22 婚約者と姉と幼馴染が修羅場になっていますが、大丈夫ですか?
アベルのいないデイヴィス家はレアを止める役がおらず、レアのカインへの溺愛がますますヒートアップしていた。レアの侍女のロッティは振り回される日々だった。
「カインちゃーん、どこに行ったの?カインちゃーん」
アーサーの仕事部屋に逃げ込んだカインはアーサーに訴えた。
「お父様、お姉様をどうにかしてください」
アーサーは面白そうに笑いながら、書類に目を通していた。
「いいじゃないか。レアもアベルがいなくて寂しいのだよ。あのレアの相手ができるのはカインくらいだよ」
「そうかもしれませんが・・・お姉様には友達とかいないのですか?僕にとってアイラのような・・・そういえば、アイラがお父様とバシャン様が喧嘩していたと言っていましたが、仲直りしたのですか?アイラも心配していましたよ。『デイヴィス家に行くな!』とバシャン様がアイラに言ったようですが・・・まぁ、アイラは無視して遊びに来ていますが」
アーサーは明らかに訳ありな顔をしながら、苦笑し、カインから目を逸らしていた。
「その件はカインは気にしなくていい・・・これは、父様とバシャンとの問題だ。カイン、アイラといて楽しいか?」
「えぇ、比較的楽しいですよ」
「そうか、それならよい。カインももう少し感情を表情に出すようにしないと、学院に言った時に友人ができないぞ」
「友人ですか?別に今のままでも十分ですが」
「まぁ・・・そうか」
アーサーはあの事件の時、初めて涙を流してくれたことに、自分の腕が斬られたことがどうでもよく思えるくらいにうれしく感じていた。これをきっかけに、子供らしく無邪気に喜怒哀楽を出してくれるのではと期待していた。しかし、その期待も虚しく、相変わらず何を考えているのかわからないほど表情筋が全く機能しない子供だった。
「カイン、アイラが来たようだぞ」
レアとアイラの喧嘩する声が廊下に響いていた。二人はカイン部屋に向かって歩きながら、言い合っていた。
「お父様、あれ、止めないとだめですか?」
「カインが止めないと無理だろ。俺が言ってもあの二人のお嬢様は全く聞いてくれないからな」
「そうですよね・・・わかりました」
カインは仕方がなくレアとアイラの喧嘩の仲裁に行こうとした時、扉をノックする音とマリーの声がした。
「マリーか、入れ」
「失礼します」
マリーは慌てた様子だった。
「旦那様、第一王女ダリア様と第二王女アイビー様が来られています」
「えっ?聞いてないぞ?まぁ、いい。カイン、出迎えに行くぞ」
「はい、わかりました」
突然の王女様たちの訪問にアーサーとカインは急いでエントランスまで出迎えに行った。
「アーサー様、急な訪問で申し訳ございません。私が我儘を言ってカイン様に会いに来たのです。いつもカイン様にお会いするのは王宮ですので、たまには私がカイン様に会いに行きたいとお父様に言ったので。お姉様は付き添いで来てくださいました」
「いつでも大歓迎ですよ、アイビー第二王女殿下。ダリア第一王女殿下もよく来てくださいました。王宮よりは狭い家ですが、どうぞお入りください」
アイビーはカインに近づき、手を取り、無邪気な笑顔で笑いかけた。
「カイン様に会いたくて来ちゃいました。カイン様少し背が伸びましたか?目線が同じくらいになりましたね」
アイビーはカインの一つ年上なのでカインよりは成長が早い。今までは、アイビーよりカインがやや背が低く、カインが少し見上げていたが、今では同じで背になっていた。
「本当ですね。アイビー様を守れる男になるにはもっと大きくならないといけませんね」
アイビーはカインの言葉に照れながらも喜んでいた。
(お姉様を焚きつけるために婚約者になると言い出したけど、私、本当にカイン様のことを好きになっているみたい)
アイビーはカインとの婚約話はダリアの本音を引き出すために提案したつもりであったのだが、いまではすっかりカインの虜になりつつあった。
(またこの王女様は・・・毎回毎回、なぜそんなに僕を睨むのかな。僕、何かしたかな?)
ほとんど顔合わせる時に挨拶する程度のカインとダリアだが、毎回、ダリアはカインのことを虫を見るがごとく睨みつけてくる。カインもその理由を知りたがったが、それほど親しくもないため、話す機会がなかった。
カインはアイビーをエスコート、アーサーがダリアのエスコーをして、デイヴィス家に王女様二人を招いた。
二人を応接間に通している間に、カインには解決すべき問題があった。
「お二人とももう喧嘩はやめてください」
「カイン!」
「カインちゃん!」
抱きつこうとする二人に抵抗しながら、カインは王女たちが訪問していることを伝えた。
「カインちゃんを奪いに来たのね」
「違いますよ、お姉様。」
「レアお姉様、どういうことですか?」
「実はね・・・」
アイラはようやく第二王女アイビーがカインの婚約者であることを知った。
「カインに婚約者?相手が第二王女アイビー様?」
ショックを受けたアイラは呆然としていた。
「アイラ、今日は申し訳ないけど、帰って・・・」
「嫌よ、カインは私のものよ」
「違うわ、カインちゃんは私のよ」
再び論争が勃発しそうだった。
「お久しぶりです。レア様・・・そして、そちらの方は?」
後ろから声をかけてきたのは応接間で父と母と話しているはずのアイビーだった。
その後ろでは、しまったと言わんばかりの顔をしたアーサーの姿があった。
「私はグリフィス男爵家三女、アイラ・グリフィスと申します。カイン様と結婚するのはこの私ですわ」
とんでもない発言をしたアイラにカインとアーサーは同時に頭を抱えていた。




