雪かきボランティア・3
二人がいたおかげというか、もう一班が加わったから……なのか、午後の作業はものすごく順調に進んだ。
あっという間に屋根の雪は下ろされ、下にたまった雪も若い戦力(私たちだ!)が最後の力を振り絞ってせっせせっせと運び、古い家の周りはすっきりと雪がなくなった。
おばあさんはにこにこして、ありがとうねえ、と私たちに何度も言ってくれた。
……私たちは、どっちかって言うと最初は雪景色が見たい! っていう不純な動機で来ただけだったんだけど……
でもおばあさんが喜んでくれている姿を見て、今日ここに来て本当に良かったな、って思った。
おばあさんは、雪で買い物に行けてないから家に何もなくてごめんね、と言いながら、私たちにおせんべいをくれた。
本当はおばあさんの貴重な食料をもらっちゃいけなかったのかもしれないけど……でもいっぱい力仕事をして腹ペコの私たちはありがたくおせんべいをいただいた。
カナくんはバリバリおせんべいをかじりながら、おばあさんに自信満々に言った。
「ばあちゃん、また雪積もったらいつでも俺を呼べや! 俺にかかれば一瞬で雪なんか消えてまうからな!」
「まあ、頼もしいねえ。ありがとうねえ」
いや、いくらカナくんでも一人ではどうにもならないと思うけど……まあいいか。カナくんが来るときはきっとユウくんも来るだろう。周りのみんなを巻き込んで、また大勢で来ればいいんだ。
帰りの車に乗り込んだ私たちは、腕がちぎれるくらい大きく手を振っておばあさんと別れた。
おばあさんの家を離れると、どっと疲れが襲ってきた。
いや、さすがにね? 初めての除雪を丸一日やると……もう全身がボロボロだあ。
朝到着したバスステーションに生徒たちが集まってくる。
みんなへとへとだけど、自分が行った場所がどれだけすごい雪だったのか自慢しあってる。
気持ちは分かる! 私たちが行った場所だってすごかったもの! 屋根から雪を下ろしていたら、雪がたまりすぎて、屋根からそのまま下にたまった雪の上に降りれそうなくらいだったもの。
私は晴くんの姿を見つけて駆け寄った。
「晴くん! おつかれさま!」
晴くんはすぐに私に気付いて、優しく微笑んでくれた。
えー、晴くんの表情、朝と変わってない! 全然疲れてないみたい。
「彩もおつかれさま。体は大丈夫か?」
「いやー、ほんまに全身ぼろ雑巾みたいになってる。もう最後の方、しんどすぎて体がバラバラになりそうやったもん」
「そら大変や」
「晴くんは? 大変やなかった?」
「まあ……かなり雪が重くて大変やったけど、それはきっとどこも一緒やろうからなあ」
私たちが話していると、すぐに帰りのバスに乗り込むように、と先生が大きな声で言った。
「晴くん、行こう」
今日、日中は別々の場所にいたけど……でも終わればこうして一緒にいられる。
うれしいなあ。めちゃくちゃ疲れたけど、晴くんと一緒にいるって思うだけで疲れが溶けていっちゃいそう。
バスに乗って、帰りはうまい具合に晴くんの隣の席に座ることができた! やった!
今日のこと、おしゃべりしたくて仕方ないのに、バスが動き出した途端、ものすごい眠気に襲われる。
「……あのね、雪って時間たつと固まるんやね。シャベルですくおうとしても、ガチガチに固くてめっちゃびっくりしてん。そんで、お昼に家のおばあさんがぜんざいをみんなに出してくれてね……あったかくって甘くて、めっちゃおいしかってん。そんで午後にね……カナくんが……屋根に……」
ああ、話したいのに口がうまく回らない。
晴くんは静かにうん、うん、と聞いてくれてるのに。
気付いたら一瞬眠っていて、はっと起きてまたしゃべろうとする。でもまたすぐにかくん、と頭が落ちる。
バスの中も、最初はみんなざわざわしておしゃべりの声がたくさん聞こえていたのに、すぐにしん、と静かになった。
カナくんとユウくんも大きな声で話していたのに、それも消えていた。
代わりにそこかしこで小さな寝息が聞こえる。
晴くんは私の体にそっと上着をかけてくれた。
そして、上着の下で、こっそり私の手を握ってくれた。
……あったかい晴くんの手。私も握り返したいのに……眠くて……力が全然入らない……
晴くんが小さな声で言った。
「また今度、今日のこといっぱい話そうな。おやすみ、彩」
……晴くんにおやすみって言ってもらうの、初めてだ……
何だかいいな。同じ空間にいて、すごーく眠くて、そして二人一緒に眠っちゃう。
がくん、と落ちた頭を、晴くんが自分の肩にもたれさせてくれる。
こんな風にくっついて眠れるなんて……幸せだな……
いっぱい働いて、疲れて、晴くんのそばで眠りにつく。
今日って最高にいい日だ。
……おやすみ、晴くん。




