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きみと私の放課後  作者: はる
悠太と彩
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秋のお使い・3

 二人で月見団子の話とかどうでもいいことを話していると、あっという間に学校に着いた。

 あー良かった、無事にたどり着けた……!

 校門を入って生徒玄関の方へ歩いていたら、ユウくんがぴたっと立ち止まった。


「ユウくん?」


 不思議に思って振り返る。

 ……あ、そっか、ユウくんの忘れ物は部室にあるのか。じゃあ生徒玄関へは行かなくていいってことか。

 そう思っていたら、突然私たちの方へ大きな声が聞こえてきた。


「ユウ! お前なにしとんねん!」


 あ、この声。

 カナくんか……


「おー」


 ユウくんが手をジャージのポケットに入れて答える。

 あれ? そういえばユウくん、部活をサボったんだったっけ?

 こ、これは……もしかしてカナくんとユウくんで喧嘩が始まる感じ?

 私がちょっと身構えていると、カナくんがユウくんに近付いてきた。


「なんでここおるねん。お前病院は? もう行ってきたんか?」


 え? 病院?

 私が驚いてユウくんを見ると、ユウくんはその視線に気付いていないのか、カナくんに向かって肩をすくめてみせた。


「まだ。忘れもんしたから戻ってきてん」


「忘れもん?」


「そう。部室に忘れた……と思ったら、ポケットに入っとった。今気付いた」


 ユウくんはジャージのポケットから携帯を取り出した。

 ……えええ!? 何それ!?

 私は二人の方に駆け寄った。


「え、ちょっと待って、どういうこと? 病院って? ユウくんの忘れ物って」


 カナくんがちらっと私を見る。


「なんで彩さんがここにおるん。まあ別になんでもええけど。ユウは練習中に腕ぶつけて怪我したから病院行けって言われて部活早退してん」


「……早退? だってユウくん、サボったって……」


「あー」


 ユウくんは視線をそらしてため息をついた。


「怪我して早退とかクソダサいこといちいち言わんくてもええやん。サボりでも病院でも、練習出てへんのは一緒やし」


「えっと……そしたらその、携帯忘れたってのは……」


 だって病院に行かないといけなかったんでしょ? それなのに私に付き添って学校に戻ってきてちゃ、病院閉まっちゃうじゃない!


「ま、勘違いやったってことやな。病院行くにしても待ち時間にゲームできんかったら暇でしゃあないやん。まさかポケットに入れっぱなしやったとは思わんかったなー」


「お前どうすんねん。もう病院の受付時間過ぎとるやろ」


 カナくんがユウくんの足に蹴りを入れた。ユウくんもやり返してカナくんを蹴り上げる。


「うっさいな。明日朝一で行きゃええやろ。どうせ練習出られへんのやったらいつ病院行ったって一緒やんけ」


「まあ、そりゃそうか……?」


「で、カナ。お前はなんでここにおんねん」


「あ、俺は便所! さっさと行って練習戻らな!」


 カナくんはそう言って、話の途中っぽかったのにかまわずにすぐ走り去っていってしまった。





 後に残された私たちは、何となく気まずい雰囲気のままその場に突っ立っていた。

 ……いや、気まずく思ってたのは私だけかも?

 私に付き合わせたせいで、ユウくんは今日病院に行けなくなっちゃったから……

 もしかしたら、私がイノシシを怖がったりしなかったら、ユウくんはあっさり帰って病院に行けていたのかもしれないよね。

 携帯を忘れたって言ったのは、私に気を遣わせないための嘘だったのかもしれない。

 だってポケットに入ってたって……。そんなの、携帯がないと思ったらまず一番に探す場所じゃない? 絶対すぐ気付きそう。それなのに気付かないふりをして、学校に忘れたから取りに行かないと、と言って、学校に戻らないといけない私と一緒に歩いてくれたっていうのは……

 もしかしたらそれはユウくんが私のためについた嘘だったのかもしれない。


「えーと……ユウくん……」


 私が言いかけたのを遮るように、ユウくんが大きな声を出した。


「よーし、そしたら携帯も見つかったことやし俺は帰るわ。これで思う存分ゲームできるなー」


「……帰る?」


「そらもちろん。彩さんは部長を待つんやろ? それとも部長が部活終わるまで俺に相手してほしいんか?」


「え?」


 私は目を見開いた。

 何その発言! そりゃ、付き合わせてしまったのは申し訳なかったけど……でも事情が分かってたら、絶対学校には戻らずに病院に行ってって言うよ! そんなの当然でしょ? 怪我してるんだから、ちゃんと見てもらうことを優先しないと!

 私は頬を膨らませた。


「相手していらんし! ユウくんはさっさと帰ってゲームなんかせんと安静にしてたらどうなん!? 怪我人なんやろ!?」


 私の剣幕を見てユウくんは肩をすくめた。


「おーこわ。帰る帰る。帰り道にイノシシと遭遇したら、とっ捕まえて牡丹鍋にせんとな」


「なに言ってんの……」


 本当にいつでも食べ物のことばっかりだなあ、この子は。でも腕を怪我してて、イノシシを捕まえることなんてできるの? かえって危ないんじゃ……

 私がそんなことを考えている間に、ユウくんはさっさと校門の方へ歩いていってしまった。

 ……本当に変な子!

 私はあきれてため息をついた。





 ユウくんが私のために嘘をついて病院へ行かずに学校まで送ってくれたのかもしれない、ということは、とりあえず考えないことにした。

 ユウくんに聞いても本当のことは言わないだろうし、どっちにしろ私は顔を合わせるといつでもユウくんに食べ物をねだられるから。

 そう、ユウくんはとにかくどんな時でも食べ物のことばっかり! 今回も私からお礼の食べ物をもらいたいから送ってくれたのかもしれないし、もしかしたら本当にイノシシを食べられるって思った可能性もある。私のためじゃなくて、自分の食欲のために動いたのかもしれないからね……

 たとえそうだとしても、私のせいでユウくんは病院に行けなかったのかも、と私が考えてしまうことは、きっとユウくんも分かってるだろうし……

 だからどんな理由があったとしても、結局私はユウくんにお詫び、もしくはお礼の食べ物をあげることになる。

 だからそれでいいかなあ、と思った。

 晴くんには……一応あったことは言うけれど、あまり心配をかけないようにさらっとだけ報告しておこう。

 イノシシの話も、ユウくんが病院に行けなかった(行かなかった?)話も、あまり大ごとにしない方がいいよね。

 それにしても、本当にユウくんにはしょっちゅう振り回されるな!

 (向こうにしたら私のせいで余計なことさせられてると思ってるかもしれないけど)

 まるで手のかかる弟みたいだ。

 弟って、こういう感じなのかなあ?


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