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きみと私の放課後  作者: はる
双子と彩
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はじけるプール清掃・2

 私はため息をつきながら体操服に着替えていた。

 ああ、仕方がないこととはいえ……

 一緒に着替えていた茜も憂鬱そうだ。


「あーあ、今日彼氏とデート行くつもりやったのに、プール清掃とかありえる!? 着替えたって絶対ドロッドロになるやん! 変なにおいもつきそうやし……たまらんわー」


「確かに。でも補習組は強制参加やからしゃあないやんね……」


 そう、今日は放課後プール清掃が行われる。

 基本的に運動部の1年生が駆り出されるんだけど、人数が足りなかったのか、なぜか私たち補習組も人員として参加させられることになったのだ。

 うう、私も絶対汚れちゃうし臭くなっちゃうよね……。今日は晴くんが部活終わるのを待つの、やめようかなあ。晴くんは絶対顔には出さないだろうけど、私のこと臭いって思われたくないし……

 とほほ、と思いながら着替えて屋外プールへ向かう。

 途中で男子の補習組とも合流して、みんなでどよーん、とした雰囲気で歩いていった。

 プールにはもう運動部の子たちが集まって来ていた。

 すでにプールの水は抜かれて、事前にまいていたのか薬剤の匂いもする。消毒薬? かな?

 みんなそれぞれスポンジやデッキブラシを手に持っている。

 私たちも準備をしよう、と用具室の方へ歩いていった。

 用具室に近付くと、何だかすごくにぎやかな声が聞こえてきた。


「えらいテンション高いやつがおるんやなあ」


 同じ補習組の佐野くんが言う。

 確かに。……うーん、そしてこのにぎやかな声……聞き覚えがあるような……

 私たちが近付いたところで、用具室のドアがバン、と開いた。


「おいユウ、その新品のブラシ俺に寄こせ!」


「アホ言うな、これは俺が先に手に取ったから俺のもんじゃ。お前はその使い古しのボロブラシ使え」


「はー? こんなんで気合い入れてやれっかよ!」


 カナくんとユウくんが大声で毒づきながら出てきて、私はびっくりした。

 え? どうして二人がここに?

 プール清掃は基本的に1年がやるんじゃ……。二人は2年生だよね?

 私が驚いていると、二人が私に気付いた。


「あ? 彩さんやんけ」


「ほんまや。なんでおるん」


 それはこっちのセリフなんだけど……。でも確かに、3年の私がここにいるのも変だよね。


「えーと、私も手伝いでやることになって……。二人は? 二人も手伝い?」


 二人はくるっと首を回してお互いを見た。そして同時にけっ、と顔をゆがめた。


「全部ユウのせいじゃ。お前がとっととボール返さんから」


「それはカナ、お前やろ! だいたいどっちがようけダンク決められるか競争するぞ、言うたんお前やんけ」


「せやからー! ダンク勝負はおとなしくバスケのボールでやっときゃよかってん! めんどくさがってハンドのボールでやるから部長にばれて! そんでこんなことに!」


 ……あー、そういうこと……

 また二人は問題を起こして、それで罰としてこのプール清掃に参加させられてるってこと?

 私と違って落ちこぼれじゃないはずなのに、結局やってることは一緒になってるなんて、おかしいの。

 私はぷっと笑ってしまった。

 二人は私を見てちっと舌打ちした。


「ここで会ったが百年目じゃ。なんか食いもんくれ」


「えっ?」


 そんな……今はさすがに……

 制服じゃないし。いつも制服のポケットにはお菓子を入れてるけど、今は体操服だ。そして二人に会うなんてまるで考えていなかった。

 どうしようかなあ、と思いながら、一応体操服のポケットに手を突っ込んでみたら、かさ、と何かの感触。

 あれ? 何か入れてたっけ?

 手に触れたものを取り出すと、それはチョコが入った個包装の袋だった。でも一つだけ。

 しかもこれ、以前ポケットに入れたまま忘れて放置していたみたいで……袋の中でチョコがぐちゃぐちゃになってるっぽい。

 さらに手に取ったら、今日のよく晴れた陽射しの熱さでどんどん溶けていっているのが分かる。


「あー、ごめん、今はこんなんしかなくて……あげられへんわ」


「なんなん、それ」


「これ、いつのか分からんチョコ。もう袋の中でぐちゃぐちゃっぽいし、溶けてるし、食べられへんわ。捨てるしかない」


「別にええよ、それで」


 そう言ってユウくんが私の手からチョコの袋を取った。

 え? これ、食べるの?

 ユウくんは袋のはじを切って、反対側から指で袋を押してあふれ出てきたチョコをかじり取るように食べた。

 ……すごい、ここまでして食べたいなんて……


「あ、ユウ! ずりーぞ!」


「なに言うとんねん、カナ、お前は新品がええんやろ? こんな溶けたチョコなんかいらんやろ」


 そう言ってユウくんは何度か袋をかじってチョコをこそげ取るように食べていた。


「ま、チョコも腹に入れりゃー全部溶けるねんから一緒やな」


 うんうん、とうなずくユウくんを、私はある意味感心しながら見つめた。

 すごいなあ。何が何でもお菓子を食べたいんだな……


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