36 規格外の僕の秘密を教えて、大丈夫ですか?
教室に戻ったアベルのクラスでは、勇者アーサーの話で盛り上がっていた。
「さすが、勇者アーサー様だよな。コール先生でも止められなった、あのゴーレムを粉々にするなんて」
「でも、勇者アーサー様は炎属性だっただろう?ゴーレムを足止めしたのは、あの氷属性の魔法だ。一体誰が・・・」
「アベル、勇者アーサー様は氷属性も使えるのか?」
「いや・・・お父様は氷属性は使えないはずです」
「じゃあ、一体誰が?」
「・・・」
「幸いなことにカイン君が魔法を使っているのを見たのは、アーサーと私だけのようです」
アベルとクラスメイト、そして、教師たちからはコール、アーサー、ゴーレムしか見えていないようだった。
「それでも、あの氷魔法をどう説明したら・・・アーサー、それよりもどういうこと?この子、まだ七歳でしょう?私の魔法は上級魔法だったのよ。七歳の子供が止めれるようなゴーレムではなかったはずよ」
アーサーは興奮しているコールを落ち着かせていた。
「本当はジェイダンだけに話そうと思っていたのだが・・・ジェイダン、一つだけ約束してくれるか?」
「わかった。約束しよう」
「まだ、何も言ってないぞ」
「私は昔からアーサーを知っている。勇者の称号を背負うにふさわしい男だ。そんな男が育てた子供だ。どんなことがあっても、私はアーサーを信じるし、カイン君のことも信じよう」
「ありがとう、ジェイダン」
アーサーはジェイダンの右手を両手で握り締め、感謝していた。
「コール先生、先生も今から正直に全て話しますから、誰にも漏らさないでいただきたいです」
「アーサー、私を誰だと思っているの?いいわよ。墓場まで持って行ってあげるわよ」
「恩に着ます」
まず、アーサーはジェイダンにあるお願いをした。
「ジェイダン、カインは五年後、この学院に入学してくるが、担任の先生はコール先生にしてもらえないだろうか?」
「コール先生、どうですか?」
「えぇ、構いませんよ」
「ありがとうございます。それで・・・カインのことですが・・・」
アーサーはカインの秘密について話そうとしたが、ダリアの侍女ルーシーの存在が気になった。
ルーシーは何となく空気を察し、理事長室から出ようとした。
「アーサー様、ルーシーは口が堅く、私が一番信頼している侍女です。そのまま話していただいて構いません。もしルーシーが他の者にカイン様の秘密を話したら、私が責任をもって、その場で処刑します」
(ダリア様!そんな重い話、私に聞かせないでくださいよ)
ルーシーが苦笑いしていると、用事を済ませてきたマリーが理事長室を訪ねてきた。
「マリーだろう。カイン、マリーは部屋で待機してもらうか?」
「アーサー様、マリーにも立ち会ってもらう方が良いと思います」
「うーん、そうだな」
アーサーがマリーに声をかける前に、ルーシーはマリーを道連れにしようとすぐに理事長室に招き入れた。
「ルーシーさん、どうされたのですか?」
ルーシーが冷や汗をかき、青ざめた顔をしていたので、マリーは小声で尋ねた。
「今からあなたの主の秘密を知ることになるの。私ひとりじゃ抱え込めないから」
「あぁ、なるほどですね・・・たしかに」
何となく事情を察したマリーはルーシーの隣で話を聞くことにした。
「何から話せばいいのだろうか・・・実は、カインは私とミディアンの子ではないのだ・・・この子の父親は・・・魔王ベザレルなんだ」
「魔王ベザレル!?」
ジェイダンとコールは衝撃のあまりカインを見たまま固まっていた。
「母親は誰なんだい?」
「母親は・・・まだわからない」
ジェイダンとコールはカインの背の高さまで屈み、じっと見つめていた。
「白髪に・・・金色の瞳・・・エルフ?いや、あの種族の瞳は翡翠色だ。金色?」
ジェイダンとコールはカインの母親を特定しようとしていたが、全く何も思い浮かばなかった。
「あと・・・あともう一つある」
「心の準備はできているから、早く言ってちょうだい」
そう言いながらも、コールの心臓の鼓動は速くなっていた。
「カインは・・・全属性魔法が使える・・・聖属性、おまけに・・・闇属性もだ」
「全属性!?聖属性?闇属性?」
ジェイダンとコールは、規格外な子供が目に前に存在していることへの理解が追いつかなかった。
「ルーシーさん?大丈夫ですか?」
(国王様はこのことを知ってて、アイビー王女殿下の婚約者にしたの?ダリア王女殿下はこのことを知ってて、カイン様のことを好きになったの?たしかに良い方向に考えれば、強くて守ってくれそうだけど・・・魔王ベザレルの子・・・)
ルーシーは情報量が多すぎて混乱し、今にも吐きそうになっていた。




