金喰蟲と新たな仲間
タロウの店を出発してから30分ほど経った頃。疾斗たちは未だにアブソールへの道のりを歩んでいた。
「あとどれくらいあるんだよ?」
疾斗がたまらず尋ねる。
これに、何事かを熱心に考えていたヤルバーは、「ああ…」という生返事で応えた。
「何を考えてるんだ?」
そう聞かれてやっと我に帰るヤルバー。
「ん、あぁ。この剣の名前を、さ」
『この剣』とはタロウから買った、鞘から抜いたときに目に見える範囲にある金属と同じ量の刃が出来る剣のことだ。
「それのことか。たしかに悩むなぁ」
疾斗がそう言って腕を組むと、「実はたった今いい案が浮かんだんだ」と、ヤルバーが得意げな笑顔を見せる。
「金属を食べる剣って感じで、『金喰蟲』なんかどうだろう?」
微妙だな、というのが疾斗が抱いた第一の感想だったが、使う本人がそれでいいのなら問題はないじゃないかと思い直し、それを伝えようとした。
すると、
「おーーーーい!」
疾斗たちを呼ぶ声が。
見ると、もの凄い勢いで走るウロモモにおんぶされたタロウが手を振っている。
そうして追いつくなり、「その剣についてまだ言ってないことがあったよ」と息を切らしながら話すタロウ。
「その剣はね、抜いてから10秒間静止させておかないと刃が生まれないんだ」
タイミングはいつでもよく、とにかく10秒間静止する時間を作ればいいらしい。
「そんな制約が…。まぁ、分かったぜ。わざわざすまないな」
だが、とヤルバーが続ける。
「静止って、具体的にはどの程度なんだ?」
「剣先や柄の先が2寸以上動かなければいいんだよ」
「に、2寸!?」
寸…。現代人には縁のない単位で、疾斗は2寸という数字がどれほどのものなのかピンときていなかったが、小さい頃に読んでもらった一寸法師の話から相当小さいのだろうと推測するのだった。
そうして、さわさわと辺りの木立が鳴り出したのをきっかけにタロウが本題を話し始める。
「ボクちんたちを連れてってくれ」
その顔は彼がいかに真剣なのかを物語っている。
「店はどうするんだ?」と疾斗。
「休業の看板を出してきたよ」
「ジイさんを、探したいんだな?」とヤルバー。
これにタロウは無言でうなづく。
「どうするよ、ハヤト?」
疾斗が悩んでいるのを見て、「旅に改修屋がいれば何かと便利だよ!」とタロウがアプローチを仕掛ける。
それでもまだ決めきれない様子で、今度はウロモモを引き合いに出してヤルバーに付け入ろうとするタロウ。
「ボクちんたちを連れてってくれて、じっちゃまを見つけられたらウロモモも好きになっちゃうかもねー」
そう言って彼がツンツンと彼女のわき腹をつつくと、「あッ、はい…」と悩ましい声でウロモモが返事をした。
こんなものを見せられて黙っていられるヤルバーではない。
「よし、仲間は多い方がいいからな。交渉成立だぜ!」
絶対言わされただけだろ、と思ってもヤルバーの鼻の下が伸びきった顔を見ていたらかわいそうで、とても言えない疾斗なのだった。




