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きみと私の放課後  作者: はる
双子と彩
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双子・誘拐事件・3

 晴くんはそっと私の体を支えた。


「彩、立てるか?」


「うん、大丈夫」


 晴くんの腕に体重をかけながら立ち上がる。晴くんは私のバッグを持って、自分の肩にかけた。

 そんな私たちを、双子が体育倉庫の外からこわごわ覗き込んでいた。


「早く帰ろう。彩はとにかくはよ安全な場所に行って、ゆっくり休まなあかん」


 晴くんは横から抱きしめるように私の体を支えていた。二人で体育倉庫を出て、門の方へ向かう。

 晴くんは少し立ち止まり、ちらり、と後ろに所在なさげに立っている双子を見た。


「……お前らの処分については明日話し合おう」


 その言葉に、双子の背筋がビシッと伸びる。


「ぶ、部長、なんすか、処分て!」


「俺らゴミっすか!? ゴミ処理みたいに俺ら処分されてまうんすか!?」


 騒ぎ出した二人を、晴くんは冷たい目で見ていた。


「それともお前らを今すぐ警察に突き出した方がええか? 彩を誘拐して。未成年略取、言うんやっけ。俺は全然それでかまわんけど」


 晴くんの言葉に私もぎょっとした。


「は、晴くん、それ本気で言うてる?」


「部長そんな! 俺ら、前科持ちになってまうんすか!?」


「うあー! デビューする前に人生終わる……!」


 絶望してオーバーアクションで地面に両手をついてがっくりうなだれる双子を見て、私は慌てた。


「待って晴くん、そんな……誘拐言うても、私あの二人にひどいことされてへんで? 体育倉庫に連れていかれた後は、二人とも私に全然触ってへんし。縛られたり、目隠しされたり口ふさがれたりとか、なんもなかったし……」


 まあ、連れていかれる時は口を手でふさがれて、肩をつかまれて身動き取れなくされていたと言えばそうなんだけど。でもそれを言ってしまったら晴くんがどんな反応を見せるのか、想像するだけで怖すぎる。

 晴くんは私を見つめて辛そうな表情になった。


「……それでも、あんな場所に……衛生的でもない、狭くて暗い場所に一人きりで閉じ込められとったんやろう。お前がどれほど不安やったか。俺がお前を見つけた時のお前の不安そうな顔を思い出したら、俺の胸はつぶれてまいそうや。彩をそんな目に遭わせたやつは絶対に許せへん。それを考えたら、あいつらを同じ目に合わせるくらいじゃ足りんやろう」


「え、えっと、でもそんな……晴くんは、あの二人にひどいことしたりせんやろ? 私がひどい目に遭って辛いって思ってくれる晴くんなら、他の人に同じことしたりせんやろ?」


「あいつらは殺したって死なん。彩と同じやない」


 ええー!

 待って待って、晴くん、本気!?

 私のことを想ってくれるのはすごくうれしいけど……そのせいで逆に晴くんが犯罪を犯しちゃ困る!

 晴くんの言葉を聞いて、双子も目を見開いてあわあわと慌てている。


「待って、晴くん」


 私は必死で晴くんの腕を引いた。


「あのね、あの……私、晴くんにそんな風に怒ってほしくない。ええと、そりゃ、私、一人であんなとこにおって、ほんの少し不安やったけど……。でも、晴くんに連絡する直前くらいまであの二人も倉庫の中におってん。だから、私が一人やった時間なんてほんの少しで。それで、その少しの時間一人で不安やったなって気持ちも、すぐに晴くんが私のところに来てくれたから、うれしいって気持ちで消えてったよ。私が怒ってへんのに、晴くんがずっと怒ってるんは嫌やの。もう嫌なことは忘れて、また二人で笑いたいねん。私が不安になってすぐ、晴くんが助けに来てくれて、めっちゃうれしいって、その気持ちだけ残したいねん……あかん?」


 私が晴くんの目を見て一生懸命話していると、晴くんの目から怒りが少しずつ消えていった。

 晴くんはゆっくりと私の頬をなでた。


「……でも彩、そんな目に遭って、あの二人を許してええんか? そんなんしたらあいつらはまた調子に乗って変なことしでかすぞ」


「いや、またこんな目に遭うんはさすがに嫌やけど……でも、まず二人がなんでこんなことしたんか知りたいかな。なんか二人、変なこといろいろ言っててんけど、理由がよく分からんくて……」


 私たちは一緒に双子に視線を向けた。

 二人は体を硬直させたまま目を見開いて、口を真一文字に結び、そしてお互いに視線を合わせた。

 晴くんが落ち着いた声で二人に話しかける。


「……俺が聞いたんは、お前らがなんか良からぬこと考えてるみたいやで、ってタレコミやった。今度はなにやらかすつもりやと思っとったけど。今日、帰りに図書室に彩を迎えに行ったら彩がおらんかった。先に帰ったかと思ったら、先生からお前らが彩を連れて図書室を出て行ったって聞いて。それで、良からぬことのターゲットは彩やったんかと思って、校内を必死で探しとったんや。……で、お前らの目的はなんやねん。彩を拉致して危険な目に合わせた目的は?」


 双子は同時に目をぎゅっと閉じて歯を食いしばった。


「くっ……!」


「そこまでばれとったらもう言い逃れできん……!」


 うん? よく分からなかった。『そこまでばれとったら』って、ばれてるのは何か良からぬことを考えてるってことだけじゃないの? ほかにばれてることってある?

 二人は同時にかっと目を見開いた。


「そもそも部長が悪いんすよ!」


「そうやそうや! 部長が俺らにハンドボールさせてくれへんから!」


「だから俺ら、どうしたら部長が俺らを許す気になるかと思って!」


「そんで部長に恩を売ろうと思っただけなんです! 何者かに拉致された彩さんを助けた俺らに感謝して、こんな頼もしいチームメート、一緒にハンドせな気が済まん! って思わせようと!」


 畳みかけるように二人は話していたけれど、私は話についていけなくて、え? え? となっていた。

 晴くんを見ると、晴くんは無表情でじっと二人を見つめていた。あ、晴くんのこの表情……前も見た。部活をしている時の晴くんの顔だ。


「……つまりお前らは、練習中にふざけとったせいで、俺がお前らを練習に参加することを禁止したことが不満で、それで彩を誘拐したってことか。誰かが彩を誘拐して、その彩を助けたのがお前らやと俺に思わせることで、俺が感謝して、お前らを練習に戻すと思ったんか」


「その通りっす!」


「簡潔にまとめてもろてありがとうございます!」


 ……そういうこと?

 私はあきれてしまった。この二人……そんなこと考えて、あのへんてこな誘拐劇を考えたの? めちゃくちゃばればれな誘拐犯を演じて、私を助ける状況を演出しようとしても結局晴くんに先を越されて。


「なるほど、分かった」


 晴くんが静かに言う。


「分かってくれましたか!」


「さすが俺らの部長!」


「お前らに情状酌量の余地がないことがはっきりした。さっさとお縄につけ」


「「部長ー!!!!」」


 双子の絶望の叫びがあたりにこだました。


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