23 好敵手兼友人関係が成立したようですが、大丈夫ですか?
「カイン様、これはどういうことですか?」
初めてアイビーが怖いとカインは感じていた。目の奥が明らかに笑っていなかった。
「アイビー第二王女殿下、この件はカインの責任ではありません。私の責任です。実は、アイラ令嬢の父バシャン男爵との間で口約束ではありますが、カインとアイラ令嬢を将来、婚姻させようとしてたのです。もちろん、正式な文書を交わしたわけではありませんので、カインとアイラ令嬢の婚姻は決まっていないのですが、バシャン男爵がその気でして・・・それで、アイビー第二王女殿下とカインの婚約が決まって、私とバシャン男爵との間で揉めていたのです。ですから、カインとアイラ令嬢は巻き込まれているだけなのです」
「その通りです。アイビー第二王女殿下」
アーサーが上手く説明してくれたおかげで、アイビーの機嫌は直りそうだったが、それを壊す者がいた。
「たとえ王女が相手でも私はカインと結婚します。カインは私のです。私とカインは生まれた時からずっと一緒なのだから」
カインとアーサーは再び頭を抱えた。
「アイビー王女殿下、少々お待ちください」
カインは無理やりアイラを捕まえて、少し離れたところで説教した。
「だって・・・私はカインが好きだもん」
「好きだもんって・・・仮にも一応男爵家の令嬢だろ?相手はスチアート王国の第二王女だぞ。わかっていっているのか?」
「わかっているよ。でも、私は絶対にカインと結婚する」
カインには理解できなかった。なぜここまで自分に固執しているのかが。
「アイラ、別に僕でなくてもいいだろ。アイラは可愛いんだし、選び放題だと思うんだけどな。自分で言うのも何だけど、僕は愛想ないし、笑わないし、よく子供らしくないと言われるし・・・僕のどこがいいんだよ」
「だってカインはいつだって私を守ってくれるでしょ?私の話をちゃんと聞いてくれるでしょ?カインは笑わないけど、困った時はいつでもそばで助けてくれる。私はそんな不器用だけど優しいカインのことがずっとずっと好きなの」
カインはアイラの気持ちにどう答えるべきか悩んでいた。
いつだって振り回されることが多かったが、いつもアイラは隣でかいがいしく世話をし、笑顔を向けていた。カインはアイラとの過ごした時間を思い出した時、無下に突き放すこそができなかった。
(どうしようかな・・・)
「アイラ様のお気持ちはよくわかりました」
「わぁ!!!」
急に声をかけてきたアイビーにアイラは驚いて思わず叫んで、カインの後ろに隠れた。
「アイビー王女殿下、心臓に悪いですよ」
「そう言ってカイン様は全く驚いていないではないですか」
カインは人の気配を感じとっていたので、セヴァスかな?と思っていたが、アイビーだったのかと思った程度だった。
「アイラ様の気持ちは理解できましたが、私もカイン様をお慕いしています。ですから、譲る気はありません」
「受けて立ちますよ」
カインの後ろに隠れていたアイラが堂々とアイビーに宣言した。
「よろしくお願いしますね。アイラ様」
「アイラでいいですよ。アイビー王女殿下」
「アイラ、あなたも私のことをアイビーと呼んでください」
「わかったわ。アイビー」
二人の間で謎の友情関係が成立していた。
「お父様、私のカインちゃんが・・・」
「レア、お前はカインの姉なのだから、諦めなさい」
「嫌だー」
(何かよくわかんない状況だな)
一番の原因であるカインはこの状況を冷めた目で見ていた。
カインたちがひと悶着あっているころ、応接間には第一王女ダリアとデイヴィス公爵夫人ミディアンが取り残されていた。
ダリアは手をもじもじさせ、緊張している様子だった。
「そんなに心配されなくても大丈夫ですよ。直に皆来ると思いますよ」
「あ・・・はい」
ダリアは元々人付き合いが苦手なタイプなので、自分からは積極的に声をかけたりはしない。将来スチアート王国の女王となる者としては変わらなければならないところではあるが、まだまだ難しいところである。
「ダリア第一王女殿下の目にはカインはどのように映っていますか?」
意表をついた質問にダリアは驚いていた。
(カイン様をどう思う?まさかデイヴィス公爵夫人は私の気持ちに気づいているの?)
ダリアはミディアンの質問の意図がわからず固まっていた。
「ごめんなさい。変な質問をしてしまいましたね。第一王女殿下も知ったように、あの子は私たちの実の子ではありません。アベルやレアと同じように愛情を注いで育ててきたのですが・・・あの子は感情を表すのが苦手な子で・・・小さい頃なんて、躓いて転んでも泣きもしないのです。悩んだ時もありました。あの子は魔王の子でありながら、勇者の子でもあります。きっとこんな子は二度と現れないでしょうね。あの子が将来どうなるのかはわかりませんが、私にとっては何があっても私の愛する息子なのです。もし、道を踏み外しそうになったら、正しますし、人の心を忘れてしまったら、取り戻させます。でも、私たちは信じています。あの子はきっとの国にとって、いや、全ての国にとって、必要な、勇者のような人になると」
ダリアはミディアンの話を聞いて心を打たれた。
「私は・・・」
ダリアは何かの糸が切れたように饒舌に話しはじめた。




