24 叔父様が僕の家で優雅に紅茶を飲んでいるのですが、大丈夫ですか?
「私はカイン様は・・・とても素敵な方だと思っています」
ダリアがカインに好印象を抱いていることにミディアンは少し驚いていた。どちらかというといつも睨むようにカインを見ていたので、好ましく思っていないと考えていた。
「私より三つも年下ですのにすごくしっかりしていて、アイビーは少し強引な所がありますが、嫌な顔せずにあわせてくれているように見えます。それに、あの金色の瞳・・・初めて会った時から心が奪われるほどの・・・」
ダリアはふと冷静になり、カインのことをうれしそうに話している自分が恥ずかしくなっていた。
「デイヴィス夫人・・・今の話、忘れてください」
(ダリア王女殿下はもしかしてカインのことが・・・)
「わかりましたわ」
ミディアンは笑顔で頷いたが、ダリアがカインに好意を抱いているかのように話す様子を見て、アベルとダリアとの関係が心配になった。ミディアンが見る限りは、アベルとダリアの関係は決して仲が悪いわけでもない。お互いに長男と長女だからか、しっかりした意志を持ち、まだ子供ではありながら、お互いの立場を理解し、尊重しているように見える。しかし、あくまでも親同士が決めた婚約であるためか、それ以上関係を深めようとする素振りがない。これは一方がというより、互いにそうと言える。ミディアンにとってはダリアがアベルの婚約者であることは喜ばしい事であった。真面目で、家族思いのアベルは、将来、この国の王帝となってもダリアを愛し、支えることができ、それがアベルの幸せであると確信していた。
だが、ダリアがカインのことを語る姿を見て、自分の考えが間違っていたかもしれないと感じた。ダリアがカインのことを語る姿は、アベルといる時に見せる笑顔と全く異なっていた。今になってわかったのは、アベルに見せていた笑顔が、懸命にアベルを傷つけないよう作っていた偽りの笑顔だったということだ。
「ダリア王女殿下・・・アベルと婚約してよかったですか?」
ダリアの表情は曇り、答えに困っているようだった。
「はい・・・そうですね。もしあの時、アベル様との婚約をお父様が発表しなかったら、今頃私は・・・ですから、アベル様と婚約できてよかったのです」
ダリアが見せた笑顔は、いつもアベルに見せる作り笑顔だった。
(あの時はたしかにアベルと婚約しなければ、今頃・・・でも、本当はダリア第一王女殿下もカインのことを・・・)
ミディアンは当時のことを思い出すと、それ以上ダリアに踏み込んだ話をすることができなかった。
「三人ともそろそろ応接間に行くぞ。ダリア第一王女殿下とミディアンが待っている」
なぜか仲良くなったアイビーとアイラの後ろから、大きなため息をつきながらカインはついていっていた。
「カイン坊ちゃま」
セヴァスの声がしたので、周りを見渡すと自分の影からセヴァスが顔を出していた。
「セヴァス、変な所から出てこないでよ。それで、どうしたの?」
「カイン坊ちゃま、ガド様がデイヴィス家に向かっています。早くお逃げ下さい」
「えっ?魔族が来ているってこと?」
「いえ、ガド様だけです。ガド様は瞬間移動ができる方です。一度デイヴィス家が知られてしまいますと大変まずいことになります。見つかれば、一瞬で魔王城に連れて行かれます」
「お父様に話さないと。今、ここには第一王女と第二王女もいる。二人に何かあったら大変なことになる」
ドンドンドン
その頃、デイヴィス家の入口の扉を叩く者がいた。
近くにいた侍女が応対することとなった。
「はい、どちら様でしょうか?」
「第二王女ダリア様と第二王女アイビー様のお迎えに来ました」
(あれ?お迎えにしては早いような・・・)
来たばかりの王女姉妹のお迎えとは随分早いなと思った侍女だったが、何か予定が変わったのだろうと判断し、扉を開けた。
扉を開けた瞬間、侍女は声を出すこともなく倒れた。
(不用心だな、人族の家は・・・こんなところにカインはいさせられない)
デイヴィス家は知らぬ間に、背が高くやせ型の赤い瞳の男を招き入れたのであった。
ギャー
応接間からマリーの甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「何があった?」
慌ててアーサーと応接間へ向かった。
「まずいです。カイン坊ちゃま。ガド様がもうデイヴィス家に来ています」
「そしたら今の悲鳴は」
カインはアーサーを追いかけるように応接間へと向かった。
「私たちも行きましょう」
アイビーとアイラは手をつなぎ、カインの後を追った。
応接間に着いたアーサーとカインはとんでもない光景を目の当たりにした。
「待ってたぞ、カイン」
部屋の隅で必死にミディアンとダリアを守っているマリーと、ソファーに堂々と座り、テーブルに置いてあった紅茶をすするガドの姿があった。




