40 僕の執事が魔族なのに人族の生活を楽しんでいるのですが、大丈夫ですか?
王宮に戻ると、アーサーはデイヴィス家に戻ることとなった。
「カイン、また来る。今度は母様とレアを連れてくる。それまで、国王の言うことをよく聞くんだぞ。それから、王宮の侍女たちに迷惑かけないように。それから・・・」
「お父様、僕は大丈夫ですから、早く行ってください」
「そういうなよ。カインはしっかりしているが、親としては心配なんだぞ」
「僕は大丈夫ですよ。なにせ、全属性の魔法を使えるのですから」
「おいおい、あまりそういうことを言うなよ」
「わかってます。これでも、寂しく思っているんですよ」
「だったら、もっと顔に出せよ」
アーサーはそう言って、ため息をつきながら、カインを抱きしめた。
「カイン、王宮であっても気をつけろ。何か異変を感じたらすぐに国王に報告しろ。いいな、くれぐれも自分で解決しようとするなよ」
「はい、わかりました」
「ダリア王女殿下、よろしくお願いいたします」
「えぇ、お気をつけてお帰り下さい」
「マリー、カインのことを頼むぞ」
「はい、お任せください。アーサー様」
アーサーは少し不安な顔をしつつ、カインとダリアに見送られながら、デイヴィス領へと戻っていった。
アーサーを見送るとダリアは早々と王宮の中に入っていった。ルーシーもダリアの機嫌の悪さを察知し、カインとマリーにペコペコ頭を下げながら、ダリアの後を追いかけた。
「マリー、将来、あの王女殿下にこの国を任せて大丈夫だと思うか?」
「カイン様、そんなことを言うもんじゃありませんよ」
「だから、小声で話しているんだろ?感情を表に出すようでは、まだまだだと思うんだよね」
「そうですね・・・カイン様は大人ですね・・・でも、アベル様がそばにいれば大丈夫ではないかと思いますが」
「たしかにそうだね。お兄様がいれば問題ないか。お兄様・・・頑張ってください」
ダリアが機嫌を損ねている原因を考えることもなく、スチアート王国の未来のために、カインは心苦しく思いながらも、アベルが犠牲となり、ダリアと結ばれることを願っていた。
「カイン様ー!」
明るく元気に勢いよくカインに飛びついてきたのは、アイビーだった。
「ずるいです。カイン様、お姉様とスチアート学院に行ったのですよね?」
カインは丁重にアイビーの手を離しながら、説明した。
「ダリアはお兄様の婚約者ですからね。僕はお兄様の授業を見たかったですし」
アイビーは疑いの目でカインを見ていた。
「どうしたのですか?」
「・・・お姉様と何かありましたか?」
「何かって・・・何が?」
アイビーは口をもごもごさせながら、ぼそぼそ何かを言っていたが、カインは理解できなかった。
「アイビーが何を言っているのかはわからないですが、ダリアとは何もありませんでしたよ。お兄様のクラスには僕とお父様しか行かなかったですし」
「そうですか・・・」
「何か気になることがあるのですか?」
アイビーはカインに言うべきか悩んでいるようだったが、ダリアがスチアート学院から帰って来た時の様子を話してきた。
「お姉様がスチアート学院から帰って来た後に、お姉様に学院のお話を聞こうと部屋を訪ねたのですが、『今日は疲れたから、ごめん』といって、お話してくれなかったのです」
なぜアイビーが心配そうな顔で話しているのか、その話を聞いただけではカインにはわからなかった。
「いつもダリアってそんな感じではないですか?」
「いいえ、お姉様はどんなに疲れていても、私が聞きたいと言えば、話を話してくれるのです。でも、今日は違ったのです。私に対する視線というか・・・勘違いかもしれませんが、冷たくあしらうように見えたのです」
(僕はいつもその視線を浴びているのだが)
カインはダリアがアイビーにそのような態度を取る要因を考えていた。カインはあることを思い出した。
「・・・そういえば、僕とお父様がダリアを迎えに行く前に、ダリアはお兄様と会ったそうです。きっとその時に何かあったのかもしれません・・・お兄様がダリアに変なことは言わないとは思いますが、その時に二人の間で何かが・・・」
アイビーは潤んだ瞳でカインに何かを訴えてた。
(これは・・・僕に聞いてこいということか)
「わかりました・・・僕がダリアに聞いてみますよ」
カインは大きなため息をつきながら、ダリアに話を聞くことを承諾した。
「カイン様、ありがとうございます!」
アイビーは目を輝かせながら、もう一度カインに抱きついた。
次の日、カインは朝食をとり、部屋に戻った後、セヴァスを呼び出した。
「なるほど・・・それで、私にレデイの部屋へ侵入させ、原因を探るために、盗み聞きをさせようと」
「レデイって・・・セヴァス、仮にも魔族だろう?いつの間に男女の別を気にするようになったんだよ」
「そうですね。最近は、人族の生活に慣れてきたのでしょうか。魔族の食事はあまり美味しいものがありませんでしたので・・・最近では、ケーキという菓子にはまっています」
セヴァスは自由自在に人の影に潜み、移動することができる。カインを主と定めているため、カインがどこにいても、カインのいる場所を特定することができる。そのため、カインに危険が迫れば、一秒もたたずして、カインのもとに行くことが可能である。
「別に外で楽しむのは構わないけど、魔族とはばれないようにしてくれよ」
「大丈夫です。カイン坊ちゃまから偽証魔法をかけられていますので、万が一でも私が魔族だとは誰も気がつきませんよ」
カインはセヴァス偽証魔法をかけ、魔族特有の赤い瞳を青い瞳に見えるようにした。
「やはりカイン坊ちゃまはすごいお方ですね。防御結界魔法に偽証魔法・・・魔族でも複数の魔法を使える者はいませんから」
「そうだよな・・・自分の力が怖ろしいよ」
自分がなぜこれほどの魔力をもち、全属性のあらゆる魔法を使えるのか。
カインは類まれなる才能にある意味恐怖を感じていた。




