88 その場の雰囲気と勢いで宣言してしまったけど、大丈夫ですか?
「アイビー殿下、カイン様が王宮に戻られたそうですよ」
「本当!?」
アイビーは急いで部屋から出ようとしたが、侍女エバンに止められた。
「アイビー殿下、今は国王様とお話されています」
「そうなのね・・・」
勢いでカインに会いに行こうとしたアイビーだったが、改めて考えると、どんな顔して会えばいいのか考えていなかった。
「でも、安心してください。お話が終わりましたら、アイビー殿下に会いに来るそうですので」
「えー!!!」
エバンはアイビーが驚いていることに、驚いていた。
「アイビー殿下、カイン様にお会いしたかったのではなかったのですか?」
「もちろん、会いたかったわよ。でも、その・・・」
エバンは何となく事情を察した。
「アイビー殿下、大胆なことをした割には、今さら照れているのですか?」
「だって・・・」
アイビーは頬を赤く染めながら、もじもじしていた。
「アイビー殿下、アイビー殿下はカイン様の婚約者なのですから、もっと堂々としてよいと思いますよ。そうでないと、カイン様はモテるのですから、他の方に取られてしまいますよ」
「・・・それは、絶対に嫌だ」
「では、カイン様をお迎えするために準備しないとですね」
エバンはそう言って、アイビーの服を選び始めた。
(そうだわ・・・もっと自信をもたないと)
アイビーは気合を入れ、エバンが用意した服に袖を通していた。
スチアート国王ダタンはカインの話を聞くなり、頭を抱えていた。
「どうやらイエッツェは根っこまで腐りきっているようだな」
カインは獣人族、ドワーフ族、エルフ族との話を全てを報告した。しかし、アンドラ、ジゼ、リンの名前は伏せた。それともう一つ。奴隷が何をされているのかについては、最後までアンドラもベルネットも教えてくれなかったので、国王に報告することができなかった。
「・・・ですので、僕には理由がわかりませんで・・・」
「カイン、その件は大丈夫だ。大体察しが付く。それに子供のお前はまだ知らなくてよい」
「・・・はい・・・?」
(まぁ、大人にもいろいろあるよね)
アンドラとベルネットにも全く同じことを言われていたので、カインは腑に落ちなかったが、それ以上追及することはなかった。
「ハワード、またあのメンバーに声をかけるようにリオスに伝えろ。なるべく早く集まるようにと」
「承知しました」
ハワードは足早に部屋から出て行った。
国王ダタンは深刻な顔をしながら、カインの顔をじっと見ていた。
(何だろう・・・この異様な緊張感は)
国王ダタンは何かを決心したのか、カインにこう告げた。
「カイン・・・魔王になりたいか?」
「えっ?」
予想外の質問にカインは一瞬、何を聞かれているのかわからなかった。
「すまない、変な事聞いたな・・・はっはっはっ・・・」
国王ダタンは苦笑いしながら、なぜかカインを哀れむような目で見ていた。
「正直に言うが、カインの存在は余にとっては頼もしい存在でもあり、一方で脅威でもある。今のカインの力でもスチアート王国、いや、この大陸を支配することなど造作もないことだろう。アイビーをカインの婚約者にしたのは、一つは純粋に娘の願いを叶えたいからだ。アイビーはカインのこと心から慕っている。それと、もう一つは、カインがアイビーを愛することで、この国への脅威とならないためである。父親としては前者だが、国王としては後者となる。この国を守るのが国王の務めだ。まだ難しいかな・・・カインのことを疑っているわけではないが、やはり強い者はそういう目で見ないといけないんだよ。国王としては辛いよ」
国王ダタンの娘と国を思う気持ちが子供であるカインにも痛いほど伝わってきた。
「国王様、カイン・デイヴィスは国王様に忠誠を誓います。もし、国王様は僕の存在を脅威と感じたのならば、殺してください!でも、僕はここで誓います!!この国の民と国王様、王妃様、ダリア様、そして、我が未来の妻、アイビーを命を懸けて守り抜くと誓います!!!」
カインの誓いはとても七歳とは思えないほど、勇ましい宣言だった。
カインの目は獅子のように男らしく、国王ダタンも圧倒されるほどだった。
「余は見る目があったようだな。カイン、その誓いを違わぬよう、頼むぞ」
「はっ!」
(もしかしたら、一番ふさわしいのは・・・カインかもしれない・・・しかし・・・やはり)
カインの去って行く後ろ姿を見て、国王ダタンはある考えが頭によぎっていた。




