殴り込み
4人が教皇騎士団の本拠地であるフォルタール大聖堂に乗り込むと決めてから2日経った日の朝。
鳥があちこちでさえずり、朝日に照らされた木々が風に揺れる。清々しい朝と呼ぶにふさわしい日和である。
「あの鳥は朝を呼ぶ鳥か、はたまた勝利を呼ぶ鳥か…」
独特の節をつけながらヤルバーがそう呟いた。
「ボクちんたちは勝ちに来たわけじゃない、だろう?」
「フッ、そうだったぜ」
疾斗たちは教皇騎士団に勝負をしに来たわけではなく、ヨンメルを助けに来た。そのことを共通理解にしておかなければこれからの作戦は失敗に終わってしまう。
「な、なぁ、タロウ。気のせいかもしれないが、俺は作戦を聞いてないぞ?」
慌てたように言ったのは最後尾を歩く疾斗だ。
「あー、ハヤトが起きるの遅すぎて先に話しちゃった」
全く悪びれる様子もない。しかしそれも当然だろう。これに関してはマイペースな疾斗が悪いのだから。
「俺にも、聞かせてくれないか…?」
反省の色を示して疾斗が頼むと、わざと大きめのため息をついてからタロウが説明を始めた。なんだかんだで世話を焼いてくれるところがなんとも憎めない。
「大聖堂のどこにヨンメルって子がいるか分からない以上、単独行動はキケンだ。けど全員が揃って捕まるのもアホらしいってことで2人1組で潜入することにしたんだ」
無難な作戦。しかし奇天烈なものよりよほど信頼はできる。
「それでウロモモちゃんはオレと組むことになったのさ」
腕を組み、フンと鼻を鳴らすヤルバー。
「またそーゆーことを…。ウロモモはボクちんのなの!」
そう言うとタロウは彼女の腰をギュッと抱きしめた。
ここまで来たらいつもの流れで。
「あんっ、タロウさ…ま」
こんなリアクションをウロモモがして、ヤルバーが悔しがって指を弾く。いつのまにかすっかり見慣れた流れになっていることが疾斗にとってはこの上なく可笑しかった。
さて、そうこうしているうちにフォルタール大聖堂の前まで来た4人。
「ここか」
大聖堂の外見は例えるなら、四角錐が地面に向かって突き刺さったようで、屋根はドーム状になっている。
その風変わりな建物を見つめる目線を上から下へとおろしていくと、観音開きの扉の両脇に星無し騎士が1人ずつ立っているのが見えた。
ここであることを思いついた疾斗がヤルバーの方を見ると、彼もこちらを見ていた。
「どうやらハヤトも同じことを考えてるようだなぁ」
「お前と一緒ってのは複雑だけどな」
そう言って、お互いの拳でコツンとグータッチをした2人は扉を守る騎士たちの方へ歩き出す。
そうして2人同時に立ち止まったと思ったら急に、「やいやいやい!」と上ずり気味な声をヤルバーがあげた。
当然、何事かと声の方へ焦点を合わせる騎士2人。
「この顔に見覚えあるはずだぜ、アンタら」
ヤルバーが疾斗を親指で指差すと、徐々に騎士たちの表情が驚きに変わっていく。
「そういえばコイツ、手配書の男じゃないか!」
言うなり駆け出してくる者たちを見つめながらヤルバーが呟く。
「…10秒、しっかり止めてたぜ」
その右手にはタロウから買った諸刃の剣、金喰蟲が握られている。刃渡りはおよそ70センチ。
「あいつらに恨みはないが、やるか」
疾斗のこの言葉とともに彼とヤルバーも駆け出す。
キイィン
乾いた金属音と火花が辺りに飛び散るのだった。




