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きみと私の放課後  作者: はる
晴太郎と彩
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ハンドボール部の見学・1

 私はめちゃくちゃ驚いていた。

 放課後の学校の体育館。ハンドボール部の練習。

 そこには、ギャラリーがたくさんいた。

 え、どういうこと? これ、普通の学校の部活……だよね? それなのに、どうしてこんなにギャラリーがいるの?

 二階の観覧席や通路に何人もの女の子が陣取って、ハンド部の練習を見ながら時に応援の声を上げている。

 私はあっけにとられながら観覧席の隅っこに座った。

 晴くんの部活しているところを見てみたい、見学に行きたい、と言って、補習がなかった今日、来てみたけれど……

 うちの部活なんて地味で見ていても面白くない、と言っていた晴くんだけど、いや、少なくともこの周りの環境、全然地味じゃないんですけど!?

 びっくりしたことと、ハンド部の部員の多さに、私は最初晴くんが体育館の中のどこにいるのかよく分からなかった。

 晴くんはハンド部の部長だから……みんなの先頭に立っているか、もしくは全体を見渡すような場所にいるはず。そう思って体育館の中の部員を見渡す。

 そうしたら、分かった。

 監督? コーチ? よく分からないけれど、大人の男の人と一緒にはじっこの方で何か話している。

 晴くんだ!

 ジャージ姿ですっと立っている。立っているだけでかっこよく見えるのは、これはもう、彼氏だから……だよね。

 他の部員はみんなハンドのゴールを設置したり、ボールを準備したり、柔軟体操をしたりして、にぎやかな雰囲気。

 やがて晴くんが手をパンパン、と叩いて、みんなを自分に注目させた。


「はい、始めるで」


 そんなに大きな声じゃないのに、体育館に晴くんの声が響き渡る。あー、めちゃくちゃかっこいい……!

 その声に部員が晴くんの前に集まり整列した。そして監督、コーチ、コートに向かってお願いします! と大きな声で挨拶する。

 おお、すごい。運動部って感じ!

 すぐに部員はウォーミングアップなのか、体育館の中をぐるぐる走り出した。晴くんも他の部員と一緒に走り出す。

 走ってる姿もかっこいい……!

 すっと背筋が伸び、上半身が揺らがなくて、体幹がしっかりしていることが分かる。

 他の人なんて目に入らなかった。晴くんだけ輝いて見える。

 部活をしている晴くん、ものすごく素敵じゃない! もっと早く見学に来ればよかった!


 その後は、部員が二人一組になってパスをしあったり、シュート練習なんかに入って、ひたすら基本動作の練習を行っていた。

 確かにハンドボールを知らない人が見たら、淡々としていて地味な練習なのかもしれない。私もルールとか全然分からないし…

 でも私は晴くんが動いている姿を見るだけですごくどきどきして目が離せなかった。

 シュート練習の時、時折部員がものすごく高くジャンプしてゴールにボールをたたきこみ、体育館に歓声が上がった。黄色い声で、シュートをした部員の名前を呼んでいるのが聞こえる。

 ……どうやらあの人がハンド部で人気のある人なのかな?

 その人が何かするたびに女の子たちが盛り上がっているのが分かった。

 背が高くて、髪が金髪の人。……と、同じような姿かっこうで、赤い髪の人。めちゃくちゃ目立つな……

 その二人があまりに目立っているので、晴くんだってものすごくかっこよくシュートを決めたりしているのに、全然注目されていないのが私には不満だった。……いや、でもあんまり晴くんが注目されちゃっても嫌かな……

 晴くんはすごく練習に集中しているように見えた。こんなに激しく動いている晴くんを見るのは初めてだったので、私は興奮しちゃってたかも。晴くんは自分の練習をしながら、部員もしっかり見ていて、注意したりアドバイスしたりしてる? 何を言っているのかはさすがに二階までは聞こえないけれど、部長として部員を統括しているように見えた。……私の存在なんて、気付かれるわけないか。

 いや、全然かまわないんだけどね。晴くんの練習の邪魔しちゃう方が嫌だし。

 練習は、筋トレやらミニゲームやら、いろんなことをやっていた。盛りだくさんだ。

 部活で毎日こんなに体を動かしてるの!? ってびっくりするくらい。こんなの、もし私がやったら一日で体が死んじゃいそうだ。

 見学している人たちも、時間が遅くなるにつれ、少しずつ減っていった。さすがにこんなに何時間も練習を見ているだけって大変だもんね。私も観覧席にずっと座っていたらお尻が痛くなってきた。

 やがて練習が終わり、みんなが後片付けに入った。

 終わったんなら、私はまた図書室に行って、後片付けや着替えを終えた晴くんが来るのを待ってようかな? と思っていたら……そうしたら、体育館のフロアに女子生徒が入ってきた。

 え? と思ったけれど、練習が終わったのなら、もうフロアに部員以外の人間が入ってもいいってことなのかな……

 女子生徒は、隅の方にいた晴くんに向かってまっすぐ歩いていった。

 ……何? 晴くんに、何かあるの?

 女の子は晴くんに何か渡している。他にもばらばらと女の子たちが体育館に入ってきて、みんな晴くんに何か……紙袋とか? を渡そうとしている。

 晴くんはそんな女の子たちと話して、ある紙袋は返して、他の紙袋は受け取ったりしていた。

 あれ、何なんだろう。

 プレゼント?

 私がぐるぐる考えながらその光景を見ていたら、私の近くにいて、帰ろうとしていた女子生徒たちが話す声が聞こえた。


「あー、うちらも差し入れ持ってきたらよかったねー」


「ほんまやね。悠太は食いしん坊みたいやから、差し入れしたら喜んでくれそう!」


「私は彼方かなー。でも彼方って笑顔で差し入れもらって捨てとるって噂もあるからなー」


「え! ひど!」


「見えるところで捨てられてへんだけマシなんかな?」


 差し入れ……

 そんなのがあるんだ。

 え、あんなの、毎日あるの? 毎日晴くんはああいうものを受け取ってるの? 女の子からの差し入れ……プレゼント。

 ズキズキ胸が痛くなった。

 何だろう……これ。どうして胸が痛くなるんだろう。

 私が知らないところで、晴くんが毎日女の子から何かもらっていた、それがショックだったのかな……

 女の子から何かもらって、ありがとうって言ったのと同じ笑顔で、私に笑いかけてたの?

 いやいや待って、私、被害妄想すぎる。

 でも、でも、でも。

 今見てしまった光景があまりにも衝撃的で、私は冷静に考えられなくなってしまった。


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