11 魔族が僕の執事になったのですが、大丈夫ですか?
「マリー、私はアーサーのところにいるから、カインのことをよろしくね」
「はい、奥様」
カインは部屋に戻り、再びベッドに寝かせられた。
(そういえば・・・セヴァスはどうしたのかな?)
セヴァスとはそれほど多くの時間を過ごしていたわけではないが、カインの中ではすっかり家族のような大切な存在になりつつあった。
「セヴァス・・・」
「ん?カイン様、何とおっしゃいましたか?」
「いや、何も」
「では、私はハーブティーをお持ちしますね」
マリーが部屋を出た瞬間、カインは何か気配を感じた。
「何だろう・・・この感じは」
カインは窓の外を見ようと横に向きを変えた。
すると窓の前には、当たり前のようにセヴァスが立っていた。
「セヴァス?」
多少は驚いたが、相変わらずカインは冷静だった。
「さすがカイン坊ちゃまですね。私が突然現れても声一つ上げないとは」
「どうしてセヴァスがここにいるのですか?」
「実は私は定期的にカイン坊ちゃまの様子を見に来てたのです。何度かカイン坊ちゃまには気づかれそうになりましたが」
「あぁ・・・そういえば」
カインには思い当たる節があった。何度か誰かに見られているような奇妙な視線を感じることがあった。
その度に周りを見渡したが、誰もいなかったため、気のせいだと思い込んでいた。
「あの感じていた視線はセヴァスだったのですね」
「はい、それで、ようやくカイン坊ちゃまと再会することができましたので、わたくしもカイン坊ちゃまをお守りしようと」
「もしかしてセヴァスも僕を魔王にしようと考えているのですか?」
「いえ、わたくしの使命はカイン坊ちゃまの成長を見守り、命に代えてでもお守りすることです。魔王様が最後にわたくしに命じたことですので」
セヴァスの言葉を聞いたカインは急に実の父のことが恋しくなった。
「・・・セヴァス・・・お父様は僕のことを大事に思っていましたか?」
「それはもう・・・いつもは何を考えているのかわからないほど無表情の魔王様でしたが、カイン様を見る目は愛情にあふれた父親の目をしていましたよ」
「そうですか・・・」
(やはり魔王様にそくっりですね)
どんな感情を抱いているのかわからないカインの横顔は魔王ベザレルにそっくりだった。
「セヴァスに聞きたいことがあったのですが、魔王ベザレルはなぜ・・・」
ガチャンッ
音の先にはハーブティーを持ってきたマリーだった。セヴァスを見て驚き、思わずティーカップを落として割ってしまっていた。
「あ・・・あ・・・」
マリーが叫びそうになった瞬間、気づけばセヴァスがマリーの口を塞いでいた。
マリーは恐怖に怯え、震えていた。マリーはセヴァスが魔族であることに気づいていた。
「マリー、このおじいさんは魔族ですが僕の味方です。マリー、声を上げないでくださいね」
マリーは目に涙を浮かべながら頷いた。
「セヴァス、マリーを放してやってください」
マリーから離れたセヴァスは、すでにカインの側にいた。
「カイン様・・・この執事も方は何者なのですか?」
「このおじいさんはセヴァス。僕の本当の父魔王ベザレルの側近だった方です」
「魔王ベザレルの!?なぜこんなところにいるのですか?まさかカイン様を」
「違うよ。どうやら僕のお世話をしてくれるらしい」
「カイン様のお世話を?」
それを聞いたマリーは不満そうな顔をしていた。
「しばらくはお父様とお母様には黙っててほしいと・・・」
カインはマリーにセヴァスのことを黙ってほしいとお願いしようとしていたが、いきなりマリーがカインに抱きつき、セヴァスを威嚇するように睨んでいた。
「カイン様のお世話をするのはこの私です」
(なぜマリーはむきになっているのだろう?)
「マリー、えっと・・・セヴァスは僕に危険が及びそうになった時とか、今回みたいに連れ去られそうになった時とかに守ってもらうというか・・・だから、普段の僕のお世話はマリーにしてもらうから」
「本当ですか・・・?」
マリーは少し疑うような目でカインを見ていた。
「そうですよね?セヴァス?」
カインは話を合わせるようにセヴァスに目で合図をしていた。
「カイン坊ちゃまのおっしゃる通りでございます」
ようやく機嫌が戻ったマリーはもう一度ハーブティーを入れてくると言って、部屋を出て行った。
「カイン坊ちゃまはそういうことも魔王様に似ているのですね」
「そういうところって?」
「女性の方々におモテになるということです」
「別にマリーはそういうのではないですよ。僕を弟のように思っているだけです。十歳も年上ですし」
「カイン坊ちゃまはそちらの方面はまだまだ子供ですね」
「???」
カインはセヴァスの言っている意味がわからなかった。
カインはマリーの持ってきたハーブティーを飲んで眠りにつこうとしていた。
ドンドンドンドン
激しい足音がカインの部屋に近づいてきた。
「セヴァス、隠れて!」
「はい?」
マリーも何がこちらに向かっているのかわかっているようで、カインと同じよう隠れるようにとジェスチャーしていた。
「えー!?私の影に!?」
セヴァスはマリーの影に隠れて、この後の展開を見守ることにした。
「カインー!」
部屋の扉を豪快に開け、カインに飛びついてきたのはカインと同じくらいの年の女の子だった。
「よかったー、カインが無事で。心配させないでよ」
「心配させてごめんな、アイラ」
カインの胸に飛び込んできたのはカインの幼馴染のアイラだった。




