74 裏で画策されている壮大な計画を当の本人は知らないのですが、大丈夫ですか?
「アンドラ、店の方は大丈夫なの?」
「大丈夫よ。せっかくハナが来たのに、もてなさないわけにはいかないでしょ?それにいつも一人でしか行動しないハナがこんなに可愛らしい子を連れてきてくれたのだから。自己紹介がまだだったわね。私はアンドラ。見た目通りの虎族よ。ここでウエイトレスをしているわ」
アンドラは身長が高く、スラっとしている。少し目つきは鋭く、きつい印象を受けるが、話してみると、気さくで良く笑う人だった。
「ウエイトレスだけではないでしょ?」
「もう・・・表向きはここのウエイトレスだけど、裏では情報屋をやっているの。ハナとは二年ぐらいの付き合いかしら。今まで一度も裏の顔を知られることはなかったのだけれど、初めてハナにバレちゃったの。最初は口封じをしようかと思ったのだけれど、話したらすごく興味深い子で・・・結局、親友にまでなっちゃったかな」
「意外です。ベルネット先生にゼイン神官長以外の友人がいらっしゃったのですね」
アンドラは大笑いしながら、カインの背中をバシバシ叩いていた。
「カイン君は私を何だと思っているの?私にも友人ぐらいはいるよ」
「私とそのゼイン神官長?以外には?」
「ドワーフのジゼ爺さんでしょ?そして、エルフのリン姐さんでしょ?・・・でも、この二人は友人というか・・・もうこの話はいいでしょ。それより先にご飯!カイン君もお腹空いたでしょ」
「はい」
三人は町一番と言われている料理を堪能した。ベルネットとアンドラはお酒が入り、陽気に楽しんでいた。
「さて、本題に入ろうか」
先程まで楽しく笑い合っていたのに、ベルネットもアンドラも一瞬で真剣な表情に切り替わった。
「それで、ハナ。何の情報が欲しいんだい?」
「イエッツェ王国のことだよ。獣人族も奴隷としてさらわれているんでしょ?」
「その件か・・・たしかに。王様も動いてはいるんだけど、獣人族は人族ほど強くない。戦争でもしかけられたら、終わりだ。しかも、イエッツェ王国の手口は巧妙で、いなくなっている子供たちは親がいなかったり、捨てられたり・・・言い方は悪いけど、いなくなってもわからないような子どもたちだけをさらっている。だから、訴えるやつは誰もいないという始末。さらわれた子供たちのことを思うと・・・」
「私も親に捨てられた身・・・幸運にも私はいい環境で育つことができたけど・・・一刻も早く救ってあげないと・・・その件もそうなんだけど、イエッツェ王国は魔族ともつながりを持っているようで」
「はっはっはっ・・・また馬鹿な事をしたね」
「どういうこと?」
アンドラはもったいぶったように一度お酒で喉を潤した。
「魔族が見返りを求めないと思う?」
「どういうこと?」
「考えてみて」
ベルネットが少し面倒臭そうに考えている時に、カインも一緒に考えていた。
「もしかして魔族はイエッツェ王国を要求を呑んでいるように見えて、後で、乗っ取ろうとしているのではないですか?」
「カイン君、賢いね」
「カイン君、私と同じ考えだよ」
「ハナ、本当かい?」
「もちろん」
「半分は正解」
「半分?」
カインとベルネットは同時に顔を見合わせながら、声が揃っていた。
「それも正解。でも本当の目的は別にあるんだよ」
「本当の目的?」
「どうやら人族の中に魔王の子供が紛れているらしい。その子供を魔王にして、この大陸全土の頂点にその子を立たせようとしているのよ」
カインとベルネットは再び顔を見合わせていたが、今度は気まずい雰囲気で苦笑いをしていた。
「どうしたの?二人とも?」
「アンドラ・・・その魔王の子供・・・目の前にいるよ」
「えっ?目の前にいるって・・・ん?目の前にいるのは勇者アーサー様の子供でしょ?」
「まぁ、そうなんだけど・・・ねぇ、カイン君」
「僕は勇者アーサー様の息子ではあるのですが・・・本当の父親は魔王ベザレルです」
「・・・えっ・・・」
アンドラは目が点となったまま、しばらく状況をつかむことができなかった。




