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僕が言うのも何ですが、勇者が魔王の子を育てて大丈夫ですか?  作者: 日昇
第1章 幼少期

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5 魔王城に来たけど、大丈夫ですか?

アーサーはカインが連れ去られたと思われる付近を捜索したが、カインがどこに向かったのか痕跡すら見つからなかった。

真夜中、アーサーの目は血走っていた。カインはいつも何事にも動じない子供とはいえ、今回は何者かによって連れ去られている。魔族が襲ってきた状況から、魔族に連れ去られた可能性が高い。

(もしかしてカインがあの男の息子だと気づかれてしまったのか・・・)

アーサーは今の状態では正しい判断ができないことがわかっていた。情報を整理するためにも、一旦家に帰ることにした。


ミディアンは帰りが遅いアーサーとカインを寝ずに待っていた。やっと帰って来たとドアを開けた先にいたのは、顔面蒼白のアーサーだけだった。

アーサーからを詳細を聞いたミディアンも動揺し、泣き崩れていた。眠っていたアベルも慌ただしい物音で目が覚め、ミディアンの隣でカインの無事を祈っていた。レアは眠さに勝つことができず、ミディアンの膝で眠っていた。

「あなた・・・カインは大丈夫よね?」

「大丈夫だ。カインは強い子だ・・・」

「でも、あの子はまだ・・・」

「大丈夫だ。必ず俺が無事に連れて帰るから」

アーサーはミディアンとアベルを抱きしめた。




「アーサー、状況はどうなっている?」

カインが行方不明になったことを聞きつけ、国王ダタンがデイヴィス家まで足を運んできた。

「国王様、足を運んでいただきありがとうございます。まだ、カインの行方はつかめてません」

「そうか・・・魔族が気がつかなければよいが・・・」

血の気が引いた顔でミディアンと手を取り合っているアーサーを見ながら、ダタンもカインのことを我が子のように心配していた。




「アーサー様!カイン様の居場所が特定できました」

「どこにいる!」

「嵐属性の魔導士によれば・・・魔族領にいるようです」

「魔族領・・・」

アーサーは嫌な予感しかしなかった。

「国王様、ただちに魔族領へ向かいます」

「わかった。アーサー、連れて行くなら、あの時と同じ者を」

「承知しております」




「久しぶりですね。アーサー」

五年前、最強の勇者軍と呼ばれたメンバーが久しぶりに集まっていた。

メンバーはドワーフ族地属性の背は低いが岩のように固い体をしているガラテ、獣人族嵐属性で虎のような見た目をしているタイガ、王族以外で唯一聖属性が使える種族のエルフ族で紅一点のオリーブ。

「アーサー。さらわれた子供はもしかして・・・」

「あぁ、その通りだ。私のために集まってもらって申し訳ない。しかし、あの子は私の子だ。力を貸してくれ」

「久しぶりだな、腕が鳴るぜ」

「俺の嵐で魔王城ごと吹き飛ばそうか」

「タイガ、できもしないことを言わないでよ」

昔と変わらないやり取りにアーサーはどこかほっとしていた。

「よろしく頼むぞ、みんな」

アーサーは五年前、魔王を倒した時と同じメンバーで魔族領へ向かった。




「ここは・・・」

カインが連れ去った男と着いた場所は、いかにも気味の悪い部屋だった。蝋燭の灯りが所々にあり、大きな窓から見える月明かりで部屋が明るく照らされていた。

「俺の名はガド。お前の父親の弟だ」

「お父様の弟?つまり、叔父様ってことですか?えっ?でも、叔父様は魔族ですよね?どういうことですか?」

明らかに魔族の男が自分の叔父だと名乗り、カインは理解できなかった。

「お前は自分が何者なのかまだ知らないのか?」

「何のことですか?」

カインは冷静だった。ガドは五歳にして何事にも動じないカインを見てある人物と姿を重ねていた。

「やはり・・・兄貴の子だな」

「???」

カインはガドの言うことがさっぱり理解できなかったが、五歳の子供が抵抗して、逃げれるわけもなく、ガドに従うしか生きる道は残されていなかった。

「叔父様はなぜ僕をここに連れてきたのですか?」

「もちろん、カインを次の王にするためさ」

「王?」

「セヴァス」

ガドが名を叫ぶと、床に影のようなものが浮かび上がり、そこから執事の恰好をした老人が現れた。

「セヴァス、この子がカインだ。世話を頼む」

「かしこまりました」

そう言うとガドはどこかに消えていった。

カインは老人と二人残され、呆然としていた。

「カイン様・・・立派になられましたね」

「おじいさんは僕と会ったことがあるのですか?」

「はい、まだカイン様が赤子だった頃です」

「おじいさん、僕はなぜここに連れてこられたのですか?あの叔父様が僕を王にするって言っていたけど、どういう意味ですか?」

「カイン様はまだ何も知らないのですね。疲れたでしょう。お部屋に案内します。今日はゆっくり休んでください。明日、私が全てお教えしましょう」

カインは今すぐ知りたかったが、おじいさんをこんな遅い時間まで働かせるわけにはいかない。

「わかりました。今日は僕も疲れました。部屋に案内してもらえますか?」

「かしこまりました」


カインは部屋に行くまでの間にセヴァスについて知ることができた。

セヴァスは前魔王の側近で影を自在に操ることができるという。年は七百歳ぐらいだ。魔族の平均寿命は九百から千歳だそうだ。人族で言うと、セヴァスはだいたい七十歳くらい。魔族の中でもおじいさんだった。

「私のことはセヴァスとお呼びください、カイン坊ちゃま」

「セヴァス・・・坊ちゃまはやめてください」

「坊ちゃまは坊ちゃまですので」

魔族でありながら温かい雰囲気を持ったセヴァスにカインはなぜか心を開いていった。

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