↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみと私の放課後  作者: はる
悠太と彩
PR
73/104

ボディガード・1

 私はサブバッグの中からお弁当とタッパーを出した。

 そして恐る恐るタッパーの蓋を開ける。

 私がお弁当を出している間にさっさと自分のお弁当を取り出して食べていたカナくんは、横目でタッパーを見た。


「今日のそれは?」


「えーと今日は、チョコクッキー……です」


 クッキーは濃い茶色だった。けれどこれは、チョコの色……なのかなあ? 香ばしい香りがあたりに漂う。

 一瞬でお弁当を完食したカナくんは、大きな水筒に口をつけてぐびぐびと飲んだ。

 カナくんと私、二人の間に微妙な沈黙が訪れる。……二人してタッパーの中のクッキーを見つめているからだ。

 今現在、学校の屋上にはカナくんと私の二人だけ。ユウくんはいなかった。

 ユウくんは今日はお昼休みに何かの係の仕事があるから遅れてくる、と言ってまだここには来ていなかった。

 今日、私たちは屋上で一緒にお弁当を食べていた。

 毎日じゃないんだけど、たまに私はこの下級生のカナくんとユウくん、二人と一緒にお昼ご飯を食べている。

 どうしてそんなことになったかと言うと、話すと長くなるので大幅に端折ると、二人は名目上私のボディガードだからだ。晴くんが私のそばにいない時限定の。

 だから、晴くんがお昼休みに用事があって教室にいない時とかは、私は二人と一緒にお昼を食べることになっていた。

 今日は晴くんは学外のスピーチコンテストに出かけているので、一日不在。

 つまんないなあ……

 別に日中おしゃべりする時間がなかったとしても、教室に晴くんがいるだけで私は一日楽しく過ごせるのに。

 しかも晴くんが不在ということは、わざわざこの二人にお願いして一緒にお昼を食べないといけないわけで……

 ……正直めんどくさい!

 わざわざ事前に二人にこの日はお願いしますって連絡して、場所を決めて集まる。私は二人にボディガードの報酬としてお菓子や食べ物をあげる。

 いや、普通に私、女の子の友達と一緒にお昼食べたいんですけど……

 でも諸事情あって、今のところ私はこの二人にボディガードをお願いしないといけない。(ちなみに私の身に危険は迫っていない)

 だから例え不本意だとしても二人に頼るしかないのだ。

 抵抗するのも面倒になってきたので、もういいや、そのうち二人の方がボディガードって設定に飽きるだろう、と思い、それまでの間は二人とお昼を食べることにしている。

 今のところ二人はやめたいとは言ってこない。

 ああ……

 二人に渡す報酬は、今日はクッキーを持ってきた。なんと私の手作りだ。

 なぜなら、二人と顔を合わせるたび(ボディガードだけじゃなくって、普段学校ですれ違ったりする時も含めてね)毎日のようにお菓子をあげていると、私のお小遣いはすぐにすっからかんになってしまうから!

 二人、めちゃくちゃ食べるからね……

 毎日のように頻繁にお菓子を買い続けるのは無理が出てきたので、私は慣れないお菓子作りを始めた。

 はっきり言って下手だと思う。

 でもほら、彼ら、質より量が大事な男子高校生だから! だから微妙な顔をしつつも私の手作りお菓子を食べてくれていた。

 ああ、早くこの二人とのランチタイムが終わってほしい……私のちょっとやばい手作りお菓子で二人が病院送りになる前に……


「クッキーかあ。また生焼けなんちゃうやろな」


 カナくんは形がぼこぼこしたクッキーの表と裏を確認しながら言う。


「一応今回は前よりしっかり焼いてきたから大丈夫やと思う!」


「ふーん」


 カナくんはクッキーにかぶりついた。

 そして鼻にしわを寄せて、ものすごい顔になって力いっぱいクッキーを嚙み砕いた。


「かった! めっちゃ固い! 石みたいに固いで、クッキーのくせに!」


「え……ええ? そう? 今度はなにがあかんかったんやろ……」


 カナくんは何じゃこりゃ、と文句を言いながら、ガリガリと音を立ててクッキーを噛んでいる。

 文句を言いながらも食べてくれては、いる。

 ……うん、やっぱり味にこだわりなんてないよね!

 私はほっとして自分のお弁当に取り掛かった。





 私たちがそうやってだらだら過ごしていると、ユウくんが息を切らせてやってきた。


「あークソ、メシの時間が減る!」


 よっぽどお腹が空いていたのか、私たちの近くに座るとすぐにお弁当とパンとおにぎりを取り出してほおばった。

 ……いっぱい持ってるなあ……

 私は感心しながら、自分のお弁当に入っているご飯の最後の一口を口に入れた。

 あー、ふりかけごはん、おいしい。

 私が満足してもぐもぐ口を動かしていると、ほんの数口でお弁当をすべて食べてしまったユウくんが私を見た。


「そういえば彩さん、購買に前好きやって言うとったプリンパンまだ残っとったで」


「え! ほんま?」


「ああ。なんか今日は入荷が遅れたみたいで、時間経って人が少なくなってから菓子パン系搬入したらしい」


「そうなんや」


 プリンパン! 食べたい……!

 これはちょっと買いに行っちゃおうかなあ。お弁当を食べたばっかりだけど……

 プリンパンは、普段は人気ですぐに売り切れてしまう。それがまだあるんだったら、買っておかない手はないよね。


「そっか、じゃあ私、ちょっと購買に行ってくるね」


 私がいそいそと立ち上がると、ユウくんも立ち上がった。


「俺も行く」


「え? でもお昼食べるんちゃうん?」


「もう食い終わった。足りん」


 見ると、確かにユウくんはお弁当もパンもおにぎりもすべて完食していた。

 ええー! 早すぎる……!

 ユウくんが行くんなら、カナくんは? と思って見てみると、カナくんはゴロンと横になっていた。


「俺は寝る。お前ら行くんなら勝手に行ってくれ」


 あ、そう……

 ほんとに二人とも自由だなあ……





 購買に着くと、やっぱりもうお昼休みも半分以上過ぎたからか人はそれほど多くなかった。

 そしてパンコーナーを見てみると、確かにプリンパンがある……!

 やった!

 ユウくんはパンコーナーだけじゃなく、お弁当やおにぎりのコーナーの残り物もじーっと見ている。

 ま、まさかまだそんなしっかりしたもの食べるつもりなの……!?

 その時、はっとした。

 これは……チャンスかも?

 購買には、普段よりは少ないと言ってもやっぱり生徒がたくさんいる。

 もしこの中にユウくんの好きな人がいたら……!

 ユウくんはその人がいないか、きょろきょろして探したりするんじゃないの? その人を見つけたら、目で追ったりするんじゃない?

 私はこっそりユウくんの様子をうかがった。

 誰かを探したりしてないかな……

 私がそーっとユウくんを見ていると、ユウくんはくるっと首を動かして思いっきりこっちを見た。

 私とユウくんの目がばっちり合ってしまう。

 ……うわー! またばれた!

 私はさっとユウくんから視線をそらして、最初から何も見てませんでしたよ? って風を装った。

 うーん、どうもうまくいかない……私の視線ってそんなにはっきりしてるのかな……こっそり見てるつもりなのにいつもばれてしまう。


「おい、彩さん」


 ユウくんが私の方に近付いてきた。

 私はぎくっとしつつも、平静を装った。


「あ、ユウくん、なに? なんかおいしそうなんあった?」


「なんなん。最近めっちゃ俺のこと見てへん?」


 あー! やばい! やっぱりバレバレだった!


「え? 見てへんよ? 気のせいちゃうん?」


「んなわけないやろ。前は全然見てへんかったくせに」


「え……前? って?」


 前……? いや、そりゃそうだけど……こっそりユウくんの好きな人を探ろうと思って、ユウくんを見るようになったのは最近だけど……

 私がきょとんとしていると、ユウくんははっとした表情になった。すぐにぱっと顔をそらしてため息をついた。


「なんもない。そんでプリンパンは?」


「そうそう、ちゃんとあった!」


 そうだった、プリンパン! 私はパンに手を伸ばし、しっかりと手に持った。

 おおー、いつも売り切れて食べられないプリンパンが、私の手に!

 私はうれしくてニヤニヤしてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。