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きみと私の放課後  作者: はる
晴太郎と彩
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朝の教室

 朝、登校して教室に入る。

 うーん、まだ眠い。電車の中でめちゃくちゃ爆睡してしまって、まだ目が覚めきっていない感じ。

 ぼんやりしながら自分の席に座ると、教室に朝練を終えた運動部の人たちが入ってくるのが見えた。私の登校時間はギリギリなので、朝早くから活動していた彼らが体操服から制服に着替え、教室にやって来るのとほぼ同じ時間だ。

 すごいな。彼らは朝っぱらからめちゃくちゃ運動してるんだよね。私は朝が弱いので、早起きして運動するなんて考えられないや。

 その運動部の人たち、の中に、瀬戸くんの姿を見つけた。

 瀬戸くんの視線が私の方を向いて、二人の目が合う。一瞬で、はっと目が覚める。

 少し顔が熱くなるのを感じながら、私はぱっと視線をそらせた。

 ……こんなにあからさまに目をそらすべきじゃない? だって不意打ちだったんで……恥ずかしくなっちゃって……

 私はどきどきしているのを隠すように、バッグからペンケースやノートを取り出した。

 そうしたら、瀬戸くんが私の席の方に歩いてきた。

 ……いや、正確には、私と瀬戸くんの席は同じ列なので、瀬戸くんは自分の席の方に歩いてきただけ、とも言える。

 瀬戸くんは私の席の隣を通り過ぎる時に、少し歩くスピードを緩めた。


「おはよう、花房さん」


 声をかけられて、うわあ、と思いながら、何でもない風を装って私は瀬戸くんの方を見上げる。


「おはよう、瀬戸くん」


 ほんの少し瀬戸くんの頬が緩むのを感じて、また顔が熱くなってしまう。いかん、全然ポーカーフェイスができてないぞ、私。

 でも普段あまり表情を変えることがない瀬戸くんが、こんな風に柔らかい表情を見せてくれるなんて……すごく自分が特別な存在のような気がして、舞い上がってしまうのは仕方がないことだと思う。

 ……いや、特別な存在、ってことで……おそらく間違っていない。

 だって私たちは付き合っているんだから。





 ひとまず、当面の間、私たちが付き合っていることは秘密にしてほしい、と言ったのは私だった。

 瀬戸くんに告白されて、うれしくなって付き合うことにして……最初は浮かれていた私だったけれど、帰り道ではっと我に返った。

 これ……何となく、だけど……周りの人にばれちゃうと、いろいろとめんどくさいことになるんでは?

 まず、瀬戸くんの存在だ。

 別に明確にそんな取り決めがあるわけじゃないけれど、女子生徒の間で、瀬戸くんに告白したり……手を出すことはNGみたいな暗黙の了解があった。

 だって、瀬戸くんだよ?

 同年代とは思えないくらいしっかりしていて、勉強ができて、かっこよくて……。大きな声では言わないけれど、女子の中のある層にとって瀬戸くんは高嶺の花だった。密かに本気で想いを寄せる子だって少なくない、と思う。たぶん。

 そんな瀬戸くんが、誰か一人のものになるなんて、考えられないって人は多いだろう。

 しかもそれが落ちこぼれの私だとか……

 そう、もう一つの懸念は私だ。

 瀬戸くんはお互いの気持ちが大事だから、気にすることじゃないって言っていたけれど、そうは言われても……やっぱり、どう考えても優秀な瀬戸くんと落ちこぼれの私じゃ釣り合いが取れていない。

 そりゃ、そんなこと気にするなって瀬戸くんが言うのはおかしくないよ? でも私がそれを言うと、ただの落ちこぼれがいきがってるようにしか見えないというか……無理に自分を正当化しているようにしか見えない。

 そういう周りの目にさらされる勇気が今の私にはなかった。

 だから、瀬戸くんには付き合っていることは秘密にしてほしい、と伝えた。

 最初、瀬戸くんは私がどうしてそんなこと言うのか理解できなかったみたいだけど、私が思う現状をそのまま伝えることはできないので、ただ恥ずかしいから、とだけ言った。

 そうしたら瀬戸くんも、理解はできないけれど受け入れてくれたようなので、ほっと胸をなでおろした。

 二人で、お互いに彩、晴くん、って呼ぼうって言ってたけど、他の人がいる前では今まで通り苗字で呼び合うってのも約束した。

 うん。今はまだこれでいい。

 それに、もしかしたらけっこうすぐ私たち、別れちゃうかもしれないしね?

 そう思うのには理由があった。

 瀬戸くんはなぜか私のこと好きだって言ってくれたけど、私は本当に好きになってもらう心当たりがなかった。

 だから、実は瀬戸くんは告白する相手を間違えたんでは……という疑いを捨てきれていない。

 なんじゃそりゃ、って感じだけど、古今東西、いろんな少女漫画を読んできた私は知っている! 間違って、とかゲームで、好きでもない相手に告白してしまうパターンが多々あることを!

 瀬戸くんがゲームで告白するようなことはさすがに考えられないので、それなら、相手を間違えたって可能性はあるんじゃないかなあ、と思っている。

 何かの間違いで……他の誰かと間違えて、私のことを好きだと思い込んでいるのかもしれない。

 だって今まで私たち、本当に関わりなんてなかったもんね? 瀬戸くんが私を好きになる理由がない。

 だから、付き合って一緒に過ごしているうちに、瀬戸くんはあれ、もしかしてこの子は自分が好きだと思った子とは違うかも? って気付くことがあるかもしれない。私だって、瀬戸くんに告白されて、うれしいなって思って付き合うことにしたけど、そのうちやっぱり瀬戸くんと私じゃ付き合ってくのは無理だなあ、って思うかもしれないし……。それで別れることになるかも。

 そういう可能性を考えても、やっぱり今は周りの人に私たちが付き合ってるって知られない方がいいんじゃないかなあ、と思った。


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