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僕が言うのも何ですが、勇者が魔王の子を育てて大丈夫ですか?  作者: 日昇
第1章 幼少期

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20/27

20 大人の喧嘩に巻き込まれて婚約者ができたようですが、大丈夫ですか?

カインを見て皆驚いていた。あれほど感情を表に出さないカインが涙を流していた。

アーサーはカインの目線の高さに合わせ屈み、袖で涙をぬぐった。

「大丈夫か?カイン?」

「はい・・・僕にもわからないのです。なぜ涙が流れるのか。よくわからないのです」

「そうか・・・」

アーサーは何も言わずにカインを抱きしめた。

「私にとってもカインは宝だ。誰が何と言おうと私の息子だ。だから、カイン。これからも誰に何を言われようと、勇者アーサーの息子として堂々生きてほしい。わかったか、カイン」

「はい・・・ありがとうございます。お父様」

アーサーの目から見るとカインが笑っているように見えた。

「カインが、カインが笑ったぞ」

アーサーは一人で盛り上がっていたが、その姿をカインは冷めて目で見ていた。

「アーサー様、いつものカイン様に戻っておられますよ」

ゼイン神官長がくすくす笑いながらも、アーサーにツッコんでいた。。

「カイン、もう一度父様に向かって笑ってくれ」

「いやです」

照れているのか、本当に冷めているのか、カインの表情からは読み取ることができなくて、アーサーは一人で悶絶していた。

「アーサー、盛り上がるのもそれぐらいでいいだろ。丁度、カインもいることだし」

ダタンは咳払いをし、真面目な表情に切り替え、カインの名を呼んだ。

「カイン・デイヴィス」

いきなり名前を呼ばれ何事かと思いながら、カインは国王ダタンの目の前で片膝をつき、胸に手を当て、頭を下げた。

「デイヴィス公爵家次男、カイン・デイヴィス。今日からお前は第二王女アイビー・スチアートの婚約者となる」

「・・・えっ?」

カインは正直、このおじさんは何を言っているのだろうと思っていた。

魔王の子であり、母親は誰か分からず、全属性持ちであり、使える魔法は未知数。どこからどう見ても勇者アーサーの子でなければ、危険な子供でしかない。普通ならば、国を脅かすかもしれない存在の自分を閉じこめたり、実験したり、魔族を倒すためだけの兵器のような大人に育てたりと、自国を守るためにこうなる可能性も考えていた。しかし、国王ダタンが発した言葉は真逆の言葉だった。

カインは後ろを振り返り、どういうことなのか目で訴えていたが、アーサーは勝手に決めたことを申し訳なく思っているのか、苦笑していた。隣にいるゼイン神官長はなぜか不満そうな顔をしていた。

「国王様、僕は魔王の子で、全属性持ちです。自分で言うのも何ですが、一歩間違えれば、国の脅威となりかねない存在です。そんな僕がこの国の王女様と婚約などしてよろしいのでしょうか?」

「たしかにその通りだが・・・カインはこの国を滅ぼすつもりでもあるのか?」

「滅相もございません。僕は勇者アーサーの子です。父の名を汚すことなどできません」

国王は上機嫌に笑い出した。

「そうだろう。将来、ダリアが女王となり、カインの兄、アベルが王帝となる。カインはこの二人を支える剣であり、盾となる存在になるであろう。余はそう期待している」

国王ダタンから褒められたのだが、まだ五歳の自分には婚約者など早いのではないかと思い、どう断ろうかと考えていた。カインがアイビーを見ると、まぶしいくらいのはじける笑顔でカインに笑顔を向けていた。

(あんな笑顔を向けられると断りづらい・・・どうせなら、ダリア王女のように睨みつけてくれた方が断りやすいのだが・・・なぜダリア王女から怒りに満ちた眼差しを向けられなきゃならないんだ)

カインは対照的な表情をした王女姉妹を見比べながら、返事をした。

「まだ若輩者の私が第二王女アイビー・スチアート様の婚約者になれるなど、喜ばしい限りです。謹んでお受けいたします」

「そうか、よかった、よかった。カインはまだ五歳だから・・・そうだな・・・二年後に国の皆に発表するとしよう。今夜は王宮に泊まっていくといい。ゼイン神官長もだ」

「ありがとうございます」

後を振り返ったカインはすごい形相でアーサーを睨みつけていた。

アーサーは冷や汗をかきながら、カインから目を逸らしていた。




「お父様、どういうことですか?なぜ早く言って下さらなかったのですか?」

アーサーはわざとらしくカインに土下座して謝っていた。

「いやな、こうなる予定ではなかったんだが・・・実はなアイラの父バシャンと俺と国王は学院時代の友人でな。俺は仲良かったのだが、バシャンとダタンがいつも喧嘩ばかりしていて・・・アイラとカインが仲良くしているのを見て、バシャンと勝手に将来結婚させようと思っていたのだが・・・」

「その話も初耳ですが」

「すまない。それで、それをダタンに話したら、ムキなってお前をアイビーと婚約させようとなったんだよ」

「僕は大人の喧嘩に巻き込まれて、婚約者ができたのですか」

カインの口調は厳しくなっていた。

「いや、元々はアイビー王女がカインのことを気に入ったようで、それで婚約者としようと話をしにきたんだ。だから、無理やりではないぞ」

「僕の気持ちが一ミリも反映されていませんが」

「そうだな・・・すまない」

カインはため息をつきながら、ベッドに寝ころんだ。さすが王宮のベッドだ。寝ころんだだけで眠りそうになった。

「カイン・・・怒っているか?」

「それは怒っているに決まっていますよ・・・でも、悪い話でない事だけはわかります。お兄様も僕も王族と婚姻関係になればデイヴィス公爵家も安泰ですし、お姉様の婚姻話も後を絶たなくなるでしょう。正直、アイビー様のことは今は何とも思っていませんが、僕が大人になったらどうかはわかりません。今のところは、別にいいです」

(何というか・・・我が子ながら聞き分けが良すぎるというか・・・もっと反抗してもいいのにな)

アーサーはうれしいような悲しいような目で大人びた五歳のカインを見ていた。

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