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僕が言うのも何ですが、勇者が魔王の子を育てて大丈夫ですか?  作者: 日昇
第1章 幼少期

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9 二属性?三属性?魔法を使えるのですが、大丈夫ですか?

「お父様ー!」

カインは叫び声をあげながら、目を覚ました。

「よかった、カイン様!」

侍女のマリーが涙を流しながら、カインに抱きついてきた。

「ここは・・・家?」

「もう、カイン。どれだけ心配したと思っているの」

「カインちゃんが死んだらどうしようかと・・・」

マリーが離れると今度は母のミディアンと姉のレアが抱きしめてきた。

二人から抱きしめられ、いつもは無表情のカインもどこか安心したような顔をしていた。

カインはハッと父アーサーのことを思い出した。

「お母様・・・お父様が・・・お父様が・・・」

カインはミディアンにしがみつき、顔を見上げて、必死に何かを伝えようとしていた。

初めて見るカインの不安な表情に、ミディアンはうれしく感じていた。

「カイン、父様は大丈夫よ」

「でも・・・僕が・・・お父様の・・・腕を・・・」

「カインが父様の腕を治してくれたのでしょう?」

「さすが、私のカインちゃん」

「???」

カインは二人が何のことを言っているのか全く理解できなかった。

カインの記憶はアーサーの腕を必死に無理やりつなげようとしているところで終わっていた。

「カイン、今日はゆっくり休みなさい」

カインは父アーサーに会わずにはいられなかった。

「お母様、お父様に会いたいです」

「でも、まずは身体を休めないと。怪我はしていないけど、体力はかなり消耗しているはずよ」

「お願いです。会わせてください」

「・・・わかったわ。おいで」

今はまともに歩けないカインをミディアンが抱きかかえ、レア、マリーと共にアーサーの寝室へと向かった。




「さすが、勇者アーサー。死んでも死なないな」

「ひどいな。これでも今回はかなりギリギリだったぞ」

「まぁ、アーサーもカインも無事でよかったよ」

「一時はどうなるかと思ったわよ」

アーサーの部屋では勇者パーティーのメンバーが騒いでいた。

アーサーは何もなかったかのようにベッドに座ったまま、楽しそうに話していた。


「お父様・・・」

ミディアンに抱きかかえられ現れたカインを見た瞬間、アーサーは今にも泣きそうな顔でカインを抱きしめた。

「よかった、カイン。お前が無事でよかった」

その様子を勇者パーティーの者たちも温かい目で見守っていた。

「それにしてもカイン、お前、すごいな」

勇者パーティーの者たちの二人を見る目は温かい眼差しから一転、真剣な眼差しに変わっていた。

「アーサー、ミディアン、話がある」

ミディアンはレアをマリーに頼み、カインをアーサーから受け取り、ソファーに座り、カインを膝の上にのせた。


「結論から言うと、カインはすでに炎属性と聖属性を有している。しかも、その魔力は常軌を逸している」

「聖属性でいうと私が知っている限り、ないものを元に戻すほどの膨大な魔力を持っている人はいないわ」

「それに、炎属性も。アーサーの炎属性は他種族をあわせても一番強い魔力を持っていると思うが、カインはそのレベルの五倍・・・いや、十倍以上だ」

ミディアンは不安が大きくなり、カインを抱きしめる力が強くなっていた。

「お母様、大丈夫ですか?」

当のカイン本人は他人事のような顔をしていた。

(この子ったら・・・自分がどんな状況に置かれているのかわかっているかしら)

いつもと変わらないカインを見て呆れつつ、同時に不安が募り、複雑な感情が入り混じっていた。

「カインの父親は魔王ベザレルだ。となると、カインは闇属性の魔法も使える可能性が高い。しかし、闇属性とはよくわからない属性だ。カインもきっと自分が何の魔法を使えるのかわかっていないはずだ」

アーサーがカインを見ると案の定よくわかっていないようだった。

「俺たちがカインの属性を知ったのと同時に、魔族にも知られたはずだ。おそらく、またカインを狙ってくるだろう。魔族の王とするために」


急に視線が集まり、カインはどんな表情をすればいいのか分からず、結果無表情になっていた。

「本当にアーサーとミディアンの息子とは思えないほど、感情が出ない子だな。なぁ、カイン。アーサーとミディアンが本当の父親と母親でないことはわかっているよな」

「タイガ」

五歳の子にストレートにものを言うタイガをオリーブが諫めていた。

「はい。でも僕は本当の父親の記憶も母親の記憶もありません。僕の父と母はお父様とお母様です」

「カイン」

アーサーとミディアンはうれしそうにカインを抱きしめていた。

カインは顔を引きつらせながら、苦しそうな顔をしていた。

「アーサー、ミディアン、それ以上抱きしめるとカインがつぶれるぞ」

「あ、すまない、カイン」

カインは相変わらず無表情だった。

「なぁ、カイン。本当の母親の記憶は全くないのか?」

カインは真剣に考えたが思う当たる節は何も思い浮かばなかった。

「記憶にないです。魔王城に連れ去られた時、魔王の側近だったセヴァスというおじいさんと話したのですが、その人も僕の本当の母親が誰なのかは知らないそうです」

「そうか・・・」

カインが複数の属性を有していることは実の母親が関係していること以外考えられなかった。


「誰が何と言おうとカインは俺とミディアンの子だ」

「そうよ、カイン。カインは私の子よ」

うれしそうにカインを抱きしめるミディアンを見て、アーサーはほっとしていた。

(本当によかった・・・あの時、カインが我が家に来なかったら、きっとミディアンは今頃・・・)

カインがデイヴィス家に来た日、アーサーにとってカインは、憂いに沈んだミディアンの心を立ち直らせ、歓喜に満ちあふれさせてくれた救世主だった。

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