対三等星、幕開け
フォルタール大聖堂の第一階層(地上階)で大勢の星無し騎士との激戦を繰り広げ、トラブルもありながら無事に勝利を収めた疾斗とヤルバーは隠し扉の先の螺旋階段を降りていた。
地下は円筒状にくり抜かれていて、少し下には地面が広がっている。
「見ろよ、ハヤト。オレたちのことが待ちきれなくてウズウズしてるぜ」
ヤルバーが向いている方を確かめると、10人の騎士たちが広間の中心で固まって試合をしていた。相当暇だったのだろう。
騎士たちの顔が視認できる距離まで来た疾斗たちは揃って彼らの胸元に目をやる。そこには星が3つ。どうやらここ、第二階層を守るのは三等星の仕事らしい。
この流れだと第三階層は二等星、第四階層は一等星かな、と心で見当をつける疾斗。
そんな疾斗を置いてヤルバーが三等星たちに、「さあ、やろうか」と勝負を仕掛ける。
この言葉に、疾斗たちに正対するように横並びになる10人の騎士たち。その中から代表らしき人物がひとり、赤黒い雲に乗って出てきた。
疾斗とヤルバーはその人物の顔を見るなり、「あっ!」と声を上げる。
「お前は商都ヴェミリの訓練所にいた三等星の……?」
肝心の名前が出てこない2人にその男は地団駄もとい雲団駄を踏んで、「ショアレらてぇ。おめさんら、名前覚えるの苦手らかね?」と言った。
ショアレは初めて疾斗たちと出会ったときと同じ緑色のトレンチコートを羽織っている。容姿も変わるわけがなく、髪は後ろで束ねられ、目はつり目、鼻は小さい。
それはともかく、と彼は本題に移った。
「おめさんら、上で星無しと散々戦って疲れたろぅすけ、そっちに美味しい提案してやるこて」
どうやら疾斗たちに何かしらのハンデをあげようと言っているらしい。
「美味しい提案、ね。ここは聞かない手はないだろ〜、ハヤト?」
ああ、とうなづく疾斗だが、内心では少し怪しいとも思っている様子だ。
ここでてっきりショアレがハンデの内容を説明するのかと思いきや、「長々としゃべくるのは苦手らすけ」と言って別の者を指名する。
彼に代わって前に出たのはリピネッタと名乗るドレス姿の女性だった。
中世ヨーロッパの貴族を思わせるその出で立ちに違和感を抱きながらも相手が話し始めるのをじっと待つ疾斗。
しばらくしてやっと口を開いたかと思うと、「…以上ですわ」
「は?」
リピネッタは自分の話が一切通じていないことに気づき、たじろぐ。
「あら、いけない。また私の悪い癖が出てしまいましたわ。頭の中で思っただけで話したつもりになってしまいますの…」
またおかしなヤツが増えちまった、と疾斗は大袈裟にうなだれた。
「今度はちゃんとお話ししますわ。ショアレさんの言い方ですとお情けのように思われるかもしれませんが、これは三等星の誇りのための提案ですの」
「いいから、どんな提案だ?」
「一対一、ですわ。あなた方とこちらからひとりずつ選んで決闘をするんですの。いかがかしら?」
10人で2人を倒しても、疾斗たちは指名手配犯なのだから三等星の名誉は上がる一方だと思うが、どうやらそれでは納得がいかないらしい。
そして疾斗は、自分にとってこの上ないチャンスをみすみす見逃すような人物ではなかった。
「よし。その提案、受けた」
こうして疾斗とヤルバーは三等星10人と決闘で戦うことになったのであった。




