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きみと私の放課後  作者: はる
悠太と彩
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卒業の日・2

 生徒玄関の外は、卒業生と、それを見送る下級生でにぎわっていた。

 私は晴くんと一緒に帰ることになってるんだけど、晴くんは今ハンド部の同級生たちと写真を撮ったり話したりしているので、私は近くにいる友達やクラスメートとおしゃべりをしながら待っていた。

 すると、少し離れた場所から、彩さん! と私を呼ぶ声がする。

 声の方を見ると、カナくんとユウくんが手を上げて私の方に歩いてきていた。

 あ、二人一緒だ。

 そう思って安心する。

 あの屋上で話をしてからユウくんとは顔を合わしていなかったから……

 だからユウくんがカナくんに進路のことを話したいきさつを私は知らない。

 ただ、噂で漏れ聞いたところによると、ユウくんが高校を卒業したらハンドボールを辞める、と知ったカナくんは激怒して……二人は激しく喧嘩したらしい。

 でも、その後ちゃんと二人は和解したんだよね? だから今、二人一緒に歩いてきているんだよね?

 ユウくんが卒業してやりたいことについては、これも噂で聞いただけだけれど、彼は食べ物関係の仕事に就きたいんだって。

 それを聞いて何だか納得してしまった。

 最初、ユウくんがハンドボールを辞めるって聞いた時は、すごくもったいないんじゃ……ハンド以上にユウくんが輝ける場所ってあるの? って思ったものだけど。

 でも食べ物の仕事、と聞くと、驚くほど彼に合っていると思えた。

 確かに彼、ハンド以上に、四六時中食べ物のこと考えてたもんね。

 料理人になりたいのか、食べ物屋さんを経営したいのか、それとも商品開発の仕事をしたいのか……細かいところは分からないけれど、ユウくんならきっとどれでもやっていけるんだろうな、と自然と思った。

 そのユウくんが、カナくんと一緒にいつもと変わらない表情で歩いている。

 私も笑顔で二人に手を振った。

 二人が私のところにたどり着く直前、カナくんが他の生徒に声をかけられ、足を止めた。

 ユウくんはカナくんをちょっと見たけれど、そのまま私の方に歩いてきた。

 私のすぐそばまで来て、ユウくんは足を止める。


「彩さん、卒業おめでとう」


 いつもみたいに茶化したり、つまらなさそうにしてるんじゃなくて……ごく普通の表情でユウくんがそんなこと言うものだから、あ、本当にこれで最後なんだ、という実感が胸の奥からじわじわと湧き上がってくる。二人の姿を見るのも、こんな風に学校で話すのも、全部最後。

 ああもう、駄目だってば。

 これ、今日何回目だろう? また私の目にぶわっと涙があふれてしまった。


「……はは、なに泣いてるん」


 ユウくんは少し困ったような、あきれたような、おもしろそうな表情をした。

 そして、しゃーないなあ、と言って、私の腕を引き、全身を抱きしめた。

 ……

 え!?

 は、え? 何!? どういうこと!?

 いや、そりゃ、友達とか……クラスメートの女の子と、もうバイバイやねー! って言いながらハグしたりはしてたけど!

 でも年下とはいえ、男の子とハグ!? これは有りなの!?

 晴くんよりも背の高いユウくんに抱きしめられると、私の顔は完全にユウくんの胸に隠れてしまう。

 硬いユウくんの胸からどくどくと鼓動を感じる。

 私はあまりにびっくりして言葉が出なかったんだけど、ユウくんは私を抱きしめたまま、背中をぽんぽん、と叩いている。

 ……え、これもしかして、私が泣いちゃったから、なだめてる感じ……?

 いやいや、それにしたって! こんな、周りにめちゃくちゃ人がいるところでこんなことする!?

 私が黙ったままパニックになっていると、普段と変わらない調子でユウくんが話しかけてきた。


「なあ、彩さん」


 だーかーら、どうしてこの状況でそんなに普通にしてられるの……!


「好きやで」


 さっきと同じ口調でユウくんが言う。

 え。

 ……えええええ?

 ユ、ユウくんまで……!

 ねえ、ほんとにこれ、何なの!? やっぱり今日、みんなして私にドッキリを仕掛けてる!? 同学年の人だけじゃなくて、ユウくんまでこんなこと言ってくるの、本当にわけが分からないんだけど……!

 そしてほんとに、ほんとに、ここ、普通に校舎出たところで。周りに人がいっぱいいて! みんなに見られていて! そこでそういうことしたり言ったりしないでほしい……!

 私が大混乱して頭がくらくらしていると、突然私の背後から誰かがどん! とぶつかってきた。

 こ、今度は何!?


「俺も混ぜろ! 俺も俺も! 俺も彩さん好き!」


 え、この声、カナくん?

 カナくんまでそんなの言い出すの!?

 カナくんは背後から私を……というか、私と一緒に? まとめて? ユウくんを抱きしめていた。


「おい、カナ」


「うるさい! 俺も混ぜろ言うたら混ぜろ!」


 ユウくんが咎めるように何か言おうとしたのをカナくんは遮った。


「女なんかギャーギャーやかましいしすぐ泣くしめんどくせー! って思っとったけど、彩さんやったら俺の姉ちゃんにしてやってもええで! それくらいは好きやな!」


 勢いよくカナくんがそんな風に言って、そういうことかー! と回らない頭で納得する。

 なるほど、つまりユウくんもそれが言いたかったんだな!?

 カナくんはいつも軽々しく口を滑らして余計なこと言うし、反対にユウくんは言葉が足りなくて誤解するようなことばっかり言うし……

 ほんと、この双子には振り回されっぱなしだったな……

 ……そして、ちょっと待って。

 今私、前からはユウくん、後ろからはカナくんに抱きしめられていて。

 前後、巨大な二人に挟まれてサンドイッチにされてて……あの、めっちゃ苦しいんですが! 二人につぶされそうなんですが!?

 ギブギブ! と二人に訴えたいのに、二人に挟まれて声を上げることもできず、私はひえー! このまま窒息する……! と、別の意味でパニックになった。


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