15 どうやら僕は全属性使えるそうですが、大丈夫ですか?
アーサーもカインも身体の調子が良くなり、改めて、カインの属性鑑定に出かけることになった。
今回は国王ダタンの命で二人に護衛がつくこととなった。
馬車の中から外を見るとどこもかしこも衛兵だらけだった。
「お父様、何だか物々しいですね」
「カイン、お前は魔族に攫われたんだぞ。これぐらいの護衛は当然だ」
「そうですね。ところで、どこに行くのですか?」
「王都にあるグローリー教会に行く。そこのゼイン神官長は代々人族の属性鑑定を引き継いできた一族だ。ゼイン神官長は唯一無二の鑑定魔法を使える持ち主だ」
「すごい方なのですね」
「まぁ、すごいと言えばすごいが・・・可哀想な子でもあるよ。カインも会えばわかるさ・・・カインなら友人になれるかもしれないな」
「友人?」
アーサーはどこか遠くを見ながら、物寂しげな顔をしていた。
(何か訳アリな神官長みたいだな・・・)
アーサーの意味深な言葉が気になりながらも、やっと自分の属性を正確に知ることができるので、カインはワクワクしていた。
「立派な教会ですね」
王宮の次に立派な建物である教会は想像よりはるかに大きく、白と金を基調とした荘厳な建物だった。
三メートルはありそうな扉から出てきたのは、シスターの装いをしたまだ十歳くらいの少女だった。
「デイヴィス公爵家のアーサー・デイヴィスと息子のカイン・デイヴィスだ」
「ゼイン神官長から聞いております。どうぞ中へお入りください」
「すごい・・・」
中に入ると一面カラフルなスタンドグラスがちりばめられており、頭上には神と思われる絵画が飾られていた。
もう少し進むと木の机があり、その上には透明なガラスの板のようなものがあった。
「ゼイン神官長をお呼びいたしますので、ここでお待ちください」
カインは大人しく周りを見渡し、観察していた。
「お父様、すごく綺麗なところですね」
「そうだな。いつ見ても感動する。これでも何千年も昔からある建物だそうだ」
「えっ、そんなに古いのですか?」
「この教会にいるのはゼイン一族と身寄りのない子供たちだ。我が国は比較的平和で浮浪者もいない。西のフェーズ、南のグレテスは良好な関係で国の中も比較的安定しているのだが、問題は東のイエッツェ国だ。今の国王に変わってから独裁国家になり、貧富の差が激しい。ここにいる子供たちのほとんどがそこから逃れたり、売られた子供たちなんだ」
「なるほど・・・」
「アベルが第一王女のダリア様の婚約者となったのも、そのせいでもあるんだ」
「どういうことですか?」
「それはな・・・」
アーサーが言いかけたところで、こちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。
「カイン、この話は帰ってからな」
「はい・・・」
カインは話の続きが気になったが、それよりも自分の属性のほうが早く知りたかった。
「アーサー・デイヴィス様とカイン・デイヴィス様ですね。カイン様は初めましてですね。私はここの神官長をしております、エルシー・ゼインと申します」
(えっ?神官長って女の人なの?)
カインが思い描いていた神官長とは違い、透き通った白い肌をし、空色の髪と瞳をした綺麗な女性だった。珍しくエルシーの美しさにカインが見とれていると、アーサーが無理やりカインの頭を下げさせた。
「カイン、ほら、挨拶」
「申し訳ございません。デイヴィス公爵家次男のカイン・デイヴィスと申します」
「よろしくお願いします。さて、早速、鑑定をしましょうか」
そう言うとゼイン神官長は小さな乗台を机の前に置いて、ガラスの板に手をかざすよう指示した。
「ではカイン様、この鑑定プレートに触れてください」
「はい」
カインは躊躇することなく、鑑定プレートに触れた。
カインが触れた瞬間、光がカインを覆った。
あまりの眩しさにアーサーもゼイン神官長も目を開けることができなかった。
(どういうこと?)
初めて起きた現象にゼイン神官長も驚きが隠せなかった。
カインが目を開けると不思議な空間にいた。まるで空の雲の上にいるような感覚だった。
「ここはどこ?どうしてこんなところに」
見渡す限り青空と雲しか見えなかった。
「カイン・・・」
「誰ですか?」
女性の声でカインの名を呼ぶ声が聞こえた。しかし、どこを見渡しても姿は見えず、声だけが聞こえていた。
「あなたは誰ですか?」
カインの名を呼ぶ声が聞こえなくなったかと思うと、後ろから抱きしめられているような温かい感触を感じた。
「後ろを振り向かないで」
抱きしめられている感覚はあるのだが、腕が見えているわけでもない。
「カイン、私はいつでもあなたのことを見守っているから、心配しないでね」
カインの目からはなぜか一筋の涙が流れていた。
(僕はなぜ泣いているのだろう・・・)
カインが目を開けると現実に戻っていた。
「お父様?」
アーサーが心配そうな顔でカインを見つめていた。
カインが上を見上げるとゼイン神官長の顔も覗き込んでいた。カインはようやくゼイン神官長に膝枕されていることに気がついた。
「申し訳ありません。ゼイン神官長・・・僕に何があったのですか?」
カインが起き上がると、アーサーはカインを抱きかかえた。
「正直なところ、私にもわかりません。父の代から見てきましたが、こんなことは初めてです。カイン様、夢のようなものを見られましたか?譫言を言っておられましたので」
「夢かどうかわかりませんが、僕は目が覚めるまで空の上のようなところにいました。そしたら、僕の名を呼ぶ女の人の声が聞こえてきて・・・」
「その声の人とお会いしたのですか?」
「いいえ。後ろから抱きしめられた感覚はあったのですが、実際に抱きしめられたわけでもありません。ただ、その女の人は最後に『カイン、私はいつでもあなたのことを見守っているから、心配しないでね』と言われて・・・それから目が覚めるとゼイン神官長の膝の上でした」
「ゼイン神官長、カインは何かあるのでしょうか?」
アーサーは心配そうな顔でゼイン神官長に尋ねたが、ゼイン神官長は笑顔で否定した。
「カイン様の身体も異常がなさそうなので、カイン様自体には何も問題はないと思います。私もわかりませんので、カイン様に起きた現象に関しては私の方でお調べいたします」
(他にもいろいろ調べる必要がありそうだしね)
アーサーはほっとした顔でカインを抱きしめた。
「それで、お父様、僕の属性はもしかしてわからなかったのですか?」
「そうかもな・・・」
「いえ、カイン様の属性はわかりましたよ・・・驚かないでくださいね。私も初めて見ましたので、驚きすぎて、逆に冷静になってしましましたから」
アーサーとカインは息を飲んだ。
「カイン様は・・・全属性使えます」
「・・・そうか」
「えっ?」
アーサーは納得したように頷き、カインは間の抜けたような声を出していた。




