【幕間】騎士たちの視点
疾斗たちがフォルタール大聖堂への突入に迷っていたちょうどその頃。
議題に上がっていた大聖堂の中は賑わっていた。
第一階層、つまり地上階には近隣地域から招集された星無しの見習い騎士たちがごった返し、
第二階層、第三階層と螺旋階段を降りた先にある、等星の称号を持つ者だけが立ち入ることを許された聖域、妖星の間ではこれまた招集された18人の騎士があれこれ話をしている。
ちなみに18人の内訳は、三等星10人、二等星5人、一等星3人だ。
「教皇みずから演説なんてオイラがここ入って何回目よ?」
黄色い上着に赤いオーバーオールのようなものを身につけた、いかにも派手好きな男がそう言うと、隣にたたずむ、顔は髪に隠れ、身体は紫一色の服に包まれている女が答えた。
「1回もないわ。ない…かしら。ない…と思うけど。あぁ、言うたびに自信がなくなる……!」
「ネクラニエがそう思ったんならそうっしょ。いーのいーの、細かいことは!」
そう言われた紫尽くめの女、ネクラニエは少し頬を赤らめる。
こんな一見すると違いしかないように思われる2人には目に見える共通点がひとつだけあった。
どちらも胸に2つの星がついている点だ。
「相変わらず、ノーリは騒がしいですね」
そう彼らに話しかけたのは(覚えている方も多いかもしれないが)、疾斗を瀕死の状態にまで追い込んだ二等星、ギアン・スピカスであった。
ノーリと呼ばれた派手な男は笑いながら、「コレくらいが普通っしょ!」と応える。
「ま、私はすぐに昇進するのであなたと馴れ合う必要もないのですが」
「えー、冷たいこと言うなってー」
こんな取るに足らない会話もあれば、一等星同士の高度な会話ももちろんあるわけで、そちらも覗いてみるとしよう。
「ねぇダナ、ぎゅーってして!」
「いつも、くっつかないでほしいと言ってるんダナ…」
高度な、会話……。ゴホン。
今にもダナに抱きつきたくてしょうがない様子のキョルメ・ルネイス。しかし身長が全く届かず、彼の足元で両手を上げてピョンピョンすることしかできない。
見ると5センチほどしか跳べていないのだ。
ただ本来の彼女の身体能力なら、自分の身長の2倍くらいまでなら助走なしで跳べるはずなのだが、なぜ本気を出さないのか理解に苦しむ。
まあそれはさておき、ここに集められた一等星は3人。もう1人いるはずだ。
「そういえばデシャオはどこなんダナ?」
ダナがそう言って辺りを見回していると、「ヌヒヒヒッ」という不気味な笑い声が背後から響いた。
「ダナ様に気にかけて頂けるとは、この上ない喜びでございますな」
その男、デシャオは気付いた時にはダナとキョルメの前方にいた。左右に2本ずつ生えた腕を器用に使いながら4種類の果物を交互に口に運んでいる。
その果汁がデシャオのオシャレに編まれたアゴヒゲにかかると同時にキョルメが口を開く。
「ダナ、あっち行こ。キョルメね、こいつキライ」
意見の相違か生理的な問題なのか。それは分からないが、とにかく相当な嫌悪感を隠すことなく示したキョルメ。
だがこれにダナは首を振る。
「もうすぐ教皇様の演説が始まるから、ここにいなくちゃいけないんダナ」
思い通りにいかず、ムスッとした表情をキョルメが浮かべた時だった。
「等星の称号を有する騎士諸君、まずはご機嫌よう」
少し高くなっている舞台に教皇の姿が。
「この度の運供の儀であるが、皆も聞いての通り、生け贄が2人居る。そして1人はすでにこの大聖堂でかくまっておる」
ここで教皇が一拍おく。
「そこで皆に頼みたいのはもう一方の生け贄の捜索、それから明後日出発する我とヨンメルの護衛じゃ」
ついに運供の儀に向けて教皇が動き出したと、この場にいた誰もがその心を奮わせるのだった。




