47 存在しないはずの金色の瞳を持つ種族が普通に生活しているのですが、大丈夫ですか?
「ベザレル様、男の子が生まれましたよ」
「あぁ・・・この子が・・・私の息子!」
(この人、魔王城で見た肖像画の人だ・・・ということは、この人が僕のお父様?)
カインが今見ている光景は、赤子の時のカインの瞳に映っている光景だった。
(この女の人は誰だろう?綺麗な人だな)
カインの母の出産を手伝ったであろう女の人の腕にカインは抱かれていた。
「ベザレル様、抱っこしてみますか?」
ベザレルはぎこちないながらも、カインを抱きかかえていた。
「ベザレル様、抱き方はこうですよ」
「あぁ、そうか。ありがとう、ルキナ」
(この女の人・・・僕と同じ金色の瞳だ)
カインの母の側にいたルキナという女性は、髪の色は綺麗なエメラルドグリーンだったが、瞳はカインと同じ金色の瞳だった。
「・・・ありがとう・・・」
(今、お父様がお母様の名前を言ったのに、上手く聞き取れない)
他の会話ははっきり聞こえるのに、なぜかカインの母親の名が呼ばれるときだけ、雑音が混じり、上手く聞き取ることができなかった。
「ベザレル、私にもその子を抱かせて」
「あぁ」
(やっと、お母様の顔が見れる)
カインは期待に胸を膨らませ、赤子のカインの視線は父親から母親に移った。
(ん・・・どういうことだ?)
カインの母親の顔には黒い影がかかっており、はっきり顔を認識することができなかった。
「私・・・母親になったのね」
「私は父親だ」
仲睦まじく笑いあう姿は、どこにでもいる幸せな家族の一場面だった。
「ベザレル、この子の名前はどうする?」
「そうだな・・・この子の名は・・・カインにしよう・・・神からこの子を授かったからな」
「カイン・・・いい名前ね。カイン、私がお母様よ」
その声は心が安らぐように心地よく、透き通っていた。しかし、顔は認識することができず、どんな表情でカインを見ているのか、微笑んでいるのか、泣いているのか、全くわからなかった。
(お母様・・・僕に・・・顔を見せて)
カインの願いも虚しく、目の前が急に真っ暗になり、現実に引き戻された。
「どう・・・かしたのですか?カイン様?」
カインがいつも以上に無表情だったため、カインが母親を見ることができなかったことをマリーは悟った。
「おかしいな・・・今までこんなことはなかったのに。なぜ、カイン君のお母様の顔に黒い影が・・・」
ゴーちゃんに自信を持っていたベルネットは、カインの母親の顔を拝むことができなかったので、ショックを受け、落ち込んでいた。
「ごめんね、カイン君。期待させといて、こんな結果になってしまって」
「いえ、お父様の顔を見れただけでも良かったです。この前見た時は、肖像画でしたので。実際にお父様に抱かれている体験ができたので、それだけでうれしかったです。僕の名前もちゃんとお父様が考えてつけてくれて。照れ臭いですね」
カインは喜びを大々的に表してはいなかったが、緩んだ頬は間違いなく、うれしさが込み上げている証拠だった。
「でも、カイン君のお母様の手がかりは見つけることができたね。おそらく、あのルキナっていう女の人はカイン君のお母様と血のつながりがあるかもしれないね」
「そうですね。もしかしたら、お母様もあの女の人みたいに綺麗な人かもしれませんね」
「どういうことですか?」
何も知らないマリーは二人が話している内容がさっぱりわからなかった。見かねたカインがゴーちゃんをつけた後、カインたちが見た赤子の頃の記憶について詳しく説明した。
「それで、僕のお母様の出産を手伝った人がいて、その人の名前がルキアっていうんだけど・・・その人、瞳の色が僕と同じ、金色の瞳だったんだ」
「そうなのですか?」
「年齢はまだ若そうだったね。私と同じくらいかな」
「名前と顔はわかったので、それをもとに捜せればいいのですが」
「よかったですね、カイン様。手がかりが見つかって」
「・・・うん」
飛んで喜んでもいいはずなのに、カインは難しい顔をしていた。
「マリーさん、そう簡単には見つからないと思うよ」
「なぜですか?ベルネット先生」
「考えてみてよ。金色の瞳を持つ人が少なくとも今三人いる。ということは、金色の瞳を持つ種族がこの大陸に存在するはずだ。しかし、どの歴史書を見ても、そんな種族が存在した形跡はないし、私もいろいろな種族の研究をしているけど、まず存在しないね。となると、その種族自体が長年にわたって隠された存在であるということ。カイン君が今スチアート王国にいること自体、本当ならばあってはいけない事なのかもしれない。一歩間違ったら、その種族がカイン君のことを攫う可能性がある・・・でも、まぁ、カイン君も七歳で、今まで魔族以外にまだ目をつけられていないから、今は様子をみるしかないね。もちろん、カイン君の赤子の記憶をもとに、私の方でも調べてみるから。大丈夫だよ、カイン君。君のお母様はきっとカイン君のことを愛しているよ。顔はわからなかったけど、あの声は我が子に愛情を注いでいる母親の声にしか聞こえなかったから」
「ありがとうございます、ベルネット先生。よろしくお願いします」
カインは様々な思いを込めて、ベルネットの手を握り、頭を下げた。
「まかせて、カイン君」
ベルネットはカインを包むように優しく抱きしめた。




