マッチョヒゲと遭遇④
「それじゃあ領主の家まで案内するぞ。」
「うわ、マッチョヒゲなんでそんなかしこまった格好してんの?気持ちわるっ。」
「ひどい!」
宿の前まで来たグィンガンにラグが罵声を浴びせる。確かに礼服みたいなかっこいい服をきてやがる。変態マッチョヒゲのくせに生意気だな、おい。
「領主様にお会いするかもしれないんだから、ちゃんとした格好するのは当然だろ!なんでお前たちはそんな小汚い恰好してるんだ!」
グィンガンが俺たちを指差す。
「仕方ねーだろ。金がないんだよ、金が。」
俺があくびをしながら答えると「仕方ないな。」とグィンガンが溜息をつく。
「もしかしたら聖女様にも会えるかもしれないのに、気合が入ってねーなお前ら。」
「…会いたくもないね。」
ニアが小さな声でつぶやいたが、幸いにもグィンガンの耳には届いていなかったようだ。
「よーし、さっさと行くぞ。変態ロリコンマッチョヒゲ。」
「ロリコンを増やすな!」
ラグささっさと歩き出し、グィンガンがわめき散らしながらその後を追った。
「おい、変態ロリコンショタコンマッチョヒゲ、あんまり近づくなよ。変態が移るだろ。」
「どんどん増やしていくのやめろ!」
先を行くラグとグィンガンはずっと言い合いを続けている。
「それにしても、グィンガンさんってすごくかっこいいですね。」
隣に来たサフィーナがほぉと溜息をつく。
「なんだ、本当にタイプだったのか。いいじゃねーか、あいつもロリコンみたいだしお似合いだぞ。」
「そういう意味じゃありませんって前も言いました!」
サフィーナがぎろっとにらんできたので両手を上げて「すまんすまん」と謝っておく。
「まぁ、分からんでもないな。妙な色気があるというか…。」
「あんた本当にそんな趣味があったのかいって言いたいところだけど、まぁ分かるねぇ。」
ニアまで同意してきた。
「まぁ顔立ちは整ってる方だとは思うけど、もっとかっこいいやついるのにな。なんだかなー?」
俺はグィンガンから感じる妙な違和感の正体をまだ突き止めることができないでいた。
「ここが領主様の屋敷だ。」
「うわ、趣味悪!」
「やめろ!」
正直な感想を漏らすラグを一応諌めるが本当に何とも趣味の悪い屋敷だな。領主は成金趣味なのか、あちらこちらに金にものを言わせたような金ぴかの彫像が飾ってあるし、あっちこっちに色とりどりのバラが咲き乱れている。屋敷の窓もすべてステンドグラスになっていて、目が疲れるわ。
「んで、教会が屋敷の裏の方にある。そこは出入り自由だから早速行こう!」
弟子に会えるのがよっぽどうれしいのか、グィンガンが目を輝かせて教会へ向かう。
「なぁ、オレグ。この彫像かっぱらったらそれだけで死ぬまで金に困らねーぞ。魔法で壊せよ。」
ラグが耳打ちしてくる。やめろ、魅力的な提案してくるな。
「何してんだよ、おい!」
グィンガンが呼びかけてくるが「うるせーぞ、マッチョヒゲ!こっちは将来設計の話をしてんだ!」とラグに怒鳴られしょんぼりしている。
「…いいから行くよ。」
ニアがラグの首根っこを掴んでずるずると引きずる。
「ああぁああ!俺の金えええ!」
「うるせー!」
ぎゃあぎゃあわめきあいながら歩いていると教会に着いた。さすが成金趣味の領主様が作っただけはあって同じように趣味が悪い。ごてごてに飾り立てられている。
「うわー、あたしこんな所でお祈りなんかしたくないよ。」
ニアがドン引きしている。
「そんなことない!領主様が作った立派な教会だ!」
グィンガンが熱弁しているが、誰も聞いてない。てかお前趣味悪かったのか。
「でも勇者様たちは見当たりませんね。」
サフィーナがきょろきょろとまわりを見渡すが、周囲に人っ子一人いなかった。
「礼拝中でみんな中に入ってるのかもしれない。俺たちも行こう!」
グィンガンが教会の敷地に一歩踏み出そうとした時だった。
「ぐぅぅ!」
「グィンガンさん!!」
何者かによって後方から放たれた魔法がグィンガンに直撃した。グィンガンがうめいてその場にうずくまる。サフィーナが急いで駆け寄った。
俺は一応、草陰にガキが潜んでるのは分かってた。俺には殺気が向けられてなかったから気にしたなかったんだが、まさかのグィンガン狙いかよ。
「何するんだぃ!!」
草陰から姿を現した黒いローブとメガネを身に着けた神経質そうなガキにニアが怒りながら聞くが、「だまれ!そいつは攻撃されて当たり前だ!」と胸を張って言いやがった。
「何いってんだ、クソガキ。」
俺が睨み付けると、ガキは少しおびえた様子を見せたが「お前らには関係ない!そいつは俺を裏切ったんだ!」と返してきやがった。
「どういうことだ、グィンガン?」
サフィーナから手当を受けているグィンガンに聞くが下を向いて黙ったままだ。
「おい、グィンガン…。」
「愚かな魔族め、正体を現しなさい!」
俺がもう一度声をかけると同時に教会のドアが開く。その中から出てきたのは勇者と聖女、ニコーラだった。聖女は地面に倒れこんでいるグィンガンを睨み付けている。
「魔族?なんのことだ?」
「オレグ様!その男の目を見てください。」
「あ?っ、お前!?」
グィンガンに駆け寄り、その顔を覗き込むと、紫色だった瞳が深紅に染まっていた。
「深紅の瞳は魔族の証!攻撃を受けると人間の真似ができなくなるようだな!」
勇者が自分の剣を抜く。
「ヴィート、無事だったのか…。よかった…。」
グィンガンがメガネのガキに話しかけるが「話しかけないでください、汚らわしい!!」と一蹴した。
「ヴィート…。」
グィンガンが悲しそうにうつむく。なんだよ、お前魔族だったのか、聞いてねーぞ。さすがに動揺していると、ラグもぷるぷると震えていた。
「おい、マッチョヒゲ!あいつがお前の弟子かよ!全然可愛くねーじゃん!」
ラグ、お前ほんと空気よむこと覚えろ。




