コレクター
「次は拙者、ドモドが務めよう」
ヤルバーの2人目の相手に名乗り出たのはもみあげが異様に長い男で、服装は袈裟のようなもの1枚しか着ていないというなかなかに強烈なキャラクターである。
「こんなヤツと戦うのかよ〜」
嫌悪感を隠そうとしないヤルバーにドモドが尋ねる。
「拙者、剣の形をした呪具と聞くと居ても立ってもいられなくなる質でな。貴公さえ良ければその呪具、貰い受けることは可能かな?」
コレクター気質をこじらせたような者は、断られても欲求のままに行動してしまう節があり、今回はその良い例になりそうだった。
しかしヤルバーはここで、こういった者に一番言ってはいけないセリフを吐いてしまう。
「あ、いやいや。アンタが欲しがるような立派な物じゃないからさ!」
実はこのドモドは厄介な人物で、一度相手の持っている物が価値ある物だと思い込んだら、反論されればされただけ思い込みが確信に変わってゆき、しまいには自分の目で見るまで誰の言葉も信じようとしなくなるという性質を持っていた。
なのでこんなことを言われた日には、たいそう立派なものなのだろうという期待だけが膨らんでいき、ますます彼の執着心を掻き立てる結果に。
「名品を自ら手放す馬鹿者はいない、ということか。相分かった!」
ならば力尽くで奪うまで、と腰にぶら下がった日本刀の柄に手をかけるドモド。
「これまで拙者が狩った剣型の呪具は九十九振り。ただその中で拙者が使えるのは十数振りしかない…。貴公の呪具が拙者の波長に合うと良いが」
「ま、欲しいものは手に入れるに限るわな」
ヤルバーも金喰蟲を構える。先の戦いから鞘に納めていないため、刃渡りは変わらず20センチほどだ。
「では、参るッ!」
ドモドの掛け声とともに戦いが始まった。
まず初めにヤルバーが距離を詰める。そしてドモドまであと5、6歩というところで跳び上がり、金喰蟲を振り下ろす態勢に。
と、そのとき。
ピカッ
フラッシュバンのようなまばゆい閃光がドモドの手元から拡散し、ヤルバーは思わず目を閉じてしまう。
ズシャッ
ドモドの凶刃によってわき腹を切り裂かれたヤルバーが無惨にも地面に崩れ落ちる。
「ぐあぁっ!」
負傷した部分を左手で押さえながら必死に立とうとするも上手く力が入らない。そんなヤルバーにドモドが言った。
「最初からソレでは奪い取る醍醐味が…」
「安心しなって。まだ、終わりゃしねえさ」
プルプルと脚が震えつつもなんとか立ち上がったヤルバー。連戦の疲労も抜けきらない身体でここまで戦えたことが異常なほどだ。
その上まだ諦めていないのだからこの男、ヤルバーには底知れぬ何かが秘められていると思えてならない。
ドモドもそう感じたのか、彼の言葉を聞いて表情を変えた。
「では貴公の心意気に敬意を表し、全身全霊で向かわせてもらうとしよう」
そう言うと、ドモドは閃光を放つ日本刀型の呪具を放り、仲間の騎士から次の呪具を受け取った。今度の呪具はサーベル型で、特に変わった装飾もない。
「剣、好きだね〜」
ヤルバーがおちょくると、サーベルを引き抜いたドモドは、「刃を見ていると、心が躍りはしまいか?」と笑った。
これにヤルバーはフッと笑みを浮かべて、「そうかな。オレは女のコ見てる方が心躍るけど」と答える。
「ふむ。貴公の呪具も興味深いが、貴公自身にも俄然興味が湧いてきた」
ドモドはそう言うと、手に持ったサーベルを逆手に持ち、思いきり地面に突き刺した。
「これで、拙者の勝利だ…!」




