49 魔王にも幼馴染がいたようですが、大丈夫ですか?
「ガド様、やはりカイン様は王宮に住んでいるようです」
ガドの腹心ゲラルは現在のカインの様子について報告していた。
「ですが、王宮には結界が張られており、容易に入ることはできないようです」
「まぁ、予想通りではあるがな・・・それで、あいつは何をしている」
「スチアート学院の先生として潜入しています。今はカイン様の兄アベル、そして、勇者アーサーが先生として招かれているようです」
「ほぉ、それはいい」
「三ヶ月後にスチアートに各国の優秀な生徒たちが集まり、競う、バルチャというものが開催されるそうです。その時に・・・」
「なるほど・・・ちょうどいい・・・俺もカインにやられた傷が癒える頃だな・・・こんなに回復するのに時間がかかるとは、本当に怖ろしい子供だ」
ガドはカインとの一件以来、ベッドで寝たまま、立ち上がれなくなっていた。回復するまでかなりの時間がかかりそうだった。
魔族は通常、他種族よりも回復するのが早い。五倍ほどの速さで回復することができる。しかし、カインから首を絞められただけなのに、ガドの身体は思いように回復しなかった。
(あの時、魔力だけでなく、生命力までもが吸い取られた・・・あれは闇属性の魔法だ・・・本当になんて子供を残してくれたんだ兄貴は)
ガドはただカインを魔王にしたいだけではなかった。今のガドにとって家族といえる存在は、兄が残した子カインだけしかいなかった。
(俺は間違っているのだろうか・・・いや、母さんを殺した奴らを許すことはできない。それに、兄貴だって・・・)
ガドの心の中では少しは葛藤していたが、それでも、母と兄を殺された恨みが勝っていた。
「セヴァス、お兄様がバルチャの代表に選ばれたこと言わなかっただろう」
カインは拗ねた様子だった。
「これは申し訳ございません。先生に紛れている魔族の方が気になったものですから。やはりウィロウでした」
「誰に擬態しているの?」
「グレイス・リーという先生です。カイン坊ちゃまのことを陰から見ていたましたから。カイン坊ちゃまも気づいておられたのでは?」
「気づいていたけど・・・」
カインは紅茶を飲みながら、腑に落ちない表情をしていた。
「カイン坊ちゃま、何か気になることでもおありですか?」
セヴァスは空になったティーカップに紅茶をつぎながら尋ねた。
「何だろう・・・敵意とか殺気とかを全く感じなくて・・・僕の勘違いかもしれないけど・・・」
「そうですね・・・勘違いではないかもしれないですね」
セヴァスは何か知っているような口ぶりだった。
「セヴァス、何か知っているのだろう?」
「あくまでも私の推測・・・といいますか、大人の事情といいますか」
「もったいぶってないで話してよ」
「もう少し大人になってからでないと理解できないかと・・・これだけお伝えしましょう。ウィロウはベザレル様とは幼少期から共に育った兄妹のようだったということだけですかね」
「ウィロウとお父様は仲良かったということ?」
「はい、その通りです」
「僕とアイラみたいな関係ってことか」
「まぁ大体そんな感じですね」
(ますますわからなくなってきた。ではあの視線の意味は一体・・・?)
(ウィロウには警戒しておかないと。あの女は何をしでかすかわかりませんからね)
セヴァスにはこの後、ウィロウがカインに対してどう接してくるのかある程度は予想できていた。
「カイン坊ちゃま、もしかしたらウィロウがこんなことを言うかもしれませんが、信じないでくださいね」
「???どんなことを言ってくるの?」
「・・・と言ってくるでしょうが、全くもって嘘ですから」
「えっ・・・?そんな嘘を?」
「はい・・・絶対に言います」
「本当に違うよね?」
「はい、絶対に違います」
「わかった。本当にそんなことを言ってきたら、僕が豪華な贈り物をあげよう」
(豪華な贈り物って・・・さて、ウィロウが生きて帰れるかどうか)
魔族から狙われているはずなのに、なぜかご機嫌になっているカインだった。




