13 第二王女との婚約が決まったようですが、大丈夫ですか?
「あなた、お帰りなさい。アーサーとカインの様子はどうでしたか?」
少々疲れた顔をしている国王ダタンに王妃リビアは労いの言葉をかけながら、労わっていた。
「あぁ、カインには会うことはできなかったが、アーサーはいつものアーサーだったよ・・・それにしても厄介なことになってしまったな・・・」
ダタンは頭を抱えながら、今後のカインの処遇について考えていた。
ダタンの様子からして、アイビーとカインの婚約話は話さなかったのだろうとリビアは思っていた。
「そうだ。アイビーとカインの婚約話の件だが・・・」
「難しいお話でしたよね」
「いや、余としては別に進めていい話だとは思っている。カインは何を考えているのかわからないような子だが、今の時点で上位属性の魔法を三つは使える。これほど優秀な人物にアイビーを嫁がせるのは良いことだ。それに、魔王ベザレルの子といっても、育てたのはアーサーとミディアンでカインにとっては二人が実の親同然だ。余は人を見る目はあると自負している。カインは将来、この国にとってなくてはならない、アーサーにも負けないくらいに優秀な男となるだろう。そんな子は今のうちに仲良くしておかないとな」
茶目っ気溢れる笑顔を見せながら、ダタンはリビアが抱える不安を取り除いていた。
「あなたったら・・・そしたらアーサーも承諾してくれたのかしら?」
ダタンはため息をつきながら、ため息を吐いた。
「婚約話についてアーサーに話したのだが・・・あいつが」
「国王・・・カインとアイビー第二王女との婚約のことですが・・・男爵のバシャン・グリフィスの三女のアイラについては存じていますよね?」
「あぁ、バシャンの子か。活発な女の子だったな。カインとは仲良い友人だったか」
「はい。実はまだこの話は決定ではないのですが、バシャンと私の間で・・・その・・・将来、カインとアイラを結婚させようと言っていたのですよ」
「あのバシャンめ・・・」
ダタンは顔をしかめて、悪人面のような顔をしていた。
「あくまで口約束ですので、正式に交わした約束ではないのですが・・・一応、バシャンには伝えたほうがよいかと」
「まだ正式に約束をしたわけではないのだよな」
「はい」
「なら問題ない。アーサー近々正式にカインとアイビーの婚姻について文書をかわそう。あいつに先越される前にな」
(相変わらず犬猿の仲だな・・・)
アーサーは国王ダタンとも男爵のバシャンともよい友好関係を気づいていた。
しかし、ダタンとバシャンとはいうと相性が最悪で、基本的に温厚なダタンもバシャン相手だといつもムキになって喧嘩ばかりしていた。
それを止めるのがアーサーの役割だった。
「余は帰る。アーサー、本当に無事でよかった」
ダタンが見せた笑顔は国王としてではなく、友の無事を見ることができて安心した笑顔だった。
「ありがとう・・・ダタン・・・」
この瞬間だけは、国王と勇者ではなく、スチアート学院時代のダタンとアーサーの戻っていた。
「だから、バシャンが手を打つ前に、一刻も早くアイビーとカインの婚約を決めなければ」
子供っぽい理由に苦笑しながらも、リビアは笑顔で頷いていた。
カインは眩しい朝日を感じ、目が覚めた。
カインの隣には身動きできないほどくっついて抱きついているアイラが眠っていた。
「カイン様、おはようございます。ご気分はどうですか?」
「そうだね。ちょっと暑苦しいかな」
隣で気持ちよさそうな寝顔を見ると、無理やり起こす気になれなかった。
(どうしたものか・・・)
カインが困った顔をしながら、マリーを見ていると、けたたましい足音が聞こえてきた。
(これはまずいぞ)
カインがアイラを引き離そうとした時、足音の持ち主は思い切り扉を開けて入ってきた。
「カインちゃーん!?・・・」
「お姉様・・・」
カインに抱きついて寝ているアイラを見た瞬間のレアの表情は、あのカインでさえ、顔を引きつらせるほどだった。
「アイラ・グリフィス!」
突進してくるレアをマリーがすかさず、後ろから腕を羽交い絞めにして、止めた。
「レアお嬢様、落ち着いてください」
「私のカインちゃんがー!」
騒がしいレアの声でようやくアイラも目を覚ました。
「おはよう、カイン・・・」
「おはよう、アイラ。今の状況はすこぶる最悪だよ」
アイラが振り返ると鬼の形相をしたレアが今にも飛びかかりそうだった。マリーが必死に抑えていた。




