前で待ち合わせをすることにして解散した。あとは寝るだけになり、俺たちが部屋に戻ろうとすると、ラグが「もう一度部屋割りを考えなおしたい」と言い出した。
「何いってんだ、脳みそ3歳児。このメンバーで男は俺とお前だけ。つまり同室になるのはあたり前だ。」
「いやだ!断固拒否する!俺はニアかサフィーナとおんなじ部屋に寝たい。」
「何言ってんだい、あんた。」
ニアが呆れた声を出す。さすがのサフィーナも今まで見たことがないような冷たい目でラグを見ている。
「…ラグさん。さすがにそのお願いは聞けないです。」
お、サフィーナいいぞ。頼むこいつを黙らせてくれ。
「頼む!頼むよ!俺の体を危機を救ってくれ!」
「体の危機?」
サフィーナが首をかしげる。おい、なんだ体の危機って。
「俺、こいつと一緒の部屋で寝るなんて怖くてできない!きっとおんなじ部屋になったら押し倒される!頼む!俺はあんなマッチョヒゲに似た男に押し倒されたくない。
ラグが叫んで俺を指差す。おい、サフィーナとニア。そんな「知りませんでした」みたいな顔でこっち見るな。俺も初耳だ。
「だから俺を助けると思っておんなじ部屋で寝させてくれ!床でもいいんだ!」
「たしかに女の子にされてたけど、そんな関係だったなんてねぇ。」
「オレグさん、無理やりはいけませんよ。」
やめろ、サフィーナ。そんな目で見るな。
仕方ないかねぇとニアがつぶやくと「よっしゃなら行こう!」とラグがニアの肩を抱く。
「疲れたしすぐに寝ような!」
「…てめぇ、いい加減にしろよ。」
そんなにやけた顔して何が俺と一緒に寝るのが怖いだ。ただ女と寝たいだけだろ間抜け。
「そんなに早く寝たいなら今すぐ眠らせてやる、この鳥頭。」
「はぎゃあ!」
ラグの首元に手刀をお見舞いすると、その場に倒れこんだ。
「お前ら、あんまり馬鹿のいうこと真に受けるなよ。馬鹿になるぞ。」
「そうだね…。」
「気を付けます。」
「おぉー。じゃあおやすみ。」
「「おやすみなさい。」」
俺は二人が部屋に入るのを確認してから、ラグの脚を持って引きずりながら自分たちの部屋に戻ったのだった。




