悠太の彼女・4
話し合いが終わったのか、二人は顔を見合わせてうん、とうなずき合った後、同時にくるっと首を回して私を見た。
うわ、これ、久しぶりだな……二人がまったく同じタイミングで私を振り返るの。
「よし、そしたら彩さん、行くで」
カナくんが私に声をかける。
「え……行く、って?」
「ゴミ拾いに決まっとるやろ。彩さんはもう袋一杯みたいやから、ゴミのありそうな場所俺らに教えながら帰ってくで。帰り道に俺らが手あたり次第ゴミ拾ってく」
ユウくんがさも当然のように言うので、え、いつの間にそんなことになったの? と私は首をかしげた。
まあ……でも、二人がちゃんとやる気を出してゴミ拾いをしてくれるのなら、全然かまわないけど……
「えーと……そしたら、行こっか? じゃあ来た方と逆の、あっちの方回って河川敷のぼっていこう」
「「うす!!」」
二人が同時に大きく返事をして、私はびっくりして肩をすくめた。
何この二人??
河川敷から歩道に上がって学校まで戻る間、二人は恐ろしいほど動き回っていた。
「えーと、あっちの方も見た方がええかな……」
「よし、任せとけ!」
私が少し視線を動かすと、二人はすぐさまその方向へ走ってゴミを探しに行く。ついにはどこかからボロボロの三輪車まで見つけてきた!
「うーん、これはゴミ袋には入らんか……」
ユウくんは舌打ちしながら三輪車を肩に乗せた。
ええー……
いや、やる気を出してくれるのはすごくありがたいんだけど、この大げさすぎるやりすぎ感はいったい何なの!?
しかも二人が私の指示で四方八方に飛び回っているように見えるもんだから、周りの生徒もざわざわしながら遠巻きに私たちを眺めている。
「あのー、二人とも……うちら、めっちゃ見られてるっぽいから……」
「お、マジで? ええやん。計画通りや」
カナくんがニヤッと笑う。
計画通り? 何それ?
私たちは大騒ぎしながら学校に帰ってきて、門に入り本部の方へ行った。
本部では晴くんが集められたゴミを、どこに持っていくのか指示を出しながら忙しく働いていた。
「それは燃えんゴミやからあっち。いっちゃん校舎に近いところの山に置いてくれ。それは……ガラスやからこっちやな」
「晴くん」
私たちがパンパンになったゴミ袋を持って晴くんのところに行くと、晴くんは少し目を見開いて私たち三人を見た。
……うんまあ、そりゃ見られるよね……
何たって私たち三人は、他の生徒と比べてもとびきり汚れていた。いろんな場所にゴミを取りに入っていったりもぐりこんだりしてたから……ちょっと本気出しすぎたかな……
「部長、ほら! 三輪車! これどこに持っていきます!?」
ユウくんが意気揚々と晴くんに三輪車を見せる。ものすごく自慢げに。……いつの間にかこの二人にとって、大きいゴミを見つけたものが勝ち、みたいになってたから……
「あー! 部長、ほら、俺やってこのでかい食い倒れ人形のバッタもんみたいな人形持ってきた!」
カナくんもかつてどこかの店の店頭に置かれていたっぽい、大きな人形を担いで晴くんの前に持っていった。
どう考えてもやりすぎ……!
「……それは燃えんゴミやな」
「「はい!」」
冷静に晴くんが指示を出し、二人はまるで競うようにそれらを抱えて、燃えないごみを集めている山の方へ走っていった。
「……だいぶ頑張っとったみたいやな」
「あ……うん、成り行きというかなんというか」
「ほら、彩の持っとるゴミも貸して。俺が分別するから」
「え、ええよ、私が持ってくし」
「そんだけ頑張ってんから、それくらい俺にやらせてくれ」
晴くんがそんな風に言ってくれたから、私はありがたくゴミ袋を晴くんに渡した。
ふいに、さっきのユウくんの話を思い出す。
もし晴くんが、私以外の女の子を好きで、その子と付き合っていたら……
そんな苦しみに私は耐えられるだろうか?
今こんな風に晴くんが私を見つめているまなざし。それが他の女の子に向けられていたら?
……そんなの絶対耐えられない。
というか、そんなこと、今この場所で……こんなゴミまみれの状況で考えることじゃないか……
「晴くん、今日私、見た通りボロボロやから、先に帰るね。こんな汚くて臭いまま図書室で晴くんを待ってるん、周りの人にも悪いやろうし……」
「そんなことは全然ないと思うけど。でも彩も早く帰って風呂入ってさっぱりしたいやんな。もちろん先に帰ってもろてええよ」
晴くんは優しく私に笑いかけた。
私も、ドロドロのボロボロで自分が汚いのは分かってるけど……それでも晴くんに向かってにっこり笑った。
翌日、きれいさっぱり、すっきり清潔な私はいつも通り元気に登校した。
教室に入って自分の席に座る。
するとすぐに茜が近付いてきた。
「ちょっと彩! あんた、めっちゃおもろいことになってるん?」
「へ? なに?」
「ほら、あの二人おるやん。二年の双子!」
二年の双子……。それはどう考えてもカナくんとユウくんのことだった。
「あの二人がどうかしたん?」
「二人、ハンド部で瀬戸くんに目をかけてもらってて、そのせいでかなり瀬戸くんに心酔してるねんて? あんまり瀬戸くんのこと尊敬しとるから、瀬戸くんの彼女の彩のことも崇拝してるって噂になっとったで!」
「……ええ? なにそれ? そんなわけないやん……」
あの二人が晴くんに心酔? まあかなり恐れているっぽいのは確かだけど……
それで私を崇拝って! ありえない! あんなに失礼なこと言われたりされまくってるのに、どんな崇拝よ、それ。
「だから瀬戸くんがおらん時にあんたになんかあったらあかんから、あの二人がボディガードみたいになってるんやろ? 『彩さんになんかあったら部長に顔見せできん! 俺らが守る! 俺らはあの人の舎弟や!』とかみんなの前で堂々と宣言したらしいやん」
「な……いやまさか、そんなん……ありえへん……」
私は愕然とした。何なのそれ!?
え、もしかして昨日、カナくんが言ってた計画って……これのこと?
何なの? 計画って。いや、舎弟って!
その時、部活の朝練を終えた晴くんが教室に入ってきた。
私ははっとして晴くんを見つめた。
晴くん……晴くんはこのこと、知ってるの? どういうことなの?
晴くんは私を見て苦笑した。この表情……何か知ってるんだ。
でもすぐに授業が始まる。今は何も聞けない。
私はじりじりと放課後を待つことになった。




