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きみと私の放課後  作者: はる
悠太と彩
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悠太の彼女・5

 放課後、そわそわしながら図書室で待っていると、部活を終えた晴くんがやってきた。

 晴くんの姿を見て、私はすぐに立ち上がった。


「晴くん」


「彩、お待たせ。帰ろうか」


「うん……」


 二人で並んで図書室を出る。

 ……そういえば今日は、ユウくんの彼女は図書室にいなかったな……。ユウくんも来なかったし。図書室で待ち合わせるのはやめたのかな?

 そんなことをぼんやり考えていたら、歩きながら晴くんが言った。


「そういえば、悠太は彼女と別れたらしいで」


「えっ?」


 今私が考えていたことが分かってたみたいなタイミング。私は驚いて晴くんを見た。


「告白されて付き合ったけど、自分には無理やって思ったみたいやな。相手を好きになれんかったみたいやし、他にやらなあかんことがあるからそっちで忙しいって言って別れたらしい」


「他に……やらなあかんこと?」


 晴くんは私を見て、そっと背中に手を添えた。


「そう。尊敬する俺の彼女の彩を守らなあかんから」


「ええ!?」


 私はぎょっとして目を見開いた。いや、ほんっとうに意味が分からないんだけど!?


「まあ、悠太個人が、というより、悠太と彼方の二人で、やな。あの二人は彩の親衛隊らしいで。俺の目の届かんところで彩になにかあった時にすぐに駆け付けるって決めたらしい」


「いや、それ、なんなん? 晴くんを尊敬……とかは分からんこともないけど、なんで私? なんも関係なくない?」


「いや……あいつらの言うことは、合理的と言えば合理的やねんよな」


 晴くんの言葉が信じられなくて、私はパクパクと口を開いた。晴くんは二人のその意味不明の行動を肯定するの!?


「あの二人、目立つやろ。あの二人が彩と関わると、どうしても彩も目立ってまう。そのせいで彩がいわれのないやっかみを受けることもある」


 ぎくっとした。それは……あの、私がユウくんの彼女だって誤解されたことを言ってる……? でもそれ、晴くんは知らないはずだよね……?


「彩があの二人と完全に関わらんようにすれば、そんなこともなくなるかもしれんけど、それは無理があるやろ。同じ学校やし、ハンド部って言う時点で俺を介してつながりがあるし。でも、あの二人が彩と関わるのは、俺のために彩を傷つけるものがないか警戒しとるんやってことを先回りして周りに知らせておけば、ある程度お前らが一緒におっても周囲は納得する。理由があってのことなんやな、と勝手に周りは考えてくれる」


 あ……だから……

 昨日のゴミ拾いの時。二人はめちゃくちゃ大げさに私の指示に従っているように振る舞ってた。みんなに分かるように。それって……そのため?

 ……そうだ、それに、二人がみんなに聞こえるように、私のボディガードになる、なんて言ったら……少なくとも、二人を、ユウくんを好きな子は、私に手を出しにくくなる。私に嫌がらせなんかしたら、二人がその犯人を捜そうとすることなんて明らかだもの。

 あの商店街でのことだって、薄暗い学校までの道を私一人で帰らせないように、ユウくんがボディガードとしてついて来ていたんだってことにすれば……私たちの関係を誤解されるようなこともなくなるだろう。

 私が二股をしているなんて考える人もいなくなる。

 そして肝心なのは、二人のその行動は私のためではなく(ここ重要!)あくまでも晴くんを尊敬する気持ちから来るものだってこと。そうみんなが思うように仕向けていること。

 ……これが、カナくんがユウくんと相談していた計画?


「でも……そんなの……おかしくない? 二人に負担がかかりすぎるし……私、そこまでしてもらうような人間ちゃうし……もちろん晴くんが尊敬される人っていうんは分かってるけど」


「負担は……分からんけど、自分の気持ちを曲げて好きになられへん子と付き合い続ける方が悠太には負担やったんかもな。それやったらきっぱり別れて、彼方と一緒に堂々と彩を守る宣言をした方が楽やったんやろう。それに彼方と悠太、二人でアホなことしながら彩のボディガードする方がおもしろそうやって思ったんちゃうか」


 晴くんのその言葉で、晴くんがすべてを知っていたことが分かった。

 私が嫌がらせを受けていたことも、ユウくんがそれに対処するために好きじゃない子と付き合っていたことも。

 どうして? きっとそんなこと、誰も話したりしないよね……? あ、でもカナくんは分かんないか。晴くんにうまく言いくるめられたら、カナくんなら白状しちゃうかもしれない。

 晴くんは、ぎゅっと私の手を握った。


「それに、彩は価値のある人間や。そこまでしてもらってもおかしくない人間やと俺は思っとるよ。まあ、あの二人がずっとまとわりついとったらちょっと邪魔かもしれんけど、そのうち飽きるやろうからしばらくの間は我慢してやってくれ。……その方が俺も安心やし」


 晴くんの顔を見上げる。

 いつもいつも、私を大切にしてくれる。私を傷つけるすべてのものから守ろうとしてくれる。

 ……ごめんね、嫌がらせを受けてたこと、話さなくて。晴くんに迷惑をかけたくなかった。手のかかる彼女になりたくなかった。でも私のその行動は、晴くんを傷つけちゃったのかな……

 でも……晴くんがいるから、どんなことだって乗り越えられるんだよ。それは確かだから。

 私が晴くんを好きな気持ちは絶対に嘘偽りのない本当のものだから。

 ……だから許してね。





 それからは、今まで以上にカナくんとユウくんの二人と顔を合わせることが増えた。

 ……何たってボディガードですから……

 いや、ボディガードが必要な生活、送ってないですけどね!?

 ちょこっとあった嫌がらせも今はもうないし。だから二人はただ単に、私にお菓子や食べ物をねだるためだけに周りをウロチョロしている感じだった。

 ああ……二人にいろんな食べ物をあげるために、私のお小遣いがどんどん減っていく……!

 二人の様子はいつも通りだった。

 カナくんはいつも騒がしくて、普通の何気ない出来事もトラブルにしちゃう。退屈しないと言えば聞こえはいいけど、めちゃくちゃ大変……!

 ユウくんはやっぱり常に食べ物のことを考えていて、何かと私に食べ物をねだる。そしてふいに驚くようなことを言ったりする。……うん、これもいつも通り。

 でも私はこっそり考えていた。

 ……ユウくんって、もしかして本当に、誰か好きな人がいるんじゃないのかなあ?

 心の中に秘めている、好きでたまらない人がいて……でもその人は他の人を見つめている。他の人の彼女?

 何だろ。誰かの彼女か、もしかして人妻とか!? ありうると言えばありうるかも。だってユウくん、おふくろの味とか好きそうじゃない?

 そういう人がいたから、好きじゃない女の子と付き合い続けるのが苦痛だったのかもしれない。それは、その誰かを好きな自分の気持ちに背く行為だから。

 そしてカナくんも、ユウくんのそんな状況に気付いていたから、状況を打開するために私のボディガードって計画を立てたのかも。理由はもちろんユウくんを助けるため。(ま、あの二人のことだから改まって助ける、なんて絶対言わないだろうけど……)

 何かこれ、正解っぽくない!?

 珍しく私、冴えてる……!

 でももちろん普段の生活の中で二人にそんなこと聞けるはずがないので、私はたまにこっそりユウくんのことを観察していた。

 もしかして誰かのことを目で追ったりしてないかなあ? と思って。

 学校関係者の中にユウくんの好きな人がいるのなら、ユウくんを見ていればそれが誰なのか分かるかも!

 でも、たいていそういう時、こっそり見ているつもりなのに、なぜかばっちりユウくんと目が合ってしまう。私が見てること、ばれてる……!

 どうしてだろう。ユウくんは他人の視線に無頓着というか、どうでもいいって思ってそうだから、絶対気付かれないと思ったのになあ……

 私はすぐに何も見てませんでしたよ? という風に装って、何気なく視線を逸らすけれど、たぶんユウくん、私のことうさん臭く思ってるんだろうな……

 まあ、私がいくらユウくんのことを探ろうとしたって、普段からユウくんの考えてることって全然分からないし。食べ物のこと以外は。

 だから結局、私はユウくんが本当に誰かに片想いしてるかどうかなんてことは永遠に分からないんだろう。


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