残り116人
キイィン キイィン
赤いマントを羽織った下に、麻布のように目が粗い生地でできた服を着た2人組に対して、それぞれ風斬、金喰蟲を振るって戦う疾斗とヤルバー。
フォルタール大聖堂の前の広場で繰り広げられている斬り合いは疾斗たちの優勢となるかに思われた。
なにせ相手は呪具を持たない星無しの騎士なのだから。
しかし見習いといえども、相手は剣術の基本をしっかりと踏まえた太刀筋や間合いを心得ているので、決着はいよいよどうなるか分からなくなってきた、というのが今の状況であった。
「よく考えたらよ、」
相手の振り下ろした長剣を向かって左に捌きながら話し始めるヤルバー。
「急に刃が出るだけなんだよな、この剣…」
今度は突きを繰り出してきた相手の懐に潜り込み、肘をお見舞いする。
鳩尾にもろに攻撃を受けたその騎士はよろめきながら後退りをした。
この隙をヤルバーは見逃さない。
急激に相手に詰め寄ったかと思ったら、相手の目線の高さで金喰蟲を真横に振った。
相手は当然自分の剣でそれを受けるが、その瞬間下半身に生じる緩みを狙ったヤルバーが足を払う。
ドサァッ
石畳の地面に勢いよく叩きつけられ、もう起き上がる気力も無くなってしまったその騎士は両手を挙げた。
「こ、降参だ…」
相手の完全な敗北を確認したヤルバーが得意げに疾斗の方を見ると、彼は案外苦戦しているようだった。
「贄の運び屋…。生け捕りにすれば俺の昇進は確実だ」
疾斗と剣を交えている騎士は多少息が上がりながらそう言った。
戦闘経験はどうか知らないが、戦闘知識としてはこの騎士の方が確実に疾斗より上であろう。
しかしここで我らが主人公に有利な点があるとすれば、それは相手が生け捕りを狙っている点だ。
つまり命を奪うつもりで向かっては来ない、ということになる。
「こういう時つくづく自分がシロウトだって痛感するな」
純白の短剣である風斬を握りしめ、疾斗は言葉を噛み潰すように言った。
「『互いが切れる棒を持った時点で真剣勝負だ』って、じいちゃんが言ってたっけか」
今なら分かるぜ、と呟きながら相手との間合いを詰め、風斬を下から上に斬り流した疾斗。
サッと飛び退いた星無しは、その後ろにヤルバーが回り込んでいることに気づいてはいなかった。
そのせいで首に手刀を食らってしまう。
ズサァッ
地面に顔から倒れ込んだ騎士は既に気を失っている。
こうして扉を守る2人の星無し騎士を倒した疾斗たち。
ヨンメルに無事会うことができるのか。彼女との間に立ち塞がる騎士は残り116人。




