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僕が言うのも何ですが、勇者が魔王の子を育てて大丈夫ですか?  作者: 日昇
第1章 幼少期

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34 お兄様に会うため学院に来たのですが、大丈夫ですか?

「お父様、ここがスチアート学院ですか?王宮みたいですね」

学院の中には噴水やテラスがあり、花や緑も鮮やかだった。数人の庭師らしき人たちが庭の管理をしていた。学院は空色と白を基調とした建物となっており、作り手が同じなのか、グローリー教会に似た荘厳な雰囲気を醸し出していた。

「へぇー、学院ってこんな感じだったのね」

「ダリアも初めて来たのですか?」

「えぇ、別に来る用事もないし」

「はっはっはっ・・・」

相変わらず不愛想で可愛げないダリアに向かって苦笑しながら、カインはスチアート学院に足を踏み入れた。




「デイヴィス公爵、いや、勇者様と言った方がよろしいでしょうか?」

「よせよ、それよりすまないな。急に来てしまって」

「いいんだよ。ダタンからは聞いていたからな」

「こちらは第一王女のダリア・スチアート様。そして、隣にいるのが私の息子、カイン・デイヴィスだ」

「お初にお目にかかります。わたくしは国王様からこの学院の理事長を任せられています、ジェイダン・ハイブリッジと申します。国王様とアーサー様とは学院時代の友人でして。いずれお二人もこの学院でまたお会いすることになるでしょう。今後ともよろしくお願いいたします」

ジェイダンは背が低く、少しふくよかで、口髭がよく似合っている笑顔が優しいおじさんだった。

ダリア、カインはそれぞれ自己紹介をした。ダリアは王女らしく上品な挨拶をしていた。

「さすが王女ですね。上品さが滲み出ている。カイン君もすでに立派な紳士だね。二人がこの学園に来ることが楽しみだよ」

「こう見えて、ジェイダンは二属性の使い手だ。氷属性と嵐属性属性が使える。普段は穏やかで優しいが、教師となると怖いぞ」

「アーサー、脅すなよ。熱心だと言ってくれよ」

「はっはっはっ、まぁ、そうだな。とにかくいい男だ。第一王女殿下もカインもこの学院に通うことを楽しみにしているといい」

ダリアもカインも不愛想なため笑顔を見せることはなかったが、そんな二人に対してジェイダンは終始微笑んでいた。

「もう少しすると、アベル君の魔法の実技訓練の授業が始まる。アーサーは場所わかるよな?」

「あぁ、覚えているさ。俺が何度もジェイダンとダタンとおまけにバシャンを治療室送りにしたところだろ?」

「あの時は死ぬかと思ったよ。昔話は後で。カイン君、アベル君の勇姿を見てくるといい。ダリア王女殿下もきっとアベル君に惚れることでしょう」

ジェイダンの言葉にダリアは作り笑いで答えていた。




学院の裏には円盤状の訓練場があった。見物席は数万人も入れるほどの規模で、カインたちが着くとちょうどアベルのクラスが授業を始めるところだった。二十人ほどの生徒が整然と並んでおりと女性の先生が

何か説明しているようだった。


「お父様、今からどんな訓練が始まるのですか?」

「まぁ、見てなさい」

女性の先生が少し離れると地面から巨大なゴーレムが出てきた。

「今日の訓練はあのゴーレムを皆で協力して倒すことだろう。アベルは氷属性だから相性はバッチリだな」

「魔法にも相性とかあるのですね」

「あなた、そんなことも知らないの?」

ダリアは馬鹿にしたような言い方をし、鼻で笑っていたが、カインは怒りもせずに、冷静に答えていた。

「はい、そうですね。まだまだ勉強不足ですので、知りません」

ダリアは得意げに属性の相性についてカインに教えた。




魔法の属性には相性があり、それによって勝敗を左右することもある。

炎属性は氷属性に対する攻撃に魔力が増す。氷属性は地属性に、地属性は嵐属性に、嵐属性は炎属性にといった具合である。

例えば、炎属性と地属性の者が戦った時は、実力で勝敗が決まるが、炎属性と氷属性が戦うと炎属性が有利になる。炎属性は氷属性に対する耐性があり、なおかつ、魔力が1.5倍から2倍ほど増す。この二属性が戦い、氷属性が勝利するには炎属性の者の2倍以上の魔力を持っている必要がある。一般的に魔力は身体的成長や訓練によってだんだんと増していくが、最大魔力はほぼ皆同じである。普通の魔力を100とすると、平民はそれ以下、貴族でも150ぐらいである。王宮魔導士団で200。つまり、戦闘において相手との相性はとても重要である。

ちなみに勇者であるアーサーは300もあるので、どんな属性相手でも負けることがないのである。




「なるほど・・・ということは、氷属性のお兄様は地属性であるあのゴーレムに対しては、有利であるということですね」

「その通りだ・・・と言いたいが、アベルはまだ初等部で、魔法を覚えて使い始めたぐらいだ。ダリア王女殿下がおっしゃったように、魔力は徐々に培われていくものだ。今の時点では、アベルはあのゴーレムに有利になるほどの魔力を持っていないだろう。だからこその訓練だ」

三人が話している間にも戦闘訓練が始まっていた。さすが、アベル。クラスメイトの属性と魔力を把握しているのだろう。的確な指示をして、少しではあるがゴーレムにダメージを与えていた。

「お兄様、すごいですね」

「さすが、アベルだな。ここまでリーダーとしての才能があるとは思わなかったよ」

アーサーは自分の息子を誇らしげに思いながら、応援していた。

「少し席を外しますわ」

ダリアは侍女を連れて、席を外した。

(今、ちょうどお兄様がカッコイイところなのに)

カインはダリアが席を外したことを不満に思うながら、アベルの戦いを食い入るように見ていた。




「ダリア王女殿下、どうされましたか?」

ダリアはカインの視界から消えると、顔を押さえながら、しゃがみこんだ。

(何で私、カイン様にあんな態度しか取れないの。このままじゃ・・・嫌われちゃうじゃない)

ダリアが気になっていたのは、アベルの活躍ではなく、カインに対して不遜な態度を取ったことで、カインに嫌われたかもしれないということだった。

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