75 大人の悪ノリについていけないのですが、大丈夫ですか?
アンドラはカインをつま先から頭の先まで観察したが、魔族に見られる特徴が何一つ見つけられなかった。
「本当に魔王ベザレルの子供なの?どっからどう見ても普通の人族にしか見えないけど」
「カイン君の場合、母親の血が濃いんだと思うよ。まぁ、その母親も誰かはわかっていないのだけど。少なくとも魔族ではないことは確かだね。アンドラは心当たりない?白髪で、金色の瞳を持った種族」
「白髪はエルフにもいるはずだけど・・・考えてみれば、金色の瞳を持つ種族はいないわね」
「アンドラでも知らないのなら、カイン君の母親の件はしばらく時間がかかりそうだね」
ベルネットは残念そうにカインの肩を軽くさすっていたが、カイン自身は特に悲しくも思っていなかった。
「カイン君の母親の件は私も探ってみるよ。興味あるしね」
「ありがとうございます。アンドラさん。でも、僕、今はお金持ってないですよ。報酬とかはどうしたらいいのですか?」
「勇者アーサーの子なのに自由に使えるお金もないのかい?」
「はい。お金は僕の侍女が管理しているのですが、毎月何に使ったのか、報告しないといけないのです。基本時には僕は外に出ることはあまりないので、貯金はあるのですが・・・今は僕の侍女はいないですし、最低限のお金しか持たせてもらってないので。正直、僕の家はお金には困っていないのですが、金銭感覚がおかしくならないようにお父様があえてそうしているそうです」
「さすが、勇者アーサー様だな・・・そうだな・・・そしたら・・・」
アンドラはカインをじっくり観察しながら、獲物を見るような目つきをしていた。
「そうだね・・・お金がないなら、ここはやっぱり体で・・・」
最後まで言い切る前に、ベルネットがアンドラの頭をはたいた。気持ちのいいくらい快音が響いた。
「子供に何を言っているの」
「冗談だって。でも、カイン君、男前だし、成長したら・・・」
もう一度、頭を叩かれそうになったので、アンドラは逃げて、カインの後ろに隠れた。
「カイン君、その邪な考えを持った雌虎から離れて」
「冗談だって。報酬というか、これはお願いなのだが・・・イエッツェ王国で奴隷となっている子供たちを解放に力を貸してほしい。助けたい気持ちはあっても、私一人では、どうにもできないの」
「わかりました。お任せください・・・アンドラさんは、情報屋ですよね。情報屋というと命の危険と隣り合わせだから、もっと危険な人をイメージしていましたが、正反対ですね。関わりのない子供たちの心配をするんですね」
「褒めてくれてありがと・・・私も似たような境遇だから。私は奴隷にならなかっただけで、生きるためにいろいろしてきたし」
「カイン君、これは借りの姿かもよ・・・だって昔は・・・」
「ハナ。子供にする話じゃないでしょ」
「ごめん、ごめん。つい悪ノリして」
(二人とも何となく似ているなぁ)
カインは二人のやり取りを見ていて、ベルネットとアンドラが親友になれたのも納得していた。
「イエッツェ王国と魔族とのつながりは私にまかせて。奴隷の件は頼むわよ」
「わかったわ。私たちはドワーフとエルフの国にも行こうと思うの」
「とりあえず、奴隷の件はお父様に知らせます。僕たちが帰りにまたここに寄りますので、その時に情報を交換しましょ」
「わかったわ。それまでに、調べておくわ。もうそろそろ仕事に戻らないと」
「ありがとう、アンドラ」
カインとベルネットはアンドラに見送られながら、次のドワーフの国へと向かって行った。
「それで、ヴェルナーはスチアート王国に残したままだと」
「・・・はい・・・・」
「ズオン侯爵、ヴェルナーがあの秘密を洩らしたらどうなると?」
「ヴェルナーは賢い子です。イエッツェ王国を危険に晒すようなことは、決してありません」
「ほぉ・・・ザイン、ズオン侯爵家全員を例のところに連れて行け」
「承知いたしました」
「まさか・・・国王様、私はどうなってもいいですので、妻と子供たちだけは」
ズオンは国王の言った言葉の意味を理解していた。しかし、抵抗する間もなく、護衛騎士に引きずられながら、玉座の間を後にした。
「ザイン、何としてでも、カイン・デイヴィスを手に入れるぞ・・・これから何をすべきかわかっているだろう?」
「はい、心得ております」
ザインは国王を背に向け、扉に向かいながら、無事に忠実な宰相を演じることができたことに安心していた。
(あの国王様はやはり・・・)
ザインは扉から出た瞬間、ある決意をした。




