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かつての師匠との再会

「ハハハハハ!!!いやー、ルミナ嬢がこの辺りに住んでいるとは聞いていたので行ってみたらちょうどいいタイミングだったわけですな!」


先程、近所で会った男がすっかり俺達の集合場所となったリヤドの部屋で大声で楽しそうに笑いながら言った。

恐らく、ルミナの知り合いというのは何となくルミナの反応を見ていれば分かる。

何しろ、ルミナがこれ以上にないくらいに嬉しそうな顔をしているからだ。

まあ、それはいい。

それはいいのだ。問題は…。


「あの、本当にすみません。声のトーンをもう少しだけ抑えてください。お願いします…。」


サタンが普段絶対に使わなさそうな敬語で男に言う。

そう、この男。声がデカいのだ。

それもただデカいだけではない。

腹の底から声を出しているような感じだから耳に響くのだ。

デカい声なら普段からサタン達が騒いでいるので聞き慣れているつもりだったが、まさかそれを上回る人間が現れるとは思わなかった。

俺達は全員、あまりの声のデカさに耳を塞いで男の話を聞いていた。

正直、耳を塞いでいても十分に聞こえてくるからどんな声量なんだよと言いたい。


「…もうこれ、新手の騒音公害でしょ。」


俺の隣に座っていたクレアがポツリと言う。

そういえば、ルミナの知り合いだからクレアも知っているのかと思いきや全く知らなさそうな感じだ。

それは、サタンとルル、リヤドも同様だった。

リヤドはともかくとして、サタンとルルにも言っていないような知り合いがいるんだなと意外だった。


「もう、私達も対抗して大音量で音楽とか流しますか?」


同じく耳を塞いでいたルシフェルがクレアに言う。

いや、リヤドの部屋でそれはやめろと言いたい。

仮にも共同住宅のマンションなのだ。

下手すると、この男の声だけでもだいぶ何事かと思われていそうなのに、それに加えて大音量で音楽を流して対抗しようものなら近所迷惑で通報されそうだ。


「で、結局誰なんだこの男は。本当に耳が壊れそうだから声のトーンを落としてくれるようにお前から言ってくれ。」


サタンが軽く自身の頭を叩きながら、男の隣に立っていたルミナに言う。


「あっ、そうですね。確かに、ユウリ殿の声は普通の方には大きすぎるかもしれませんから。あの、もう少し抑えていただいても大丈夫ですよ。」


ルミナがユウリと呼んだ男に言う。

男はそれを聞くと、再び俺達の方を見た。


「これはすまない!いやー、昔から声はデカい方でな。あっ、申し遅れた。私、ユウリ・フェルナンデスと言います!ルミナ嬢が幼い頃にランスフォード家に仕えていた者です!」


昭和時代の野球部でもここまで堂々とした自己紹介をしないだろう、と言いたくなるような自己紹介だった。

これでも、声のトーンは抑えられている気はする。

気はするが、それでもうるさい。

全員がウンザリとした顔を浮かべながら耳を押さえていた。

リヤドに至ってはすでに目まで閉じていた。


「ルミナさん、耳が痛くなってきたのであなたの方からこの方の説明してもらえませんか?」


ルルが我慢の限界とばかりにルミナに言う。

席の並び的に、立っているルミナとユウリという男。その一番前の席にサタンとその向かいにルルという並びだ。

サタンとルルが直でこの大声を聞かされていて、俺達以上に疲れ切った顔をしていた。


「はい、分かりました。こちらの方はユウリ・フェルナンデス殿。私が4歳くらいまでの間、ランスフォード家に仕えていた方です。あと、私の剣術を教えてくれた方なんですよ。簡単に言えば、師匠みたいな感じです。」


恥ずかしそうにルミナが言う。

ルミナの師匠。どこかで聞いたことのあるフレーズだなと思った。

というか、先程の買い物の帰り道でそんな話をしていたような気がする。


「例のペンダントの人なの?」


俺はルルの胸に付けられているペンダントを見ながら尋ねる。


「はい、そうです!色々あって、もう会えないと思っていたのでまさかこんな所で再会できるとは思っていませんでした!」


嬉しそうにルミナはそう言うと、ユウリの方を振り向いた。


「いやいや、ここまで大変でしたよ!数10年間ほど、世界中の色々な場所を周っていましたからな!」


ユウリも懐かしむような感じでルミナに言う。

うん、分かったからもう少し声のトーンを抑えて欲しい。

ルミナ以外の全員が同じ気持ちだったのか、耳を押さえながら疲れ切った顔がさらに濃くなっていた。


「ユウリ殿。声のトーン…。」


ルミナが俺達の表情を見て、ユウリに言う。


「おー、それはすまない!いやいや、癖でしてな。これくらいの大きさなら大丈夫ですかな?」


「うん、出来たらルミナ以外にはそれくらいのトーンで頼む。本当に鼓膜が破れるかと思っていたから。」


ようやく、常人レベルの声の大きさになりサタンが耳を塞いでいた手を離した。


「というか、師匠って本当にいたんだね。お姉ちゃんの妄想が生んだ空想上の良き者かと思ってた。」


クレアが呆れたような顔で言う。

空想上の生き物って…。

流石にそれは言いすぎなのでは、と俺は思った。


「そうですね。私も先程、それを聞いた時は同じことを思っていましたから。むしろ、本当の話だったことに安心しましたよ。」


ルルまでもが辛辣な言葉をルミナに言う。


「信じていなかったんですか!というか、ルル様はさておきクレア。あなたは知っているはずでしょう!」


ルミナが涙目でクレアに言う。

クレアは首をすくめて、ルミナに言う。


「私の生まれる前にあった事件なんて軽く聞いただけで興味なかったからね。私は今を生きるナウいヤングなの。過去は顧みないの。」


ナウいヤングって、今時の女子高生が言わないだろ。いや、この子の場合だと女子小学生か。


「そのセリフって死語じゃないの?」


アリスがポツリとクレアに言う。

クレアはうるさい、と言うとアリスの頭を軽くはたく。

アリスが痛い、と小声で叫んで涙目になっていた。そして、それをルシフェルがよしよしと頭を撫でて慰めていた。


「なるほど、この方が妹君なんですな!おっと、失礼声が大きくなりすぎました。」


癖が出てしまったのか、鼓膜に響くような大声でユウリが言う。

その後に、すぐに謝って声のトーンを落としたが急に大声を出されるとビックリするのでやめて欲しい。


「クレアのことを知っているんですか?ユウリ殿がいなくなった時にはまだ生まれていなかったはずですが…?」


「いやいや、ここに来る前にランスフォード家に寄りましてな。その時に、ハク様とお会いしてある程度の話は聞かせてもらっていますよ。何やら、使える主も出来たと聞きましたよ。」


ユウリがルミナに答える。

その言葉を聞くと、ルミナの顔がパアッと明るくなる。


「そうなんです!あっ、この方です!剣様、という方なんですよ。」


ルミナが嬉しそうに俺を見ると、ユウリに言う。

いや、別に俺自身はこの子の主になるなんて言っていないんだけど。


「初めまして!先程も聞いたと思いますが、ユウリ・フェルナンデスと言います。」


「あっ、初めまして。あと、もう少し声のトーン抑えてもらって大丈夫ですよ。多分、だいぶセーブしてるつもりなんでしょうけどそれでもうるさいので…。」


俺はユウリに言う。


「これはすまない。どうしても、昔からの癖というのは直らなくてですな。気を付けないといけませんな!」


そういうと、ハハハと高らかに笑った。

何で、こんな明るい知り合いがいてルミナ自身はコミュ障になったんだよとツッコミたいがどうやら、それはサタンとルルの幼馴染コンビも同じことを思っていたらしい。


「何でルミナの知り合いにこんな陽キャの塊みたいな奴がいるのかとか色々聞きたいことはあるが。それよりも、4歳の頃までと言っていたがそれ以降はどこで何をしていたのだ?」


サタンが恐らくこの場にいる全員が気になっていることを尋ねた。

そうだ。ルミナも言っていたが、亡くなっていたはずではないのか。

俺は、買い物の帰り道での会話を思い出した。


「そうですよ!あの後、どうなったのですか?私も気になっていました。」


ルミナもユウリに尋ねる。


「そういえば、その話をしていませんでしたな。もしかしたら、ここにいる方も聞いている人もいるかもしれませんが数10年前に起きたランスフォード家での転送事故という事件がありましてな。それに巻き込まれてしまったのですよ。」


恥ずかしそうに頭を掻きながらユウリが言う。

転送事故?何だろうか。聞いたこともない話だ。


「ランスフォード家で私が生まれる前にあった事故だよ。突然、ランスフォード家の庭に転移魔法陣が出現してそれが暴発したって事件。私も聞いただけだからいまいち覚えてないんだけど、1人だけそれに巻き込まれた人がいたって話らしいよ。多分、この人がその人なんじゃないかな?」


クレアが俺の耳元に顔を近づけて、教えてくれる。


「はい、私が4歳の時の事件ですね。その際に、私が巻き込まれかけたのをユウリ殿が庇って自身が代わりに巻き込まれてしまったのです。でも、その後どうやってここまで?」


ルミナが不思議そうな顔をしながら尋ねる。

しかし、表情のどこかには当時のことを思い出したからか悲痛に満ちていた。


「いやー、それがですな。全く見たこともないような場所に転送されてしまいまして。転送の衝撃からか記憶すらも忘れてしまっていましてな。」


ガハハハと楽しそうにユウリが言った。

いや、記憶喪失とか大問題だろう。

そんな俺の表情を気にせずにユウリは話を続ける。


「で、記憶もないのでそこの現地民と仲良くなりましてな。一緒に5年以上一緒に過ごしてまして。その後、この腕を買われまして要人警護など色々と世界中を飛び回っていたのですよ!」


「そんなことが…。でも、急にどうして日本に?」


「任務の都合でイギリスに行くことがありまして。その拍子に記憶が戻ったんですよ!こんなことしていられない、と任務を終わらせてそのままランスフォード家に駆け込んだらルミナ嬢が今は日本にいると聞きまして。こうして、参った次第ですよ!」


そう言うと、ユウリは再び大声で笑った。

声のトーンが元に戻っている…。ルミナ以外の全員が再び耳を塞いでいた。

というか、何でルミナはこの声が平気なんだよと言いたい。


「そうだったんですね!どんな事情があったとはいえ、また会えてとても嬉しいです!もしよかったら、1週間ほど日本に滞在とかどうですか?色々と話をしたいこともありますので!」


ルミナが目をキラキラさせながら、ユウリに言っていた。

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