第6話 冒険者ギルドってガラ悪くね?
ザンブレック王国の冒険者ギルド本部…
事実上フェラス大陸最大の冒険者ギルドであり、大陸の冒険者の本部である。
この世界の冒険者ギルドは各大陸で独立している、他の大陸には他の冒険者組織が存在しており全て別組織だ
十年前に発見されたカームと呼ばれる大陸を隔てる境界障壁を超える方法が見つかって
各大陸との交易も始まってからというもの、多少なりとも異種族が大陸を渡って来るようになった。
東の大陸フェラスに棲む「人間」
西の大陸ルフィスに棲む「妖精」
南の大陸アリウムに棲む「獣人」
北の大陸レイノスに棲む「魔人」
しかし、大陸を渡って来る者は純粋な冒険者は殆どいない…
もっと言うと脛に傷の有る者―――
つまり、国を追われた、
もしくは逃げ出した咎人が大半を占める。
だから魔物を討伐する以外にも冒険者ギルドには、異種族の罪人の捕縛…もしくは討伐の依頼も出回っている
―――だから
「ぎゃははははは」「だっせぇ――犬野郎如きに遅れを取るなんてぇ」
1年前から冒険者ギルドの様子は大きく変わった。
純粋に住民や旅人の為、危険な魔物討伐を生業とする冒険者…ではなく
亜人狩りと呼ばれる、罪人狩のハンターが数多く登録するようになっていた。
咎人である亜人たちに権利は無い、
討伐依頼が出た時点で生殺与奪はハンターの裁量にゆだねられる
手段は問わない
暗殺毒殺、色仕掛け…
魔物相手では通用しなかった職業の者も、いまなら冒険者ギルドに登録出来るのだ
その為、魔王が討伐されて以降は、ここ冒険者ギルドにはガラの悪い連中が多く入り浸る荒れた場所へと変貌していた。
ピュゥ―――
「ヒヒヒヒ」「いいねぇ―――」「そそる体してやがる」
レイアさんを下品な目で見つめる野蛮そうな男共…
そんな視線など気にも留めず、俺に腕を絡め頭を肩に預け微笑むレイアさん
「本日は、どの様なご用件で?」
目付きのいやらしいギルド受付の男性も、チラチラとレイアさんの胸を見ている…
はぁ―――
溜息をつく俺の横で、レイアさんは胸の谷間からカードを取り出した。
その谷間をだらしなくガン見している受付の男性の前にそのカードを差し出す。
「……!?こ、これは!た、大変失礼いたしました!ど、どうぞギルドマスターの所にご案内します!」
カードを見て顔を青くした受付の男性は、腰を屈めながらレイアさんにヘコヘコ頭を下げ受付の奥へと案内する。
「ノームちゃん好きな飲み物でも飲みながらそこのテーブルで待っててね♡」
レイアさんは受付の男性の後をついて奥の部屋へと入って行った。
―――「じゃぁこの、カルーアミルク2つで」
言われた通りテーブルに付くと、ウェイトレスの女性に飲み物を頼んだ
バン!
急に机が叩かれ、ビックリしてそちらへ顔を向けた。
すると女性が飲み物を用意するため、キッチンへと入っていたったのを見計らっていたのか、先ほどレイアさんへ下品な目を向けていた男性らが俺のテーブルまでやって来た。
「ようボクちゃん、随分といい女を連れて来てんじゃねぇか?えぇ?」
「―――その下り、もうさっき終わったんですが?もうこの展開、皆お腹一杯ですよ?」
「あぁ?何をわけわからねぇ事を言ってんだ?あぁ?テメェ俺様を戦斧のオッジだと知っての舐めた態度か?」
―――いや、全く知らない…困った
「いえ、申し訳ございません僕もここへ来たのは1年ぶりで」
ドカッ
オッジさんは俺の席の前に座るとテーブルに肘をつき俺の顔を睨む
「ごめんなさい、僕は知らない人と一緒にお茶する趣味は無いんですが…」
先程のレイアさんへの下品な言葉に俺も多少なりと嫌悪感を覚えていたので言い方が多少キツクなってしまう
「あぁ?テメェはここでのマナーも知らねぇのか?俺が先に名乗ってやったのに自分は名乗りもしねぇのか?」
「あぁ…僕の名はノーム、職は農夫です」
俺の言葉に驚くオッジとその仲間たち…
「プッ、ギャハハハ、これは良い、なんだなんだ?農夫様が冒険者ギルドになんの用事だ?まさかクワで魔物や亜人を討伐すのか?」
ギャハハハ
オッジの言葉に一緒になって笑う仲間たち
「う――ん、まぁそいう事もしますね、必要に迫られたら」
「プッ、アハハハハハ、そうか、そうか、なるほどなるほど!!」
バンバン
テーブルを叩き爆笑するオッジ…どうやら知らぬ間に彼の笑いのツボを刺激してしまったみたいだ
「?何が面白いのか分かりませんが、喜んでもらえたならもう良いですか?そろそろ連れが戻って来るので、その席を―――」
「あぁ、テメェが帰れよ」
「え?」
「あの女は今夜俺が楽しませてもらうからよ、農夫様はとっと畑仕事に戻りな」
「………」
「あの顔であの色気とあの身体だ、きっとどこぞの高級娼館の女だろ?きっと夜もいい声で鳴いてくれるんだろうなぁ?たまんねぇぜ…ギャハハハ」
「おいおい、オッジお前の後からじゃ使い物にならねぇだろうが!」
「そうだそうだ、先に俺らに相手させろ!」
――目の前で、レイアさんの事を侮辱し物みたいに扱い馬鹿にするこの連中に、腹の底から怒りがこみ上げてくる
「おい…その言葉を今すぐ取り消せ―――」
怒りに震えるのと同時に首から下げている不思議な石がついた首飾りの石の部分が熱くなっていく感じがした。
―――そして、その怒りに徐々に意識がもっていかれる…
「あぁ?たかが農夫風情が斧戦士である俺に、喧嘩売ってんのか?えぇ?」
パキパキパキ…
怒りが頂点に達しようとした時、俺の座っている木製のテーブルが端から大理石へと変わっていく
そして、それは徐々に広がり…
パキパキ…
「なっ!?なんじゃこりゃ!」
テーブルに肘をついていたオッジの右腕も石化していく
慌ててテーブルから立ち上がったオッジの右腕は殆ど灰色の石に変化してしまっていた
「お、おいオッジどうしちまったんだ!?」「そ、その腕いったい!?」「お、おい見ろテーブルが!?」
「――――レイアさんへの侮辱…取り消せ…」
「ヒッ!?」「お、おいオッジ!?」「ま、待てよ!」
オッジらは恐れをなし冒険者ギルドから逃げ出した。
「ノームちゃん!」
ギュっ―――
次の瞬間、レイアさんの豊満な胸に頭を抱かれる
「大地の精霊王ノーフェラスよ…汝の第二妃たる火の精霊王フレイノスの名において、その御力を収めたまえ…」
そっとノームの首飾りの石がある胸のあたりに右手を添えると真紅の魔法陣がノームの胸に出現しクルクルと回転する。
「?…あれ?レイアさん?」
「あぁ―――良かったぁ――ノームちゃんもう心配させちゃダメじゃない…チュッ♡」
??何故かレイアさんから頬にキスされちゃった…
「お、お、お、お待たせしました……」
その時、カチャカチャとトレーを震わせながら先ほどオーダーを取ってくれたウエイトレスの女の人がやって来た
「あっ、レイアさんカルーアミルクを注文しときましたよ!【ニコッ】」
「きゃん♡ありがとノームちゃん」
嬉しそうにミルクを受けったレイアさんが向かいの席に座る
―――ん?このテーブルって大理石だったっけ?
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