16 闇属性が使える人族は僕だけではなかったようですが、大丈夫ですか?
「やはり、そうだったか・・・」
アーサーはある程度予想していたのか、それほど驚いた様子ではなかった。
「全属性って・・・全属性ですよね」
カインは混乱していたのか、同じ言葉を繰り返していた。
「全属性、つまり、炎、氷、嵐、地、聖・・・そして闇属性の全てが使えるということです」
「そんなことがあるのですか?」
「はじめてに決まっているでしょう。私もこう見えて驚いているのですから」
カインから見たゼイン神官長は、特に驚いた様子もないように見えたが、本人はかなり衝撃を受けてた。
「カイン様も闇属性が使えるのですね・・・」
「カイン様も?」
「そうか、カインには言っていなかったな。ゼイン一族は人族にも関わらず、闇属性の魔法が使える・・・いや、闇属性しか使えない」
「人族にも闇属性を使える人がいたのですね。神官長といったら、聖属性をイメージしますが、もしかして属性鑑定も闇属性の魔法だったりするのですか?」
「その通りですよ。カイン様」
ゼイン神官長は笑顔で答えていたが、カインから見ると無理して笑顔を作っているように見えた。
「ゼイン神官長、失礼かもしれませんが、無理して笑っていませんか?」
「カイン、何てことを言うんだ。申し訳ございません。ゼイン神官長」
一瞬眉間にしわを寄せたゼイン神官長だったが、口に手を当て、笑い出した。
「さすがカイン様ですね。そうですね。カイン様も知っていると思いますが、闇属性は魔族しか持たない属性です。人族、いえ、他種族でも持つ者はまずいないでしょう」
「では、なぜゼイン神官長は闇属性なのですか?」
「カイン、それ以上は」
「いいんですよ、アーサー様。カイン様は私と同じ闇属性持ちですから・・・カイン様はゼイン一族がなぜ闇属性持ちだと思われますか?」
「そうですね。単純に考えれば、人族と魔族の間に子ができたのが、ゼイン一族ということでしょうか?僕の父親も魔王ベザレルですし」
「さすがカイン様ですね。その通りです。実は・・・ん?えっ?魔王ベザレル?」
「おい、カイン」
アーサーは頭を抱えながら、呆れた顔をしていた。
「もしかして言ったらだめでしたか?同じ闇属性同士なので、言っても問題ないかと思いました」
「もう言ったからには仕方がないな・・・ゼイン神官長、この子は私の実の子ではないのです。魔王ベザレルの子なのです」
「魔族の子だとは思っていましたが・・・まさか魔王ベザレルの子だとは・・・カイン様の母親は?」
「それがわからないのです。ゼイン神官長でもわからないのでしょうか?」
「見てみましょうか」
「そんなこともできるのですか?」
ゼイン神官長の鑑定魔法は先祖を調べることもできる。
ゼイン神官長はカインの頭に触れ、鑑定をしようとしたが、手が跳ね返された。
「まさか跳ね返されるとは・・・アーサー様、どうやら、カイン様は私以上に稀有な存在みたいです」
同じ境遇の者があらわれたからか、自分よりすごい人物が現れたからか、ゼイン神官長はうれしそうに目を輝かせていた。
「私の話がまだでしたね」
ゼイン神官長は吹っ切れたようにゼイン一族のはじまりについて語ってくれた。
その昔、エスメ・ゼインという一人の少女がグローリー教会で兄である神官長ジョエル・ゼインの補佐として働いた。当時のグローリー教会はただの教会で属性鑑定なども行われていなかった。
ジョエルが王宮から呼び出され、ジョエルの代わりに教会を管理していた日の夜、礼拝堂から荒々しい息遣いが聞こえてきた。
恐怖を感じながらも責任感の強いエスメはこん棒を持ち、礼拝堂に向かう階段を下りていった。
月明かりしかない礼拝堂でエスメは思い切りこん棒を振り上げた。
「助・・・助けて・・・くれ」
振り上げたこん棒を下ろし、蝋燭で声の持ち主を確認した。
「大丈夫ですか!」
目の前には全身血だらけになった二十ぐらいの青年の姿があった。助けようとして近寄ったが、青年と目があった瞬間、たじろいでしまった。
(赤い瞳・・・魔族・・・)
その特徴的な目は明らかに魔族である印だった。
「助けて・・・」
魔族の青年はそのまま意識を失った。
エスメは魔族とはいえ、意識を失い危険な状態な青年を見捨てることができず、礼拝堂の中にある隠し部屋まで引きずっていった。
エスメは光属性だっため、聖属性ほどではないが、多少の治療はできた。しかし、深い傷までは治すことができなかったため、持っている知識を使い、手当てした。
(これできっと大丈夫・・・)
眠気に勝てなかったエスメは魔族の青年の寝ているベッドに寄りかかるように眠ってしまった。
「おい、おい」
エスメは自分を起こす声が聞こえ、目が覚めた。
「お兄様、ごめんなさい。今から朝食を・・・」
(あれ?・・・お兄様はいないんだった)
ゆっくり顔を上げると、魔族の青年が怖い顔をしてエスメを見ていた。
「食べないでください」
そう言って逃げようとしたエスメだったが、魔族の青年に止められた。
「食べないよ・・・それより、ここはどこだ?」
近づくにはまだ怖かったため、エスメは遠巻きで話すことにした。
「ここは王都にある教会です」
「王都?ということは人族の領域にいるのか・・・あいつらめ」
「どうして・・・その・・・魔族の方がここにいるのですか?」
「そうだよな・・・というかよく魔族なのに助けたよな」
「私はこれでも神官長の兄の補佐をしております。たとえ魔族の方であっても・・・見捨てることはできません」
「そうか・・・ありがとう」
魔族の青年のはにかんだ笑顔を見た瞬間、エスメの心に温かい何かを感じた。




