ありがとな
無事に宿も見つかり、ヨンメル救出について話し合いを始めようとする疾斗たち。
木のテーブルを囲み互いを見つめあっている様子は、探り合っているようにも、繋がりあおうとしているようにも見える。
「俺は、1人でも大聖堂に乗り込む」
こう口火を切ったのは疾斗であった。
「ハヤト、だっけ。チミはさっきの話を聞いてなかったの?」
自分たちと教皇騎士団の戦力差を説明されておきながらよくそんなことが言えるな、と関心さえするタロウ。
確かに118人(教皇も入れると119人)を相手取ってケンカをしようと思う者はそういないだろう。
しかし疾斗の決意は本物であった。
「こうしてる間も、ヨンメルは何をされてるか分からない。だから俺が助けるんだ」
大事な生け贄に手は出さないだろうと思ったタロウだが、きっとそういう話ではないのだと考え直し、席を立つ。
「じゃあボクちんとウロモモはついていくよ」
そのかわり、と彼は続ける。
「じっちゃま探すの手伝ってね」
そう言って彼とウロモモは隣に借りた自分たちの部屋へ入っていった。
「あとはオレ、か…」
ふんぞりかえったヤルバーは天井に向かってそう呟くと、急にニィッと笑って、
「当然行くよ。ヨンメルちゃんの勇者になるのはオレだからさっ!」
と自分の胸を親指でトンと突いてみせた。
「……ありがとな」
聞こえないフリでもしてくれた方が疾斗の気が楽なセリフをヤルバーは決して聞き逃さない。
「ん、なんだって?」
もっかい言ってみ、と耳を寄せてくるヤルバーに疾斗は、「だーっ、だから言いたくなかったんだよ!」と顔を真っ赤にして叫ぶ。
そうやって戯れていると、ギィッと部屋の戸が開いた。
「…何時だと思ってる。はやく、寝ろ」
宿の主人だった。しっかりと開かれた2つの眼のそれぞれが2人を脅しているかのようだ。
「「はい…」」
疾斗とヤルバーは揃って返事をして謝った。
こうしてこの日は暮れていった。




