次から次へ
ドモドが地面にサーベル型の呪具を突き刺した途端、床が揺れた。
「この呪具の名は『造丸』。刺した物の形状を変えることができる代物でな」
彼がそう説明すると、揺れていた床の一部がだんだん盛り上がっていき、それはついに巨大な右手となった。
「おいおい、ウソだろ。こりゃ金喰蟲じゃ歯が立たないぜ」
思わず後ずさりをするヤルバー。彼が見つめる先の巨手は天井まで届くかというところまで伸び、そして彼を潰しに振り下ろされる。
「くッ!」
ドガァァッ
凄まじい轟音と共に舞い上がる砂ぼこり。それをかき分けてヤルバーが出てきた。
「こりゃ、次よけられるか分からないぜ…」
今回は間一髪、巨手の人差し指と中指の間にいたおかげで助かった彼だがそんなラッキーは二度は起こらない。それは本人が一番分かっていた。
「どうした。逃げねば押し潰されるぞ?」
ドモドが造丸を握る手に力を入れる。するとまた別の床が盛り上がり、みるみるうちに巨大な左手が。
「二本は、マズいかなぁ〜!」
敵に背を向け、ヤルバーは徐ろに走り出した。恥も外聞も捨て、彼は逃げまわった。それほどに造丸の能力は恐ろしいものなのだった。
巨手がヤルバーを払い飛ばそうとすれば上へ跳び、叩き潰そうとすれば転がり、つまみあげようとすればその指に切りかかりながら、彼は逃げ続けた。
そうこうしているうちに十分ほどが経ったのだろうか。なかなか決着のつかない戦いに痺れを切らしたドモドは次の行動へ移ろうとする。
「貴公はしぶといな。なれば、我が家系に伝わる一振りを見せてしんぜよう」
そう言ったドモドは再び仲間から呪具を受け取った。それは反りのない日本刀型の呪具で、頭には漆黒の紐が付いている。
するとドモドはいきなりその呪具で自分の左腕に切り傷を付けて叫んだ。
「我が血を吸いて増えよ、『繁丸』!」
白煙と破裂音が同時に起こる。煙が晴れて出てきたのはドモドを円で囲むようにして並んで浮かぶ二十本の繁丸だった。
これにヤルバーは驚くが、見透かされないように平静を装って質問を投げかける。
「アンタのソレはどれくらい増やせるのさ。まさか千本なんてできやしないよなぁ〜?」
自分の家に代々伝わる呪具。当然絶対の自信があるドモドはこう答えるしかない。
「できぬはずがなかろう。よし、今から見せてやる」
再び白煙が出て、そして晴れた。
覚悟はしていたつもりのヤルバーだったがその光景を見た瞬間、自分の覚悟など有って無いようなものだと自覚することに。
十本から八十本単位で繁丸が円を作り、刀でできた大小様々な円盤がプカプカと宙に遊んでいる様子は美しくもあり、恐ろしくもあった。
千本の刀を一振りの剣で相手するという絶望的な状況。きっと誰もがヤルバーの敗北を考えるだろう。
しかしこの時、例の如くヤルバーには密かな作戦があったのだった。




