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きみと私の放課後  作者: はる
晴太郎と彩
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電話の声

 瀬戸くんを好きになったのかもしれない、と思ったら、何だかそわそわして落ち着かなくて、じっとしていられなくなってしまった。

 いやいや、決めつけるのはまだ早い。

 私はすぐ影響されちゃうから……瀬戸くんが私のことを好きだって言ってくれたから、それに流されてるだけなのかもしれない。

 えー、でも……どうなんだろう?

 瀬戸くんに告白された時のことを思いだす。

 びっくりするくらい熱烈だったな。

 瀬戸くんがあんな風になるんだって驚いて……そして、ものすごくはっきりと私を好きだって言うのに衝撃を受けた。

 恥ずかしがったりしないんだ。

 瀬戸くんは、無理に自分を好きになってほしいとは思っていないって言ってた。でも、とにかく私に笑っていてほしいって……

 ああ、そうだよ。

 あんな風にまっすぐに想いを伝えてくれる人が……間違ったりなんてしないよね。

 そんな風に思うなんて、瀬戸くんに失礼だ。

 瀬戸くんはちゃんと、私のことが好きなんだ。


 えええー! どうしよう!

 今になってめちゃくちゃ胸が苦しくなってきた!

 告白された時点では、あんまり実感がわいてなかったのかな……すごく私、ぼんやりしていた気がする。

 でも今、瀬戸くんが好きだなって思ったら……あの告白のことを思いだすと、胸が痛くなる。

 瀬戸くんはあんなに一生懸命私に想いを伝えてくれたのに……

 それなのに私は、ただその状況に驚いていて、瀬戸くんが必死で訴えてくれていた切実さを分かっていなかったんだな……


 部屋のベッドの上でひたすら瀬戸くんのことを考えてごろごろ転がっていたら、携帯が鳴り、メッセージが表示された。

 瀬戸くんだ。

 部活が終わって、今帰り道らしい。

 私はとっさに瀬戸くんに電話をかけた。瀬戸くんはワンコールですぐに出た。


「……瀬戸くん?」


 緊張して声がかすれてしまう。私は瀬戸くんに聞こえないように少し咳払いした。

 外の……風の音かな? ざわめきと一緒に瀬戸くんの声が耳に飛び込んでくる。


「電話かかってきてびっくりした」


「あ、うん、ごめん。部活おつかれさまって思って……」


「なんも謝る必要ないよ。かけてきてくれてありがとう」


 うわあ、何これ。心臓がぎゅうってつかまれたみたい。気持ちが高ぶって、体がふわふわ浮いているみたい。携帯を耳に当てていると、瀬戸くんが耳元でしゃべってるみたいで……いつも以上に緊張する。

 瀬戸くんのメッセージを見て反射的に電話をしてしまったけれど、何を話せばいいのか考えていたわけじゃないので、すぐに次の言葉は出てこなかった。


「彩?」


 はっとする。

 ……そうだ、二人の時は……そう呼びあうって決めてたんだった。

 あまり二人だけでいることなんてないから、改めてそう名前で呼ばれると……その言葉の響きにまた胸がうずうずしてきた。


「あ……うん、その……晴くん?」


 は、恥ずかしい! 思った以上に恥ずかしい! 瀬戸くんのことを晴くんって呼ぶとか、慣れなさすぎてどうしたらいいか分からない。


「どうかした?」


「ううん、えーと……こ、声が。聞きたいなって……思って……その」


 ひえー、何そのカップルみたいな会話! いや、カップルだけど。恥ずかしくてどきどきしすぎて、私の心臓の音が電話越しに聞こえてしまったらどうしよう、と心配になるレベルだ。

 瀬戸くんが小さく笑ったのが分かった。


「そうなん? 俺も、彩の声が聞けてうれしいで。普段なかなか二人でゆっくり話す機会ないし」


 それはそうだ。試験期間が終われば、瀬戸くんは部活で忙しい。朝練があるし、夕練も瀬戸くんはいつも最後まで残ってるみたいだし。私たちが二人で過ごせる時間なんて、皆無に等しかった。


「そうやね……」


「それやからこそ今、彩の声が聞けてうれしいなって思っとる」


 ……熱烈だな! やっぱり瀬戸くん、熱烈だ。普段誰に対しても冷静に塩対応だと思ってたけど、彼女に対してはこういう人だったのか……


「うん。私もうれしいよ。ちょびっとだけ寂しいって思うけど」


「え?」


「あ、いや、なんでもないです」


 調子に乗って甘えるようなことを言ってしまった! え? って瀬戸くんに返されたことによって我に返ったけど。

 いけないいけない。私はすぐに調子に乗っちゃうなあ。寂しいって言えるほど瀬戸くんへの想いを募らせているわけじゃないのに。好きだって……気付いたのだって……つい今さっきなのに。


「彩、すまん。駅に着いたからもう切らんと」


「うん、分かった。気を付けて帰ってね」


「ありがとう。また明日な」


「うん」


 電話を切ったら、すぐに瀬戸くんからメッセージが入ってきた。

 明日のお昼を、一緒に食べようって。

 うわ、私が寂しいとか口を滑らせたからだ! すぐにそれに対処しようとしてるんだ!

 さ、さすがだな……瀬戸くん。ぬかりがなさすぎる。

 もしかして、めちゃくちゃ私のこと、考えてくれてる?

 そんなことされたら……私だって瀬戸くんのこと考えちゃう。ずっと考えちゃう。

 瀬戸くんが私のためにしてくれること。私も同じように、瀬戸くんのためにできることって……何かないかな?


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