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きみと私の放課後  作者: はる
悠太と彩
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Can you keep a secret?・2

 晴くんと一緒に校門を出て、駅に向かって歩いていく。

 私は上の空だった。

 ユウくん……なんつー爆弾を落としていくの……しかも誰にも話しちゃいけないとか……

 カナくんにすら言っていないって。

 晴くんにも話しちゃ駄目って。

 それって……ユウくんの中で、まだ決めきれていない、悩んでるってことなのかな……

 何となく、何となーくだけど、なぜユウくんが私にその話をしたのか……想像ができる気がした。

 たぶん、誰かに話を聞いてほしかったんだろうな。

 でもそれは、ユウくんをよく知っている相手じゃきっと駄目だったんだ。

 反対されるかもしれない。説得されるかもしれない。表面上は肯定していても、心の中ではどうやってその決心を揺るがせようか考えているかもしれない。

 だってめちゃくちゃもったいないもんね?

 カナくんと二人でずっと頑張ってきて。二人で競い合って、強くなって、最強コンビって呼ばれて。二人そろってプロのハンド選手として輝かしく活躍する、そんな未来を誰もが期待していたんだろう。周りも、自分たちも、ずっとそう思ってきたんじゃないのかな。

 私なら……

 私は別にユウくんのこと、特別よく知ってるわけじゃない。考えてることも全然分からないし。でもまったく知らないというほどでもない。

 カナくんとユウくん、二人がどうやらめちゃくちゃハンドが上手で強いらしいってことは知ってるけど、実際に試合を見たことがあるわけじゃない。

 私にとってユウくんは、ハンドが上手な子、というより、いつもお菓子を欲しがる手のかかる後輩って感じだ。

 それくらいの距離感の相手に話すのがちょうど良かったのかもしれない。

 ……でも、いきなりそれを聞かされた私の気持ちは!!

 いや、もちろんそんな大切な話、誰にも言わないよ!? 当然晴くんにだって。普段あまり何も考えずに晴くんに何でも話してしまう私だって、言っちゃいけないことくらい分かる。

 ユウくんの未来の話。

 きっと悩みながら打ち明けてくれた話。

 さすがにそんなの、軽々しく口に出したりできないよ……

 ああー、でもそんな爆弾をいきなり渡された私は、この行き場のない自分の気持ちをどうしたらいいの……!

 私がうつむいて歩いていると、不意に晴くんが私の手を握った。

 えっ?

 晴くんの顔を見上げる。

 晴くんは穏やかな顔で私を見つめていた。


「……ちょっと疲れたか? 最近忙しかったやろうし」


「え……あ、ううん……ごめん、ちょっとぼーっとしとった」


「ええよ、もっとゆっくり歩くか? 今後の生活のこととか、いろいろ考えなあかんこといっぱいあるやろうし、俺のことは気にせんでええから彩のペースでゆっくり歩いてこう」


 晴くん……

 やっぱりどこまでも優しい……

 東京の学校への進学を決めた私のこと、全然責めなかった。詰問しなかった。ただ彩が決めたことなら頑張るんやで、って言ってくれた。

 入学手続きとか、住む場所を決めたり、引っ越し準備したり、これからやらなくちゃいけないことがたくさんある。不器用な私は早めに取り掛からないと、間際で絶対にパニックになるのは目に見えてる。

 晴くんはそんなことまで一緒に考えてくれて、そばにいる間、出来るだけ私に寄り添って助けてくれようとしている。

 ほんとに……晴くんと離れて、本当に私はやっていけるの? 全然想像がつかない。

 今も毎日、これで良かったのかなって不安になる。私の決断は間違っているんじゃないの? って思う。進学も引っ越しも全部やめちゃおうかなって。

 でも……でもやっぱり、晴くんの隣に堂々と立てる私になりたい。こんなに大好きで素敵な人の背中に隠れて生きるんじゃなくて、隣に立って、手をつないで歩いていきたい。

 だからやっぱり私は行くしかないんだ。

 私はゆっくり晴くんにもたれかかった。


「あのね、別に疲れたとかちゃうねんけど……でもゆっくり歩きたいな。その方が晴くんといっぱい一緒におれるから」


「うん、そうしよう」


 だんだん日が長くなっていく。春が近づいていく。

 私たちが離れる日が迫ってくる。

 あたたかい春は好きなはずなのに、もっと寒ければいいのに、花のつぼみも膨らまないで、と無意識に考えてしまう。

 絶対に時間が逆流することなんてないのにね。

 だから私は、私たちは、二人で一緒に過ごせるこの時間を大切にしたい。


「……あのね、東京に行っても、しょっちゅう連絡していい? 毎日どころか、四六時中連絡しとってもいい?」


「もちろん。むしろ俺の方が彩より先にメッセージ送っとるんちゃうかな。きっと離れた後も、彩に報告したいことが毎日いっぱいあるやろうから」


 この声をずっと聞いていたい。この手をずっとつないでいたい。

 晴くん、好きだよ。大好き。晴くんへの気持ちで心をいっぱいにして、晴くんが私を好きでいてくれる気持ちで心を包み込む。

 体は離れてしまうけれど、心はずっと一緒にいるって信じたい。


「晴くん……もう自由登校になるけど、私毎日学校に来る。だから晴くんも来おへん? できるだけ一緒にいたい」


「ああ。別に学校だけやなくて、どこで会ってもええねんから、いっぱい会おうな。俺も部活引退したし、時間はいくらでもあるから。毎日一緒にいよう」


「私、向こうに行っても、休みのたびにこっちに帰ってくるし……だから晴くんも東京に遊びに来てね」


「そうやな、毎週末夜行バスに飛び乗っとるかもしれんなあ」


 どれだけたくさん約束をしても、どれだけ甘い話をしても、ロマンチックな気分にはならなかった。

 本当にそんなことできるのかなって不安の方が強い。

 やっぱり私は臆病だ。信じたいのに100%信じることができない。

 いつも自分に自信が持てなくてぐらぐら揺れている。

 本当に晴くんはずっと今みたいに私を好きでいてくれる? 私はどれだけ生活が大変でも、晴くんを大切にし続けられる?

 ……あーあ、ユウくんもごめんね。せっかく秘密を話してくれたのに。

 私なんかに話しても、ほんと、どうにもならないよ。

 役に立つようなアドバイスができるわけじゃないし、先に立って背中を見せて引っ張っていけるわけでもない。

 まず私自身がしっかりしないといけないのになあ……


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